第9回船橋市美術館運営等検討委員会会議録
1 開催日時
平成26年8月25日
午後3時00分~
2 開催場所
船橋市役所本庁舎9階 第1会議室
3 出席者
(1)委員
- 前川委員長
- 大澤委員
- 山田委員
- 島津委員
- 柴田委員
- 倉本委員
- 谷口委員
(2)事務局
- 瀨上生涯学習部長
- 田久保文化課長
- 仲臺文化課長補佐
- 松田文化振興係長
- 鎌田主事
4 欠席者
- なし
5 議題及び公開・非公開の別並びに非公開の場合にあっては、その理由
議題
- 提言書(草案)について
公開
6 傍聴者数(全部を非公開で行う会議の場合を除く)
なし
7 決定事項
第10回船橋市美術館運営等検討委員会の日程
8 議事
前川委員長
それでは、第9回の検討委員会を始めます。まず、事務局のほうから提言書についてご説明願います。
事務局
船橋市美術館運営等検討委員会提言書(素案)の説明
前川委員長
事務局から提言の素案をいただいたが、事務局で意思がはっきりしなかったから、かなり私の個人的なものを入れさせていただいた。できるだけこの会議で委員の方々から発言のあったことを踏まえたが、かなり私の個人的な意見も入っているので、その辺もご指摘いただければありがたい。とりあえず全体の中で、何かご質問、それから訂正するべきところがあればご発言いただきたい。では、倉本委員から順に、全体の印象なりご質問などありましたらどうぞ。
倉本委員
読ませていただいて、よくできている。今まで話したものがきちっと盛り込まれているなという印象を受けた。独自性のある活動と新たな美術館像、いろいろな美術館が独自性とかを常に考えながら活動しているのが事実だと思う。そのときに、船橋の独自性というのは何かというと、カフェという交流の場と、専門的な部分で独自性を見せていくことが一つ、もう一つは、コミュニティをどう船橋が捉えていくか、コミュニティの活動をどう形成していくか。今、独自で新たに考えるというのは難しいので、参考として、シブヤ大学がある。NPOで行政と市民と民間も入っており、そのチームで文化、芸術、食文化とか、大きな文化のくくりでいろいろな事業をやっている。片仮名で「シブヤ大学」という。シブヤ大学の一つの通例がいろいろな地方で実施されている。いろいろなアート・デザイン・音楽・文化資源というものを掘り下げて、20代から40代の方々を対象にいろいろな場面で学んでいただき、それを生かしていく場が提供されて、自分たちの学んだことを少しずつまた地域に還元していくという一つの活動例もある。群馬のジョウモウ大学は今かなりスポットを当てているみたいに聞いているので、少し参考にしてみたらいいのではないか。あと、もう一つ感じたことは、今後これを運営していく方法。指定管理者制度にするのか直営館にしていくのか、これからのことかと思うが、私も船橋で指定管理者制度のもとで仕事をしてきたところ、指定管理者のよさと悪さがある。この10年やってきて、いろいろなところで指定管理者のよしあしが出てきていると思う。そこも皆さんで議論していただきたい。これを読ませていただいて、ざっくり感じたことはこういうこと。
谷口委員
素案を読んだが、今まで事務局の話を聞いているよりもかなり踏み込んで、委員会のいろんな考えとかも取り入れて、よくできているなと思った。あと、「非常に狭い」とか、「非常に使いづらい」とか、何回か言葉として出てきているが、そんなに狭くて使いづらい美術館になってしまうのかと、ちょっと愕然として残念に思った。カフェを中心ということが具体的にどういうのか私にもまだイメージがわいていないが、やはりその方向で行ったほうがいいのかと思う。あと個人的な考えで、美術館の中でミニコンサートができるような場所も考えていいのかなと思う。この素案がかなりうまくできているので、基本的な考え方はこれでいいと思う。
柴田委員
これまでいろいろ勝手なことを言ってきたが、そういう話をきちんとまとめてあると本当に感心した。一つ一つのことはきちんとわかるが、イメージとして具体的にわからないものも結構ある。それで、一番自分が思うのは、美術館の独自性。これが、結局この素案を見たときに果たして何なんだろう、これからずっと美術館が活動していくにおいて、長きにわたってずっと持ち続けていけるものは何だろうと考えると、この辺をしっかり皆さんで、抽象的な話になっても構わないが、よく話したほうがいいのではないか。今、コミュニティについての例も出てきたが、現実に果たしてそれがいい面を出しているのか、可能性はあるのか、そういう検証もしていかなくてはいけないだろうと思う。私も不勉強でそういう活動を知らなかったので、イメージ的につかみ切れないが、そんな気がする。市民のコミュニティ形成の場が使命ということ。その辺を受けての活動方針だと思うのだが、これについては、美術館だけでなく割といろいろなところでうたわれている。それをアートを通して美術に特化して活動をつくっていくことだろうと思うが、この辺のコミュニティという考え方を皆さんがどういうイメージをされているのか。その辺のイメージも、委員の方はひょっとしたら違うのではないかという気もする。なので、そういう詰めが大事な部分。具体策については、そこから何らかの方法として出てくるという気がするので、使命、活動方針、独自性、その辺を委員でしっかり話し合う必要があると感じた。
大澤委員
私自身アーティストの端くれとして美術連盟に50年以上いたが、美術館の新設については全く寝耳に水で、非常に当惑している。せっかく委員として選ばれた以上は何かお役に立ちたいとは思っているが、何と言っていいものか、乏しい自分の経験から、各委員のご意見の端っぱにでも上らないということで、出席していること自体が身分不相応ではないかと思っている。どうも最初の「検討にあたる基本的な姿勢」では、ちょっと悲観的な感じがする。というのは、美術館の活動としての十分なコレクションは持ち合わせていない。それから、構造それ自身が、例えば上野の都立美術館、六本木の国立美術館にしても、構造自体においても目的を持って果たしているが、今度の船橋の美術館は、その辺が、私自身の考え方からいけば非常に不完全だと思う。この船橋市内に在住して、しかもギャラリーに毎年定期的に出品している仲間たちとの話でも、皆さんのご判断になるような話はできないので、まことに恐縮している。端的に1ページの意見を見ると、何か悲観的な表現が2つ、3つ見受けられる。確かに我々アーティストの仲間でも、今までの清川コレクションに対しても率直に言って満足していない。私もいろいろと先輩や友人たちに、こうしたほうがいいというような新しい発想でもできないかと話をするが、私同等ぐらいの話しか出てこず、きょうの委員会に出席しても、皆さんのお役に立ちそうな発言もできないので、じくじたるものを持っている。
