第5回船橋市美術館運営等検討委員会会議録

更新日:平成26(2014)年9月10日(水曜日)

ページID:P030734

1 開催日時

平成26年3月15日
午前10時00分~

2 開催場所

 市役所本庁舎9階
903会議室

3 出席者

(1)委員

  • 前川委員長
  • 大澤委員
  • 山田委員
  • 島津委員
  • 柴田委員
  • 倉本委員
  • 谷口委員

(2)事務局

  • 武藤文化課長
  • 仲臺文化課長補佐
  • 安原文化振興係長
  • 鎌田主事

4 欠席者

  • なし

5 議題及び公開・非公開の別並びに非公開の場合にあっては、その理由

議題

  1. 吉澤野球博物館受入及び受入後スケジュール案 ほか (検討委員会・吉澤寄贈美術品評価)
  2. 運営方針について(教育委員会文化課)

公開

6 傍聴者数(全部を非公開で行う会議の場合を除く)

なし

7 決定事項

第6回船橋市美術館運営等検討委員会の日程

8 議事

 前川委員長
それでは第5回の検討委員会を開催する。

事務局
いよいよ会議も本題に入ってきた。事務局では18年度の構想をベースに考えているので、もう一度この辺りに手を入れながら進めて行かなければならない。方向性をきちんとお話しできる部分もまだ少ないがご協力願いたい。

前川委員長
では本日の議題に入る。

1. 平成26年度予算について

事務局
「吉澤野球博物館受入及び受入後スケジュール案 ほか 」について説明 (資料参照)

2.運営方針について

事務局
「運営方針」について説明 (資料参照)

前川委員長
今の説明を受けてのご意見・ご感想・ご質問を伺いたい。まず私からは、やはり公立館ということを意識されたためか「市民」という言葉が多用されていた印象。市民の力を活用するという部分にウェイトが置かれている。アーティストインレジデンスやエデュケーターの話が、今までのイメージと若干異なるので、その2点についてご意見を伺いたい。島津さんから。

島津委員
資料中の「スタッフの役割」内の「エデュケーター」に関して、美術教育・アートカフェ・展示というようにかなり幅広い役割が振られており、その人員は1人となっているが、この幅広い役割を1人で担っていくイメージなのか。

事務局
エデュケーターという言葉に具体的なイメージが与えられなかったので、ひとまず1人と表記した。

島津委員
理解した。教育の普及という分野のスペシャリストがエデュケーターであると私は理解をしているが、この資料では展示という業務も含まれている。展示企画業務と教育的業務とを切り分けるひとつのポイントが、展示の実際にかかわるのかどうかという点である。資料ではエデュケーターに想定されている範囲が少々広すぎる印象。また市民学芸員制度という言葉について、具体的にイメージされているものを教えてほしい。

前川委員長
市民学芸員制度についてはさほど具体的なイメージは無いと思われる。エデュケーターについて倉本さん何かご意見を。

倉本委員
本日の資料は内容の盛り込みがかなり多く、抽象的な言葉であれこれと詰め込まれている印象。学芸員や教育指導員という既存の言葉のイメージに縛られず、あるべき姿をはっきりとさせれば自ずと形になるだろう。現時点で縛られ始めるとオーソドックスな形に近づいて行き、これから先何十年と積み重ねていく施設としてはどうなのかと思う。目指すべき姿を具体化・言葉にしていくことを優先すべき。

前川委員長
目指すべき姿が一番大事だと思うが、その辺りのイメージがまだ出てこないものと思う。また、現在全国で活動している美術館全体の実態を見ても、その中から何に特化できるのかというのも非常に難しいこと。何かイメージはないか。

倉本委員
いちはらアートミックスのように、観光協会の運営により色々な文化事業に取り組んでいるというケースもある。市原では観光課の職員が一人の美術コーディネーターを入れている。運営形態に拘らずにアイディアを出し合って、あるべき姿として非常に特徴のある地域になっている。船橋の建設予定地は飲食店の多い、夜にはにぎやかになりそうなところにある。そのような特殊性を取り入れていくことも考えられる。

前川委員長
今の倉本さんのお話や、子ども美術館を視察した内容からすると、美術館が無くても十分やっていけるのではないかという話になってもおかしくはない。しかしここでは美術館の必要性について考えていかなければならない。市原ではダム湖のところに美術館はあるものの、運営の主体は行政でありあの施設自体ではない。美術館としての必然性があるかどうかということになるだろう。

