事業活動における生物多様性に配慮した取り組み
なぜ、事業者は生物多様性の保全に取り組む必要があるのでしょうか?
事業者は、直接または間接的に生物多様性の恵みを受けている一方、事業活動を通じて生物多様性に大きな影響を与えています。
さらに、製品やサービスを通じて広く社会へ生物多様性の恵みを供給したり、市場を変革したりするという重要な役目を担っていることも理由の一つです。
目次
- あなたの事業活動と生物多様性の関わりを知っていますか?
- 生物多様性の劣化は、事業活動継続の危機
- 生物多様性に配慮した取り組みを始めるために
- 具体的な取り組みの事例
- 生物多様性と脱炭素と循環経済の関係
- 知っておきたいキーワード
1.あなたの事業活動と生物多様性の関わりを知っていますか?
令和3(2021)年度に、船橋市内の事業者に対し、事業活動と生物多様性の関係性の認識についてアンケートを行ったところ、「事業活動と関係があり、重要視している」と考える事業者は約3割でした。
平成27(2015)年度に同様のアンケートを実施した際には、「事業活動と関係があり、重要視している」と考える事業者は約1割でしたので増加傾向にありますが、さらなる社会的理解向上に努める必要があると考えられます。
事業活動と生物多様性の関係
上記の図は、事業者の活動を中心に生態系からの恵みと影響を模式的に整理したものです。
まず、原材料の調達や生物資源を利用することは、生物多様性の恵みを受けているといえます。
次に、輸送や生産・加工する際に、生物多様性への負荷が生じているといえます。
一方で、商品などの研究開発や、廃棄・リサイクルを適切に行うことで、生物多様性への負荷の低減ができます。
事業者の有する技術や生み出す製品・サービス等が、生物多様性の保全に革新的な好影響を与える可能性もあります。
さらに、これらの活動への投融資を通じて、あるいは社会貢献活動によって生物多様性を基盤とする生態系にかかわることもあります。
あらゆる事業活動は、生物多様性の恵み(生態系サービス)を利用することで成り立っている
農林水産業であれば、農作物や木材、水産物といった生物多様性からもたらされる恵みで事業活動が成り立っています。
食べ物を商品として取り扱っている製造業や飲食業、木材を扱う建設業なども生物多様性の恵みがあるからこそ、事業活動が成り立っています。
それでは、運輸業やサービス業など一見、生物多様性とは関わりがなさそうな業種はどうでしょうか。
例えば、事業活動において不可欠な、紙やエネルギー。
紙は当然、森林資源からの恵みです。
エネルギーについては、天然資源に乏しいわが国においては、その多くを海外の生物多様性の恵みに依存しているといえます。
生物資源を直接利用していなくとも、原材料調達までさかのぼれば、あらゆる業種の事業活動は生物多様性の恵みを受けています。
特に、調整サービスによる恩恵は、安定した事業活動に寄与するものなので、すべての事業活動において、その恵みを受けているといえます。
事業活動が生物多様性に大きな影響を与えている
例えば、資源を過剰採取したり、建物や道路を建設するなど土地を改変や利用したりすることで、生物多様性に影響を与えています。
事業活動に伴う輸送によって、外来種の移入の可能性があります。
また、エネルギーを消費することで、地球温暖化の原因であるCO2などの温室効果ガスを排出します。
不適切な処理をされた排水や廃棄物なども、生物多様性に悪い影響を与えることとなります。
一方で、事業活動による生物多様性への貢献もあります。
開発事業における在来種を主とした緑地の創出や、保有地を適切に管理(植林、間伐を通じた水源や山林の保全)することで、生物の生育環境の創出への貢献ができます。
また、生物多様性の保全に革新的な好影響を与える技術開発を行うことで、もしくはそういった技術開発へ投融資を行うことによって生物多様性へ貢献ができます。
さらに、従業員への環境教育の実施や地域へのボランティア活動、環境認証商品の取り扱いなどの自社の取り組みについての広報をとおして消費者への啓発を行うことによって、生物多様性へ貢献する方法もあります。
2.生物多様性の劣化は、事業活動継続の危機
もし、生物多様性に配慮せずに事業活動を続けたらどうなるでしょう。
事業活動は生物多様性からの恵み、恩恵を受けて実施されています。
事業活動から負荷をかけることで、生物多様性及びその恵みが減少し、結果、事業活動継続の危機につながります。
一方で、生物多様性に配慮した事業活動を実施することにより、継続的な事業活動につながるものと考えられます。
生物多様性に配慮することは、持続可能な事業活動を実現させるためにも重要な取り組みであるといえます。
出典:札幌市HP
生物多様性に配慮した取り組みをするメリット
生物多様性に配慮した取り組みを行う具体的なメリットとして、次のことが挙げられます。
- 計画的な資源の利用は原材料の値上がりを抑え、持続可能な事業活動につながる。
- 環境への配慮を重視する取引先や消費者の要望に応えることができる。
- 企業ブランドの向上につながり、新たな顧客獲得へつながる。
- 地域の環境活動に参加することにより、地域住民との関係をより良好に、強化できる。
- 金融機関による投融資の優遇を受けられる場合がある。
- 従業員の満足度の向上、人材の確保につながる。
3.生物多様性に配慮した取り組みを始めるために
ステップ1 あなたの事業活動と生物多様性の関わりを把握しましょう
まずは、自らの事業活動が生物多様性とどのような関係にあるかを知ることが重要です。