山田委員
非常に細かい、時に応じて抽象的だったり、やけに具体的だったりするいろいろな話がずらずらどんどん出てきていたのが、一つの文脈の中に置かれたという、見てみると案外おもしろいんじゃないかというのが実は正直なところ。一つには、非常に個人的な考えからいうと、コレクションとかはもうやめてもいいんじゃないかと思いたいところだが、恐らくそれではもともと美術館をという話からしても困る方もたくさんいると思うので、そこまでは言わない。独自性がどこにあるか、わからないところもあるが、恐らくここで言われているものは、従来的な意味での美術館ではないものになりつつあるということで、それなりの意味が出ているのではないかと思う。中身については、これから話があると思うが、全体についてということで、提言のあり方について言いたい。それは、美術館という施設は大変に不合理なもので、余り間尺に合わないもの、特に行政の間尺に合わないものであるが、これを持つことはそんなに悪いことではない。ただ、こういった施設を持つには、一種の資格みたいなものがあって、資格のない自治体が美術館を持つことは非常に不幸なことであり、よくないことだと思う。その資格というのが何なのかということは、よくわからないこともあり、今詳しくは述べないが、実はこの提言の中で思いのほか重要なのは、「船橋市に期待すること」というところ。まさにまとめの中でも、この美術館を今後持ち続ける、ことし、来年がよければいいということではなく、せめて30~40年ぐらいのスパンでは考えていただきたいと思う。それだけの間、施設を持ち続ける資格を船橋市も自分で考えて備えなくてはいけないということではないか。それが、実はこういう美術館をつくるときには重要なことだと思う。
島津委員
この新美術館が提供するのは情報の発信の場、ワークショップなどを通じた創作の場と、本来の美術館の大きな本質的な役割である鑑賞の場、結局この3つという感じがして、まずそれをどうやっていくかが非常によくまとめられた提言になっているのではないかと思う。しかし、全体を通して若干矛盾を感じるのが、「基本的な姿勢」のところでも、「新美術館の使命」のところでも言われているが、もう従来型の美術館、つまり収集・保管・展示・鑑賞の場を提供するということは予算の上でもできないだろうということがあって、それで交流の場というカフェ的な場としての美術館像が提案されているわけだが、しかし一方で清川コレクションというものは厳然としてあって、これはやはり核にしなければならないという、このちょっと見ると矛盾するような部分というのをどううまく解決していくかというのは、もう少し詰めたほうがいいのかなと思った。コレクションはふやさないが、しかし考えたほうがいいということは7ページの「コレクションの充実」のところでも言われていて、限られた条件の中でどう方針を定めていくのか、結局ここになってくるような気がする。これをきっちり考えておかないと、新しい美術館の個性的な、鑑賞の場という意味での美術館ではほとんどないが、しかし核になるコレクションがあるという、そこの落としどころがうまくいかないようにも思われる。現実的な運用としては、収蔵庫があるんだから受け入れてほしいという形で寄贈がどんどん来た場合に、どういう収集方針があるのでそれは受け入れられない、という実際のやりとりが必ず生じると思うが、コレクションについてはどう考えているというコンセプトがどれだけ定まっているかいないかで、将来的にこの美術館の存在意義を保っていけるか、なくなってしまうかの境目が出てくると思う。
前川委員長
今、皆さんのご意見を承って、この提言書で一番問題になるのは、「使命と活動方針だと思う。これについては、実際はこの委員会でまだしっかりと話し合いをしていない。これは当然事務局が考えることで、実は事務局に振っている話。この提言書の中で、事務局から何らかの「使命」が出てくるかなと期待していたが、その点がなかった。そのため、今までの流れの中でこういう感じかとつくらせていただいた。使命として「アートを通じて市民のコミュニティの形成を目指す場」という言い方をしたが、実際、具体的にどうするかが、後に続いていないというのは、私としても非常に矛盾を感じている。なので、その辺の使命、活動の方向、それが独自性になってくると思うので、一体この美術館の独自性というのは何を目指しているんだということを、ここでしっかりと意見をいただいたほうがいいかなと思っている。独自性という言葉で、何となくイメージとして、今までにないものなんだと思うが、実際何がないんだというと、例えば中にうたわれているカフェ、それからアートに特化したコミュニティセンター、育児サポートとかが入ってきて、新しい活動方向かもしれないが、果たしてそれが美術館として独自性になるのかというのは非常に問題があると思っている。その辺、皆様の立場からいろいろ意見をいただければ非常にありがたい。
倉本委員
極端な言い方かもしれないが、独自性というのは、その地域の「人」と「事」。「人」と「事」が生む一つの風景があり、そこの分母というか地盤があって、その上に成り立つものではないか。ただ、地方だとそういう分母がかなり明快にわかるが、船橋というところは非常に都心から近いところで、どこまで特色が「人」と「事」から生まれてくるのか。でも、その地域性は必ずあるはずだと思う。その地域の中から一つの表情を読み込んでいく、そこにコミュニティが生まれていくという仕掛けをつくっていくことも一つの方法ではないかと思っている。独自性といったときに、説明しやすい方法ではあるので、まずそういう見方をするということも必要かと思う。周辺環境の利点、ごちゃごちゃして汚いというのを逆に利点としてとってしまう。この利点というものを生かすことによって、ある独自性も出てくるかもしれないと思うし、場所の持っている特徴というものが独自性にもつながっていくだろうと。そういう一つの要素を組み立てていくことも一つの方法ではないか。
前川委員長
例えばこの提言の中で、独自性になると思われることはあるか。
倉本委員
一番感じたのは、環境の利点ということが独自性にはなるだろうと思った。あとは、これはどこに行っても同じだが、そこに住む方々の「人」と、起きている「事」をどうつないでいくか。それから見えてくるものがあるのではないか。それが独自の地域コミュニティの違いではないかと思う。