山田委員
資料の内容はここ20年ぐらい全国的に言われているような内容であり、目新しいものはさほどない。今の美術館でも皆大体同じようなことを言っている。ただこの資料の中には内容の濃いところと薄いところがあり、濃いところには、今までにあまりないようなことが漠然としていながらも一生懸命謳われている。逆に薄いところには、当たり障りのないことが穴埋めのパーツのようにはめこまれている。たとえば「市民学芸員」というのは全国どこでも耳にするような言葉ではない。すると何かここに芽があるのではないかと考えることもできる。また、倉本委員のお話にもあがった周辺地域の特性。夜になると人通りがなくなるのではなく、逆に多くなる。資料の中にはこれに関連するアイディアは沢山あり、「アートカフェ」や「アートディナー」、「アートパーティー」や「親子アニメランチ」と言った、細分化された具体的なイメージは、現在検討されている美術館の立地にも一番合っていると言えるのではないか。逆にアーティストインレジデンスなどは、申し訳ないが非常に取ってつけたような話であるということが明らかである。一生懸命書いた濃い部分というのを取り出せば、既に何かの特質があるのではないか。

前川委員長
濃いと感じた部分についてはどうか。

山田委員
濃いと感じた部分は、アートランチやアートディナーといったところ。おそらくこれは月に一回程度の開催では仕方ないので、ずっと営業していくということだろう。そこから特化させるのであれば、たとえば夜12時まで空いている美術館を想定して、そこをどんな事業で埋めていくかという考え方があるかと思う。またアートカフェ事業についても、美術館があってその中でアートカフェ事業をやるのではなく、この美術館はアートカフェなのだという風に決めてしまえば、これは特化の出発点になるのではないか。また市民学芸員についても、普通の美術館の中に市民学芸員制度というものがあるのではなく、ここの学芸員は全員市民学芸員なのだという風にすれば、例えばではあるが既に十分特化している、あるいは具体的な特質となっていると言えるのではないか。

柴田委員
概ね同様の感想である。この資料にあるままに運営を具体化しようとすれば、できないこともたくさん出てくるだろう。あまりにも漠然とし過ぎていて具体的に動けない状況に陥る恐れもある。自分はどちらかというと立地条件や状況等から発想するタイプなので、とにかく他館との差別化ということを軸に、色々と案を出していってはどうか。一般的な要素というものは後からでも継ぎ足していけると思うので、特化の要素に成り得るものを見つけ出して、そこを掘り下げていくということで話を進めていけば良いのではないか。

前川委員長
話の終着点が「必然性」に行きついてしまうが、その点については事務局でも考えた上で出てこない現況なのだろう。今の段階で結論を基に内容を考えていくことは難しく、また求めたところで結論自体が出てこないだろう。各委員からの提案の中で、これは面白いというものから探っていくしかないのではないか。個人的にも今の事務局の話は今の全国の美術館とそう変わり映えしない内容だと感じた。また同時に色々な問題を内包していると思う。たとえばアーティストインレジデンスというものをやる場合、どういう作家に対してどういう待遇でどこに宿泊させてどうするのかということになると、既に行っているところもあるものの、ある意味美術館でなくても出来ることである。美術館でなくても出来ることと美術館でないとできないことというのはしっかり分けて考えるべき。船橋市にも美術館が無い中でコレクションの収集や保存など今までやってこれたことがあり、展覧会は年に1回市民ギャラリーでコレクション展をやっているが、他にやっていないことと言えばそれ以外の展覧会くらいのものである。すると本当に美術館の必然性があるのかどうかという問題に直面する。今まで行ってこなかったことの中から、美術館として何をやらなければならないのかを考えてみることも大切である。また市民学芸員と言葉にするのは簡単だが、通常の学芸員を養成するのに要求される努力を思うと、それを美術館の学芸員が一人で育てていくというのはまず難しい話。市民を巻き込むということはそれだけで仕事量が相当増える。通常の美術館の仕事の範囲で考えているのであればとんでもない話。結局どこの公立館でも「市民、市民」と言いながらも実現できていない背景にはそういった事情がある。また、言い方は悪いがそこまで作りあげられるだけの「器量のある」学芸員を獲得できるかどうかも生命線になる。優秀だと思って雇うものの、決して感動できる学芸員ばかりではないという現実がある。さらに、子ども美術館で十分できていることを同じ市の施設で重複して行わない意識も必要である。

谷口委員
18年度の運営方針は素晴らしいと思う反面、模範解答のようで他の自治体でもこのような考え方はできるだろうと感じる。どのように特化させるかということについて、そもそも船橋市に特化していけるべきものがあるのかどうか疑問。またアートカフェについて、図面を見ているがカフェを置くような場所はあるか。

事務局
ない。最初の図面には盛り込まれていたが、方々からの意見を受けて設計変更を行った際に取り除かれた。

谷口委員
各委員からの意見を聞いていた中で、アートカフェを特化させていくというのは良いと思う。しかし具体的な設計の中にカフェが含まれていない状態でどう考えればよいのかわからない。