事業活動ごとに、生物多様性との関わり方もそれぞれ異なります。
自らの事業活動が、直接的または間接的にどのような生物多様性の恵みに依存しているのか、生物多様性にどのような影響を与えているのか、これらを把握できれば、生物多様性の保全に必要な取り組みを検討することができます。
サプライチェーンを俯瞰して考えると、必ず製品の原材料として自然資本が活用されていることから、可能な範囲でサプライチェーンの把握をするとよいでしょう。
ステップ2 あなたの事業活動において実施できる取り組みを検討しましょう
生物多様性の恵みを継続的に利用し、将来にわたって事業を継続するために、どのような取り組みが重要かを検討しましょう。
効果の大きい取り組みを検討・実施することはよいことですが、当然、コストや時間もかかります。
さまざまな制約の範囲内で取り組みを行う必要があるため、すぐにできるところから取り組む姿勢も重要となってきます。
ステップ3 実際に取り組みましょう
ステップ2で検討した取り組みを実施に移していきましょう。
継続して取り組むために、定期的・継続的なモニタリングにより、取り組みの進捗状況を把握・分析し、必要に応じて取り組み内容の見直しを検討しましょう。
定期的に従業員への教育を行うことも、取り組みを継続する一つの方法です。
4.具体的な取り組みの事例
広く一般的なエコオフィス行動に含まれる取り組みも生物多様性への配慮につながるため、社内教育によって生物多様性との関係についても共有しながら、ぜひ取り組んでみてください。
環境配慮商品の使用
- 認証材を使ったコピー用紙や原材料を使用する。
省資源・省エネ
- LED照明を使用する。
- エコドライブを実施する。
環境負荷の低減
- ごみを適切に分別する。
- 適切な排水の処理を行う。
- 化学物質を適切に管理する。
社内教育の実施
- 社内全体で、生物多様性について認識することで、効率よく取り組める。
事業所の緑化
- 鳥や昆虫にとって貴重な生育場所の一つとなる。
自然共生サイトへの登録(環境省)
市の環境保全等に係る事業への参加
5.生物多様性と脱炭素と循環経済の関係
生物多様性と気候変動、循環経済は相互に関係性があります。
生物多様性、脱炭素、資源循環の3要素を統合的に考え、企業価値の向上と持続可能な社会の実現を両立させるような事業活動を推進することが求められています。
6.知っておきたいキーワード
生態系サービス
生態系の機能のうち、特に人間がその恩恵を受けているものをいう。「供給サービス」「文化的サービス」「調整サービス」「基盤サービス」の4つに分類される。
ネイチャーポジティブ(自然再興)
自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることを指す。
2022年12月に愛知目標の後継の世界目標としてCOP15にて採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組において、2030年までにネイチャーポジティブを達成するという目標が掲げられている。
自然資本
森林、土壌、水、大気、生物資源、鉱物資源等、自然によって形成される資本のこと。
生物多様性と自然資本との関係
生物多様性には、洪水や干ばつといった自然災害に対する回復力を提供し、炭素循環、水循環、土壌形成といった基礎的プロセスを支え、自然資本を健全で安定な状態に保つ役割がある。
NbS
「自然を基盤とする解決策(Nature-based Solutions)」
自然が有する機能を持続的に利用して、生物多様性と人間のいずれにも利益をもたらす方法で多様な社会的課題を解決につなげる考え方のこと。
OECM
「保全対策に効果的なその他の地域(Other Effective area-based Conservation Measures)」
民間などの取り組みにより保全が図られている地域や保全を目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している地域のこと。
30 by 30
2030年までに生物多様性の損失を食い止め回復させるというゴールに向け、2030年までに日本の海と陸の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標のこと。
Eco-DRR
「生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)」
自然を効率的に利用して、近年激甚化、頻発化する自然災害の防災や減災の役に立てようという考え方のこと。
ESG
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)を考慮した投資活動や経営・事業活動のこと。
SBTs for Nature
「自然のための科学に基づく目標(Science Based Targets for Nature)」
企業等が科学に基づいて自然関連の目標設定を促すための枠組みのこと。
TNFD
「自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)」
企業や金融機関が自然資本や生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、情報開示するための枠組みのこと。
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