前川委員長
話はよくわかるが、具体的にまとめなければならないという段階でどうするかという問題になってくる。
多分、前に倉本委員から同じ話をされていて、それは事務局として調査すべきことではという話で、事務局に「使命」というのを投げた。だから、急に出る問題ではないかなとは思うが……。
倉本委員
運営をするときに、指定管理であれば指定管理者にテーマを投げて、それを料理してきて、考えを提示する。その中からこの方向で行けると提案をするときは、かなりいろいろな市場調査をする。それができていないので、この段階では回答がどうしても抽象的になってしまう。もう少し本格的に調査をしないと地域の独自性は見えてこないという印象がする。私もどうしたらいいかなと、もう少し独自性を出したいとは思っているが。
前川委員長
独自性ということで皆さんのご意見を伺いたい。
山田委員
独自性って、ないといけないのか。今言っている独自性というのは、そもそも何を言おうとしているのか。ユニークさということか。ほかに似たようなものがないとか、同じ場所でかわりになるものがないとか、そういうことなのか。
柴田委員
今まで自分なりに考えてきたイメージというのは、まさしくそういう感じ。例えば美術館は東京のほうにいっぱいあるが、船橋市の新しい美術館はほかに似たようなものがないので、ちょっと行ってみたいと思われる、そういうものがちょっとあるとか、そんな感じだと思う。ほかに余りやっていない、違ったもの。
倉本委員
今の時代、全くほかにないことってないのでは。
前川委員長
私も独自性という言葉を考えると、世の中にないものはないんだろうと思う。それが美術館であるかどうかだけの問題で。だから独自性というのは、活動がいかに地域の中に浸透していくかという特徴的なことだと私は思う。
谷口委員
私も、美術館さえできれば船橋の美術館ということで徐々に独自性が生まれてくるのかなという期待はしている。多分、市の考えている独自性というのは清川記念館に特化した美術館であり、地域といっても、山田委員が言うように独自性をそれほど突き詰めて考える必要はないという気はする。ただ、本当にすてきな美術館が船橋にできることによって、独自性が、ネットとか口コミとかいろんなマスコミを通じて徐々に生まれてくる。即、船橋の独自性のある美術館ができたというのは、私は今の段階では無理と思っている。地域性といっても、山口横丁にあるというのは、プラスになるのかマイナスになるのかがよくわからない。プラスにするには、町全体が変わらないと美術館が浮き出てこないという気もする。ということは、美術館だけの問題ではなく町全体で考えないと。山口横丁も結構いろいろな店もできて盛んにはなっているが、それが美術館につながるかは疑問。でも、船橋もこの何十年かでかなり変わってきているので、ここで文化的な美術館という施設ができることによって、船橋の性格も変わってきたり、船橋のプラス面も出てきたり、期待はかなりしている。
山田委員
今のお話の中に、実は独自性と使命が否応なしに結びつくモーメントがある。例えばたくさんの美術館がある中から、変わった美術館、こんな活動をしているところはほかにないから行ってみようと思って来館するということに結びつく独自性というのは確かにある。だけど、それは誰に向けてつくるのかというオーダーがきちんとしていないので、難しくなっている。例えば、これからつくる新しい施設は、町の外から人を呼んでお金を使ってもらうための施設なのか。それとも、この町に東京で働いたりして電車に乗って帰ってきた人たちが、もっと行きやすいところにこんなものがある、そんな捉え方をする場所なのか。実は、この美術館についてはそういうことも余りできていない気がする。コミュニティづくりということからいうと、市の内側に住んでいる人たちが主な目的になると思う。そうすると、独自性というのは今の話のようにそんなに要らないのかもしれない。ごく普通のものが近所にあるということは、それだけで特別なことということも言えるのではないか。
大澤委員
提言書の中の5ページ、「具体的な活動と施設の活用」ということで、1階、2階、それぞれの階で進めていくものがここに明示されている。この点をもう少し具体化して形と範囲を広げていったら、確かに美術館としては独自性がある感じがするが、いかがか。
前川委員長
確かに、独自性に対する考え方が皆さん違うようで、その辺が一番問題なのかもわからない。私の個人的な意見を言わせていただくと、誰に向かってというのは、やはり市でつくる以上は市民に向かってなのかなと思う。倉本委員から話があったように、周辺環境というか、「人」と「事」の中に活動が浸透していくというのが最終的な目的ではと思っている。その中で一体何をやるか。今からつくって普通の美術館では浸透していかないだろうというイメージがある。では何をやるかというと、皆様から意見があったように、カフェであり、コミュニティの中でのオープンな活動であり、という形になってくるかと思っている。そういうものをもう少し具体的に考えることによって、活動していく中でより独自性が出てくるとは思うが、一つ言えるのは、従来型ではもう絶対だめだろうと、それだけは私は個人的に強く思っている。ただ、島津委員から話があったように、その中に一見矛盾したように清川コレクションの展示室があるというのが、私はこの美術館の特徴ではと逆に思う。市民の方の自由なスペースの中に異空間を残すというところが、私はこの美術館の売りになると逆に思っている。その辺いかがか。
島津委員