前川委員長
それに関して、佐倉市美術館が1階にカフェを作った際、周りの飲食店から相当の反対があったという話を聞いている。今度建てようとしている立地条件を考えたとき、周りの飲食店の同意が得られるのか。公的な機関が飲食業を始めるとなれば、周辺の飲食店にとって非常に強いプレッシャーになる可能性が高い。

倉本委員
カフェと言っても食べさせるということだけではないと思う。今、「アートと食」をひとつのテーマとして取り上げているアーティストは非常に多く、そのアート表現の分野も含んだカフェという概念もあるのでは。ただ食べさせるレストラン等だけではないと思う。

事務局
美術館の必然性について、名称にもあるように、そもそもこの美術館構想には清川コレクションが外せない。清川コレクション、中でも椿貞雄の作品が重要な部分を占めており、その活用についてはどうしても考えなければならない。今まで建築図面や当時の考え方を示したとおり、状況はまっさらではない。建物については、現状の設計に利用面でのデメリットがあるということであれば、設計変更の必要性についてご提言いただきたいが、清川コレクションのことは常に頭に入れて進めていただきたい。

山田委員
そうであれば、この美術館の一番の運営方針は清川コレクションの展示とすれば良い。新しい文化の発信や美術教育の普及等という抽象的な事柄に関しては新たにやる必要性が必ずしもあるとは言えないが、清川コレクションの展示こそこの美術館でなくてはできない仕事である。清川コレクションを活用したいという意思に加え、もう少し何か足せないだろうかというような考え方が本当ならば、逆に18年の運営方針は清川コレクションを埋没させてしまう方向に作られており、こんなことは言いたくないがフェアではない。フェアなやり方でやれば、とにかく何が何でも清川コレクションを見せることをもっとも重要なミッションとして、それを展示するために一番良い方法は何なのだろうか、またその上で更にもっと何ができるだろうかということを考えた方が良い。逆に、新しい文化の発信の場というものを中心に据えて、その中に清川コレクションがあると言われても、誰もが疑問や違和感を覚えるだろう。清川コレクションがそれだけ外せないものならば、それを展示し、活用し、なるべく頻繁に人に見せようという考えが重要になる。その場合、余計なことかもしれないが、現在は寄贈されたコレクションのみで考えているようだが、場合によっては財政的な支出(コレクションの拡充)も考えるべきかもしれない。もう一つカフェという言葉について。ここでいうカフェというのは必ずしも食とさえ直接結びつく必要はない。カフェの機能として、ひとつのスペースの中で価値観が緩やかに共有されたり、皆が良いとしている新しいものにふれたりというようなことがある。この場合そこで飲食を提供することさえ実はそれほど重要ではない。そこのテイストや、それを共有し、醸成させ、あるいは新しいものと掛け合わせ、「これが新しくてかっこいいのだ」ということを発するものというイメージでとらえるべきではないか。

前川委員長
カフェについてはもっと詰めなければならないかと思う。清川コレクションについて、椿貞雄というのが美術館としての特色に成り得るだろうか。

山田委員
正直に言って現状では特色になりきれないと思う。椿貞雄の作品がある程度あって、もちろん良いものも含まれているとして、それで365日押し通すには無理がある。作品の拡充や、岸田劉生などの周辺作家、あるいはもう少し広く大正期の色々な作家、海外で苦闘した作家の企画展を開いたり、また更に幅を広げて資料的な展示を行ったり、そのような形で補強がされれば、ある程度は可能かもしれないが、なかなかやりづらいだろう。

前川委員長
個人的な意見になるが、椿貞雄はまだメジャーではなく、それを船橋でメジャーにするということ自体は良いと思う。ただ果たしてメジャーになれる要素を持った作家かどうかはよく見極めなければならない。椿が船橋に来た頃にちょうど岸田劉生が亡くなり、自分の画風を船橋で作り始めようとしたときに、作りきれずに亡くなっている。その作家を代表作家として目玉に据えていくというのは非常に難しい。椿作品の数自体はかなりあり、ある公立の美術館にご遺族が関係者を通じて寄託されている。遺族を通してそれら全てを船橋に移すことができればかなりのコレクションになると思う。また市内にも作品をお持ちの方が何人か居るので、集めようと思えばできなくはないだろうが、果たしてそれがメジャーになるかどうかというところが勝負だと思う。その辺りもひとつ含んでおいていただきたい。

谷口委員
名称にしても、清川記念館という名称にした場合と船橋市美術館という名称にした場合とでは市民の受け止め方もかなり違う。その点について市ではどのように考えているか。