そのことをずっと今考えていて、例えば育児サポートはすごく新しいと思う。この間、木場にある某美術館の子ども向けの展覧会を見学に行った。そこで強く感じたことは、アーティストたちのグループ展としてコンセプトを持って作品を展示しているが、そこは子どもを遊ばせられるようになっていて、遊んでいる子どもたちは、コンセプトとは全く関係なく遊具の一つとして遊ぶ。つまりどういうことかというと、アートとしての質より、子どもはおもちゃと同列にそういうものを見て遊ぶ。ということは、育児サポートとか、アートで遊ぶということをメインに立てた場合に、従来人々がアートに持っている上質なものやコンセプト的に優れているものとは異質なものがメインになってくるだろうと思う。そういうのが中心になるだけでも、それがよく働くか悪く働くかわからないが、従来型とは異なるものになるだろうと思う。そういう中に異空間として清川コレクションがあるわけで、ある意味子どもの目線から見たら、子どもの遊具と変わらないようなアート作品と清川コレクションを隔てるものは、何か質的なものの違いだと思う。だから、この異質なものが同居しているということが一つの特徴で、コミュニティ的なことをうまく回していく専門的な職員が必要。情報の質ということで付言すると、5ページ「アートで憩うスペース」のところの2階の情報発信のところは、図書館のレファランスみたいなイメージで、これも意外にほかの美術館にはないのではないかと思った。それもいろいろなインフォメーションなので、質的なことがわかっている人がやっているべき。どっちも非常に専門的な能力が要るが、専門性の領域が全く異なる専門職員がしっかり働けるような場であるということで、うまくいくと異質なものの共存がうまく際立ってくるかと思った。
前川委員長
結局、建物の構造的に、6ページに書いてあるように地下と1階と2階という形で、完全にその使い方をしっかりと考えたほうがいいかと思う。ただ、独自性というのは最終的には活動してみないと出てこないだろうと私も思うが、やはり建てる限りは使命が必要になってくる。それをコミュニティの形成の場といっても、もうほとんど今の美術館は大体そんな感じのイメージを持っているので、どうかと思う。
山田委員
コミュニティ形成の場というのは、通常は美術館が自分でそんなことを言うのではなくて、大体自治体が大目標を立てて、そこからコミュニティの形成でいろいろやっていくうちに、「それをアートを通じてやるのが美術館」とか言って、美術館の現場は、「それって一体何なんだろうね」となるような種類のものだと思う。だから、本来はそのレベルのことは、提言する側が考えるのではなくて、市の側が提示をしていないとおかしい。前回も申し上げたと思うが、全体として中長期のビジョンがあって、その中で文化に関してはこういう考え方があると。それはこんなことを含めていて、その中に美術館もあるんだというところの最後に、恐らくアートを通じてのコミュニティ形成というのが出てきて、そういうことを市は考えていると。では、アートを通じてのコミュニティ形成というのは、一体ここの場所ではどんなふうに言葉を変えていったらいいだろうかと、ここで考え始めるというようなことなのではないか。ついでに、さっきの島津委員のお話で思ったところがあるので、言わせていただくと、もともと質的な違いがあるといっても、それは逆に言うと単に多少の価値基準における違いがあるだけで、いわゆる完成された誰かの作品というものと、それからそうでないものの違いというのは本質的には既に余りないと思う。なので、この新しくつくられるべき美術館の中で、清川コレクションというものが、まるでそんなことはやらないと言いながら、結局はそういうものもちゃんとそれなりに見せてしまうのは、むしろ自然なことで、それは独自のことかもしれないが、あり方としてはすごくナチュラルなのではないかと思う。そう考えてくると、恐らくこの新しい美術館の一つのキャラクターの中でもし独自性があるとしたら、確かに異質なものの接合、同時の実現ということであると思うし、あるいはボーダーが曖昧になっていることかもしれない。先ほどどんな専門の人がという話があって、古い美術について詳しい知識を持って書いたりしゃべったりできる人だけがそういうものに触って何かをするというのは、現代においてはおもしろくない感じがする。そうでなく、古いものについての知識を持って、きちんと物を読んだり書いたりする力を持っている一方で、そういった事柄を表に出していく姿をデザインしたり、そのデザインを更新していったりできる、それを両方全部できる人だけを雇う形が一番いいと思う。つまり、勉強だけできてセンスの悪い人は要らない。それから、センスがよくて絵がうまいけど物を知らないやつは要らないというよことを考えてもいいのではないか。そして、本当のことを言うと、事務方の職員と専門の職員というのももう少しボーダーレスでお互いに融通が利く仕組みがいいのではないかと思う。そういう意味で、今の話を幾つか聞いてくると、独自性というのは、抽象的なレベルで言えば、多分、境界線の曖昧さ、ボーダーがちょっと錯綜していて、あるいは場合によってはわざと意図的に混乱させられていて、異質なものがつながっているところにあるのかなと思う。美術館というと真面目な人たちがやっている、ボーダーを崩さないようにして、異質なものが混じり合ったことを放置しないようにするというのが一般的な美術館の方向なので、もしそういうことが自然にできると、それは本質的に新しいものになるのではないかとは思う。
倉本委員
今の話を聞いていて思ったが、行政の担当レベルで運営ができるかということが思い浮かぶ。やはり文化施設は非常に柔軟な考え方と動き方をせざるを得ないような場である。それが、行政が維持させていくときに、かなり摩擦が起きてくる可能性もある。それが現実に起きている場合が多々ある。予算の取り方も、規則的な財政の取り方だと多様に対応できない。なので、行政自体も運営体制に対して新しい感覚を持たなければいけないということを、この提言に入れていただきたいと思っている。
前川委員長
確かに、建ててから運営していくための柔軟性というのが非常に大事だと思う。そういう意味で、倉本委員から最初に指定管理者はどうするんだという話があったのは、指定管理者が望ましいという考えか。
倉本委員
そこまでははっきり言えないが、とにかく、行政の今の体制で新しいこれからの美術館という構想が実現できていくのか。期待として、ぜひそうしていただきたいとは思うが、市役所内部で議論もしていただきたい。本当に美術館に対する一つの思いというものを強く持った方々が長く続けていかれるような環境をつくっていく、また、手渡していけるような環境をつくっていく課題が、直営館にすると出てくると思う。
前川委員長
そういう意味では、直営でもなく指定管理者でもなく、違う経営の仕方ということも検討すべきかと思う。
倉本委員
それが、今、NPOがやっているシブヤ大学。それが果たしていいかどうかは私も全て検証しているわけではないので言えない。
谷口委員
いいか悪いかは別にして、NPOで運営したり、ボランティアで運営するという方向性は、どの施設も、そういう方向性で向かっているという気はしている。
前川委員長
ただ、それもやはり行政の考え方で、そこにきちんとした予算的裏づけをつけていかないと、NPOだけでは運営できない話。今、全国でNPOがやっている美術館もあるが、非常に難しいと思う。やはり、今、倉本委員から話があったように、これから長期にわたる行政の柔軟な考え方というのが大事だと思う。指定管理にしても、指定管理者と行政の間には契約関係があるので、そこでいろいろな制約をうたってしまう可能性もある。だから、指定管理者がいいかどうか、ちょっと疑問ではある。
谷口委員
もし指定管理者制度を取り入れるとすれば、1年とか2年とか3年とかの短期間ではなくて、ある程度年数を見ておかないと、いいものができない。
前川委員長
ただ、委託するにしても、結局どこまで指定管理者に柔軟性を持たせるかが大事。その辺について行政で柔らかい考え方があるかという問題だ。
山田委員
今、「柔らかい考え方」という言葉が出てきているが、最近の傾向としては、美術館のような施設をより柔軟に活用するときに、よく言われていることは、教育部局に置いておくからだめだと。全国でそういう傾向になっている。教育部局に置いて、教育施設あるいは登録博物館のようなものを目指すと、非常に足かせがかかってしまうから、そこをまず外すことが、横須賀なんかでも進行している。今の普通の自治体の中ではトレンディな方向だと思う。もし提言の中で、船橋市がものすごく柔軟な姿勢で美術館運営に取り組んでくださいというと、もしかすると利口な人は、ああ、それはつまり教育部局じゃなくて市長部局で、観光とか中小企業の振興とかとくっつけたほうがいいのではないかと。そして、足かせを取り去った形で、いろいろなことに使えるような施設としておくといいのではと考えると、この美術館の設置場所はなかなか危険をはらんでいるのではないかと思う。ここはいろいろな利用ができるということ。例えば、違う用途にも転用ができる。美術館が美術館でなくなる一つのある方向は、教育部局から市長部局に行って、そして観光と結びつけられるというところが、今少しずつ顕在化してきている。
前川委員長
今、教育委員会に所管していない美術館はかなり増えている。予算的な問題もあるが、美術館という従来の枠を考えれば、別に教育施設でなくてもいいのかなと思う。特に本市の場合、子ども美術館があるので、学校連携ということに関しては、新しく建てるとしても、それほど大きなポイントにはならないと思う。私はこの美術館は美術品というボーダーを持つ必要はないのではと思っている。どんどん各部屋にも飾ろうという感じで、別段ガラスがなくてもいいのではという考え方。ただ、この新しい美術館が清川という最大の使命を持っているので、それを外すことができないというのは、ある意味ではこの美術館の非常につらいところかなと思う。
谷口委員
美術館の独自性や市の立場から考え、清川コレクションを何らかの独自性を持たせて、例えば和室をメインにして清川コレクションを展示したいというのであれば、和室の特性を生かしてお茶席とのコラボをするとか、異空間にするとか、うまく清川コレクションを生かす方向で考えざるを得ないなと。私も多分1、2回は市民ギャラリーで見たことはあるが、実はそんなに清川コレクションの中身が具体的にどういうものがあるのか、それがどういういいものであるのか、美術館に展示してすばらしいものであるのか、よくわからないが、うまく利用して独自性を持たせたいというのがある。今度の新しい美術館の名称に関しても何らか市でうまい名称を考えておられるのかどうか、「船橋市美術館」でいいのかどうか、ということもちょっとお聞きしたいなと思っている。
事務局
本日のこの素案についても、委員長にご相談しながら作成したが、事務局としても反省すべき点は本当に感じている。それで、アーツ前橋に行ったときに、館長が「美術館というのは、なくてもいい施設だよ。でも、あったほうがいいに決まっている施設だ」というのを開口一番お話しされた。船橋でもあったほうがいい施設と考えており、美術館をつくるというスタートに立ってこの委員会もお願いした。それで、使命になっているかわからないが、一人でも多くの市民の皆さんに喜んでいただいて、しかも単発ではなくて継続的に、代が変わっても、また、一旦は船橋から離れてもまた船橋に子育てで戻ってくる方に、また訪れていただけるような、そういった継続性は必要だと思っている。それと、独自性の話をされていたが、ソフトの事業をこれからすごく特徴を持たせていかなければいけないと事務局内部では話している。場所と建物もかなりの制約があるので、極端な話、箱があって、そこが基地という起点になって、地域のほうに出ていったり、これからどういう事業展開をさまざまな船橋市内でやっていくかというところが、すごく大事なのかなと話している。それと、清川コレクションについては、行政が十数年前にいただいて、設計図まで市民の方に公開して意見をいただいたということで、やはり行政としての責任も感じており、それは実現しなければいけないと思っている。今の建設予定地は椿貞雄さんが住んでいた場所でもあり、その辺がうまく子どもたちの郷土愛にもつながっていけば一番いいのかなと思っている。名称については、「清川記念館」という限定な名称だと市民の方の誤解があるといけないので、もっと限定的ではなく、船橋市の美術館として考えていきたいと思っている。運営形態については、今、船橋市はそういったソフト面をできる職員がいないので、いろいろ考えていくのが難しい。指定管理の導入に当たっては、指定管理者に裁量のある委託をしなければ意味がないと思っている。ただ、それには行政が責任を持って、当然、市としての美術館というコンセプトをきちんと伝えないといけない。今それを問われれば言えない状況になっているので、それはしっかりと皆さんの報告書を受けた中で位置づけて、前に進めていかなければいけないと思っている。
大澤委員
椿先生の名前が船橋でどの程度、知られているか、それとも船橋以外にも椿先生の作品に対する評価というのがあるのか私はわからないが、椿先生をもし知りたければ、もっと関連した作家の作品もコレクションする必要があるのではないかと考えている。椿さんというのは、申しわけないが、我々船橋で絵を描いている連中も必ずしもみんな知っているわけではない。なので、どういう係累の人で、椿先生の全体像を少しでもわかるような最新のコレクションも必要ではないかという気がした。
前川委員長
今、事務局から話があったことで一つだけ。アーツ前橋の館長の話で、美術館はなくてもいいんだけども、あったほうがいいよと。それは美術館人だからそう思う。世間では、あったほうがいいと思っている人のほうが少ないと思う。なくても何ら影響はしない施設だと思うし、あったからといって何か直接市民の方全員に影響する施設でもないと思う。それだけに活動というのが非常に大事かと私は思う。建った後に多額のお金がかかってくるので、市がそれだけの覚悟を持って、柔軟な考えができるかというのが非常に大事かと思う。だから、市としては必要だという強い気持ちを持ってつくるしかないと思う。
事務局
誤解のないように、私たちは絶対つくるというところは、ゆるぎない。
前川委員長
いえいえ、そうではなしに、教育委員会だけではなしに市の全体の考え方がどうなのかというのが全然見えてこないところがある。提言には拘束力はないので、あとは受けられた当局のほうでどうお考えになるかだけ。非常に覚悟の要ることだなということだけは、ちょっとお話ししておきたいと思う。それと、ソフトがこれから充実していかなければならないというのは、本当に事務局がおっしゃるとおり事実で、それしかないと思う。この委員会でソフトの中身までというのはやはり無理だし、地域というものを考えたときに、やはりきちんとした地域へのリサーチをやった上でソフトというのを考えていくしかないと思う。それは、この提言の中にも入れたが、建てるという方向が決まった段階でできるだけ早く専門職員を入れて、専門職員が地域に根差した活動をして、市民の声を吸い上げて、その方向性に基づいて何をしていくかということが充実していかなければまずいかなと思っている。この独自性は非常に難しい問題なので、結論を出すのは難しいかなと思っているが、各委員の方々のおっしゃることは非常によく理解できるので、その辺を踏まえてもう少し提言の中に文言として入れていく必要はあるかと思う。あと、提言の素案をつくるまでのやりとりの中で、事務局からいろいろな話が出てきたのは「カフェ」という言い方、「美術に特化したコミュニティセンター」という言い方、それから「育児サポート」、これを何か言い方を変えられないかという話が出てきた。確かに「カフェ」というのは美術館としてなじまないという考え方もわかるが、何か代案があるか。
事務局
事務局で会議した中で、「カフェ」とか「コミュニティセンター」というのが、提言書を読んだ人がイメージしやすいような例えとして出ているので、必ずこの言葉が嫌だという感触ではない。ただ、見た人の中に誤解しやすい方というのがいると思うので、その人に対して、例えばこの言葉のままでいくとしても、より誤解のないような、もうちょっと具体的な、ここで使っているときの「カフェ」のイメージとかを明示するという方向であれば、「カフェ」とか「コミュニティセンター」という言葉を使うこと自体に対して、そんなにアレルギーを起こしているような感じではない。
前川委員長
ある意味では「カフェ」という言い方は、実は今もう一般化してしまっている。だから、「カフェ」という言い方が先ほどの独自性と結びつくかどうかは別として、独自性的な言葉ではない。もう世の中には、昨年の秋ぐらいに、「ミュージアム・カフェ」という雑誌が出ているし、博物館では「カフェ」という言い方はもう一般化しているので、そういう意味で使いたくないというならまだ理解できるが。言葉の定義づけをもう少しきちんとやったほうがいいかもしれない。「コミュニティセンター」、「育児サポート」という言い方も。育児の問題も今までいろいろなところでやろうとしている。美術館も今いろいろな形で育児サポートをやりかけてはいる。だけど、これからの美術館を考えたときに、私はやはり先ほどのシブヤ大学と同じように、ターゲットが20代から40代だと思っている。そうすると、やはり若いお父さん、お母さんをターゲットにすべきなのかなと。それより上の方は、言い方は悪いけども黙っていても来る。普通の展示室があり、絵を眺められる場所があればお越しになると思う。子どもは、もう子ども美術館に任せるしかない。新美術館建設予定地で子どもの何かをやるというのは、まず学校単位では無理。美術館として学校にどのようにアウトリーチしていくかということはあると思うが。その辺は子ども美術館とうまく共存、連携するしかない。そうするとターゲットは20代の若い人たちから40代ぐらいまでの人だと私自身は思う。そこで必要になってくるのは、育児のサポートをするスペースという発想。今、美術館というのは、一般的には50歳過ぎが大半を占める。だから、もう少し若い人が継続的に、育児で戻ってくる方とかを踏まえて若い人をどうやって捉えていくかというのは、美術館として、ある意味で独自性を生む部分と思っている。
山田委員
今の話の育児サポートというのは、若い親御さんが美術館で何かを楽しむ間、お子さんを預かるとか、そういう方向が主だったと思うが、最近、僕のところとかは、ワークショップそのものの対象年齢を3歳とか4歳とかに下げてみてはということを始めている。要は、美術館のワークショップそのものが広い意味での育児をサポートするみたいな、そういう意味での育児サポート。そういう意味では、先ほどの20代から40代というのももちろんそうだが、そういう子どももここは対象なのではないか。
前川委員長
私のイメージはそう。小さい子どもをターゲットとしたワークショップをやる。そこに親を巻き込んでいくという。
山田委員
なので、そういう意味では、「育児サポート」と言ってしまうと、何かいかにも預かるみたいに聞こえてしまうのは、ちょっともったいないかなという感じはする。
前川委員長
どこかに「キッズルーム」という言い方をしていたが、結局、常にワークショップをやっているわけにもいかないから、子どもの遊べるスペースをつくってあげて、そこで創造的な遊びができるようなものを用意しておいてあげる。それで、一日何回かワークショップを展開していくということを考えてもおもしろいかと思う。ただ、子どもがいっぱい来て、わあわあ泣いたり叫んだりしますと、多分ほかの異空間を求めて来たお客さんからクレームが出る。だからルームという書き方をしたが、そこだけはオープンスペースではなく、閉鎖されたスペースでもいいかと私は思っている。
谷口委員
前回の委員会で倉本委員から、船橋市は児童ホームとか放課後ルームが充実しているという話があって、多分、その中で子どもさんを見ておられる先生方はいろんなノウハウをお持ちだと思う。船橋の中でそういういろいろなノウハウを持っている者を集めてきて美術館の育児ルームで展開するというのは、それほど難しいことではないのではと思っている。「カフェ」だとか「コミュニティセンター」だとか、そういう言葉に対する違和感や抵抗がある人がいるのであれば、今の文化とか芸術とか美術というのはそうではないんだという、市民全体の意識を高めていくことも、徐々にやっていかざるを得ないのかなと。うまくそういう壁を乗り越えて、船橋市全体が文化のまちとして定着するのではないかなと、美術館ができることによっての大きな期待がある。ただ、事務局で懸念されているのは、そういう「カフェ」だとか「コミュニティセンター」を理解しない人たちがいるんだということだと思うが、それは言い方だとかやり方によってかなり理解していただけるのではないかとは思う。
事務局
「カフェ」という言葉が、アート・美術の世界ではもう一般的になりつつあるという話があった。私どもで話したときもカフェというイメージはそうなのかなと思った中で、かわりになる言葉を考えたときに、「サロン」とか、「リビング」とか、いろいろな考えも出たが、もしかしたら「カフェ」にかわるような新しい流れというか、アートの新しい考えの中で出ているのか。
山田委員
カフェのスタイルの一つの重要な部分は、例えば何か募集のチラシを見てとか、事前に申し込んで行くとかとは別に、もっと日常の行動の、毎日毎日この道を通るとか、こっちの方向に行ったときにはこの店をのぞくとか、誰にも強制されない、しかし半ば一人一人の人間のライフスタイルの中では繰り返し化された行動の中で、自分でその日の気持ちで扉をあけてふっと入るというところだと思う。一方、コミュニティセンターというものは、言葉は随分古くから使われていて、恐らく40年ぐらい前に発想されてつくられて、当時は非常にハイカラな言葉だったが、実態は当時から大したことはなく、少し利用基準の緩い公民館ということ。そこで象徴されるのは、人と人が出会うが、その出会いは事前に共通の趣味を持っていることについて申し込んだり、ある講座を受講しに行ったら偶然隣の席になったとかのほうが一般的にみんな思いつくのではと思う。新しく今考えている施設は、恐らくそういう側面も全くないわけではないので、「コミュニティセンター」と「カフェ」という言葉が併存しているのだと思う。両方がお互いに補っている部分があるのではと思う。もし完全にカフェスタイルだとすると、自発的な行動を待ち受けるだけのものかもしれない、あるいは一個一個細かいサービスごとにお金を払わないといけないのかなとか、カフェというものの持っている属性が表に出てくると思う。そのことを説明する必要は確かにあると思う。個人的な感じからいえば、「コミュニティセンター」という言葉のほうが、非常に手あかのついた言葉なので、どうなんだろうか。何よりもセンターという考えが今はどうなのかと感じる。
倉本委員
シブヤ大学では「プラットホーム」という言葉を使っている。今の山田委員の話は、利用者の立場で気楽にいつでも集えたり自由に行き来したりする。プラットホームという考え方は、運営する側がプラットホームと言って、いろいろな場所に情報を流して、いろいろなところで事が起こっていく、そこの基地となるプラットホームなのだと思う。やはり意味と言葉というのはうまく結びつかないことがあって、一番意味が的確にあらわせる新しい言葉ができ上がるといいが、なかなかでき上がらないゆえに古い言葉を使ってどうにかあらわそうとしている。もしできるならば新しい言葉、「カフェコミュ」かは知らないが、「カフェ」と「コミュ」をくっつけて新しい言葉にするとかも一つの方法ではあるかと思うが、名前を説明するときに、きちんと持っている役割を一つ定義をしてやる必要がある。
山田委員
例えばさっき候補で「サロン」という言葉が出たが、サロンは非常に排他的で、入れる者と入れない者を選別して、中に入れた者にとっては至高の達成感や優越感に浸るという意味合いもあるので、聞きようによっては非常に不快な言葉でもある。
事務局
事務局のほうで「カフェ」の語源等も調べて、言い得ているという結論になった。ほかに象徴できる言葉がないと納得はしたが、先ほども言ったように、美術館の必要度を高く捉えていない方にとっては、コーヒーショップをつくるのかと誤解をされやすい。例えば「カフェ」イコール「出会い」とか「集う」とか「憩う」とかを一々つけたらどうだろうかとやってみた。しかし、一般的に持っているイメージが先行したときに説明が追いつかない。コミュニティの形成をつくる場にするという説明を一々しなければいけない。もう少し工夫の余地がないのか、事務局でも何回か意見を出し合ってはいる。
倉本委員
そこはやはり覚悟。今後、進めていく上で、全ての方にわかっていただくというのは非常に難しいところもあるので、いかに情熱を持って、覚悟を持って、新しい一つの施設をつくっていくんだという勢いがないといけないのではないかと私は思う。
前川委員長
確かに、言葉で表現する以上、既成の言葉を使わざるを得ない。その言葉について必ず定義づけをしていかなければならないから、説明はその都度やっていかなければならない。新たな言葉をつくったとしても、それについての説明はもっと細かくやらなければならないという部分があるので、説明をしなくて済む言葉というのは私はないと思う。
事務局
単なる言葉の説明というより思いという部分で、やはり熱く前面に出していかなければいけない。先ほど「プラットホーム」という言葉が出たが、「プラットホーム?えっ、何?」となって、そうすると必ず「どういう意味なの?」と次に興味が出る。そうすると説明をしていくことも可能かなと思った。しかし、余りにも「カフェ」という言葉が日常とイコールになる部分で一般的に流通している言葉なので、余計そこから受ける誤解があるというところを心配した。先の心配かもしれないが、美術館は要らないという考えもある中で、いろいろと事務局で論議した。趣旨についての象徴的な言葉ということで、全体を一つのカフェというようなイメージはできるとは思うので、私たち事務局としては、「カフェ」という言葉は納得した。
島津委員
カフェはパブリックな場所というイメージも大きいので、「カフェ美術館」とか、美術館の名前にカフェを使うのでない以上は、やはり説明を必ずつけていくことと思うので、定義づけをいかに効果的にするかによって、まさに目指すところがカフェ的なものであるということが的確に伝わるのではないかと思う。それと、「コーヒーショップですか」などというものの見方をされたときに、しかしこれは美術館なのであると。コレクションを持っているのが美術館の定義だとすれば、コレクションがあるからやはり美術館である。そうすると、人によっては全く違うものとして捉えている美術館というものが、カフェ的な雰囲気を持つとはどういうことか説明の仕方を組み立てることで、誤解のない、目指す趣旨を的確に伝えられるのではと思う。「カフェ」で誤解があるならば「カフェ的な」としてもいいが、個人的にはこの言葉はすごくうまい言葉だと思う。「プラットホーム」でも「クラウド」でもいいのかもしれないが、ちょっと言葉が新しいので、逆にもっと一般的な「カフェ」という言葉の方がパブリックとか日常とかということを言いやすいように思う。
山田委員
ワンクッション入れたらどうか。例えば、「ミュージアム・カフェスタイル」とか「カフェスタイル・ミュージアム」とか言う。そのときに、「カフェはみんな知っているでしょ。あのカフェですよ」「そうそう、コーヒーとか飲むあれですよ」「そのスタイルのミュージアムって一体何を言おうと思っているのかというと、こうなんですよ」と言ったほうがいいかもしれない。
島津委員
いわゆる美術と日常の私たちがつくっていくものが、それは分断されたものではなくて、この美術館では融合しているんだということを言うのにも非常に効果的なのではないか。清川コレクションの活用の方針の説明にもなっていく。人がつくるということにおいては同じものなので、それが歴史化して美術品になっていくという点が異なっているが、でもその起点、つくるという点においては、船橋市民も椿貞雄も同じであったわけで、そういうところで身近さみたいなことに資することもできる。それが歴史化することで、ある特殊な質を持つ異空間を生じさせることにも変わっていくということも説明できるかもしれない。
前川委員長
コミュニティセンターはどうか。何か代案はあるか。確かに私もこの言葉は古いなと思っている。もうちょっと新しい言葉に変えたいなと思うが、ピンとくる言葉がない。
事務局
「アートに特化したコミュニティセンター」というと、頭につくものも含めて、結局コミュニティセンターなんじゃないかという話になってしまう。コミュニティセンターをつくるというイメージになったときに、「公民館があるからいいじゃないか」みたいにならないような……。
前川委員長
では、もうセンターはやめて、コミュニティ・ミュージアムにするのはどうか。アートに特化したコミュニティ・ミュージアム。
谷口委員
個人的な思いからいうと、コミュニティセンターと公民館ってそんなに結びつくものか。カフェにしても、船橋市がカフェをつくるのではないと言うのだけど、私は市がカフェをつくるという言い方をしてもいいと思う。「カフェなんだけど実は美術館」という宣伝効果というか、驚きというか。これからの美術館というのは、ただ収蔵して展示するだけの美術館じゃだめだというのは市も思っているし、我々も思っている。だから、「美術館全体がカフェ」という美術館ができたら、「そんなのができたら、私、毎日行きたいわ」という友達もいるし、「えっ、そんなの本当につくれるの?」みたいにびっくりする人もいるし、かなりのインパクトがあると思う。なので、説明するのに難しいというのを、乗り越えていただきたい。
島津委員
コミュニティセンターだったらあるではないかということに対する説明であれば、言葉がダブっているという単純な問題なので、前川委員長が言ったように少し言葉を変えて「コミュニティ・ミュージアムとして」という言い方をするとか、何となく「コミュニティ」という言葉を喚起することで伝わるものはあると思う。重複を避けたいというだけであれば、「センター」という言葉を変えればいいのではないか。やはり「コミュニティ」ということは大きい指針と関係してくるし、説明には必要かと思う。
前川委員長
もう2時間経過した。事務局で次回に向けて論点を整理してほしい。ここまでの提言書の素案に行く間に、事務局と私とのやりとりでも、事務局の考え方があったと思うので、その辺を踏まえて次回の論点を出していただきたい。最初に話のあった独自性に対する各委員からの意見があったので、それをまとめていただきたい。独自性を今後どうやって生かしていくか、ずっと継続していくためにはどうするかという問題が運営主体の問題、それから市の考え方の問題等が出てきていると思うが、その辺も提言書の中に入れたいと思っている。それと事務局から話があった言葉の定義づけの問題、その辺を少し次回は論点で話し合ってみたい。「カフェ」、「コミュニティセンター」、「育児サポート」をどういう言い方をするかも考えたほうがいい。それと、きょうはできなかったのが、この提言を踏まえて、建築変更に対しての要望、一応6ページに8つ挙げてあるが、果たしてこれでいいのか、各委員には、お帰りいただいてよくご検討いただければありがたい。それから、3番目の「美術館を充実させるための課題について」、1から7まで項目立ててうたっているが、この内容について次回は少し練っていただければと思う。これプラス必要なものがあるかというのと、中身についてもう少しこういう視点で述べておいたほうがいいのではというところがあったら、次回指摘いただきたい。それから、4番目の吉澤野球博物館については、突然ここに入っているので、コレクションについての意見と資料の間に、何か言葉を入れないとわからない。「なぜここで突然出てきたの」みたいなところがあるので、つながるような言葉を考えていただきたい。あと、一番最後の10ページの「船橋市に期待すること」、これが一番大事と思っているので、次回ぜひご意見をいただきたい。その辺をいただいた上で最終的な提言書にまとめていきたい。きょうはまとまりなく話をいただいたが、独自性というものがそれぞれ考え方が違うところがわかった。最終的には事務局の覚悟みたいなところが独自性にはあると思う。その辺も踏まえて「美術館の使命・活動方針」のところをもう少し充実させたほうがいいかなと思う。事務局の考えがもしあれば、中に入れていただきたい。正直言って、提言書なので委員の意見だけでまとめて出すこともできるが、それでは受けられたほうも大変なので、そこも踏まえて入れておいていただければと思う。それでは、きょうはこれで終わる。
(以上、1時間56分)
9 資料・特記事項
第9回船橋市美術館運営等検討委員会会議資料
- 船橋市美術館運営等検討委員会提言書(素案)
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船橋市教育委員会 生涯学習部 文化課
電話:047-436-2894
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