事務局
市の美術館運営を継続的に発展させていく中で、清川コレクションがメインコンテンツとしては厳しいというご意見があれば、軌道修正は必要だと考えており、そのための委員会の設置だと理解している。十分有名な方であれば、その記念館を作れば恐らくそれで良しとなるのだろうが、本市においてはそうではない。郷土の偉大なる方だということは紛れもないことであり、子供たちに船橋の良さを知ってもらうための場となってほしいという思いもある。また美術館建設の一番の必然的要素ではあるものの、今後市の公的な施設として継続的に運営していくことを考えると行政の方としても難しさがあり、この点が、清川記念館が長きにわたって建設に至らなかった主因ではないかと考えている。

前川委員長
私も委員長の立場、美術館の関係者としての立場と色々な立場から非常に申し上げにくい部分がある。椿貞雄にとって晩年ここに住んでいた時期というのが非常に大事な時期だったということは確かにあるが、他には特にない。また清川コレクションは、椿作品のコレクションとしてはトップクラスではない。椿の作品を持っているところとして、他に米沢市や平塚市、千葉県立美術館がある。米沢はかなり積極的に買っていたのでかなりの数が入っている。また椿は過去に湘南に住んでいたので、平塚市の美術館にもかなり入っている。千葉県美にも20数点入っており、正直に言って県内のコレクションとしては、やはり千葉県美のコレクションの方が良質である。清川コレクションの椿作品の一部は市の指定文化財になってはいるものの、やはり内容的には厳しいと感じる。これについては委員各位のお考え、見識があると思うので、あくまで私個人の意見としてお話させていただいた。

島津委員
椿作品が中心核となり得ないならば、例えば大正・昭和期という時代的な限定を設けて範囲を広げても良い。野球博物館がどうなるのか判らないが、唯一清川コレクションとつながる点は時代性であり、そういった区切りを作ってもよいのでは。それに伴い収集方針についても、椿周辺の作家に加え、その時代の作品群も積極的に組み込めるようになる。世田谷美術館では向井潤吉アトリエ館を別館として設け、向井のものはいつもそこに行けば見られる状態にして、本館の方では制限されずにいろんな企画展を自由に行っている。清川記念館の場合は1館の中ですべて展開していくのだろうから、その他の活動と全く何の関連もないより、つながりをつくる道筋を増やすため、いくつか柱をたててみるのもひとつである。またカフェについては山田委員のお話を受けて言うことだが、やはり場としてなんとなく魅力的で、そこに行けば何かアートに関係するようなことを見聞きできるのではないかと期待させる場として定着すれば、非常に活性化につながると思う。そこではやはり(メニューとして)何が出るかというよりは、場そのものが大事になる。ではその中で扱うアートとは一体何かといったとき、それは人々の知識や見識によってかなり変わってくるものであり、本来拘束される必要はないものの、清川コレクションを核とした企画なり展示というものがいつもどこか垣間見えている形というのもあり得ると思う。そのことと現代のものを扱ったり、アーティストを招いて活動を展開するといったことは全く相反しないことなので、別に何でもないところに1軒カフェを建てて何でもいいからアートをというわけではない以上、こういうものがあるというアートのイメージの一つとして、美術館のコレクションを位置づけて活用するということも考えられるのでは。ここからは単なる個人的な話だが、先日アーツ前橋を訪れた際、あそこもやはり地域の活性化・連携を考えていて、アーツ前橋とその周辺の色々な場所とがつながりを持って、どこそこにいくと郷土料理のワークショップがあるとか、そんなことをやっていた。ただ私はベビーカーを押していたので、そんなに遠くには行けず、具体的なところで活動の展開を追っていけなかったということもあり、活動がどんどん広い地域に広がっていくのは良いと思うが、しかしその中でもメインの場所には常に何かがあるようにしておかないと、求心力が逆に弱まってしまうのではと感じた。先ほどの「場」についても、山田委員のおっしゃるように何か食べられるとかそういうことではなく、「場」そのものの魅力につきるのだと感じた。因みにアーツ前橋では、素敵なカフェバーがあって、非常に凝ったコーヒーを扱っていて素敵な感じだった。まだ開館したばかりだったので私が行ったときはちょうど館長さんがいて、地元の方かわからないが作家さんたちと和気あいあいとしゃべっていたり、そういう活気のある雰囲気もカフェを特色づける大きな要素なのではと感じた。

前川委員長
コレクションの形成については、市側にコレクションを充実させていくんだというよほどの継続的な財源がないと厳しい。それも含めてお考えいただきたい。確かに椿を核にしたある程度特色のあるコレクションを組むということはあり得る話だが、それには相当の努力と継続的な財源、場合によってはチャンスや出会いが大事となり、また長期にわたる時間も必要になってくる。そうそう簡単な話ではない。

倉本委員
18年当時の建築設計を見ると、清川コレクションの常設展示室が作られている。色々と話された結果だと思うが、椿貞雄作品の質云々とは別に、また違う切り口もあるのではないか。かつてある時代はコレクターが非常に多かった。コレクターというのはいったいどういう視点でものを見ているのか、何かそういう指針を示す企画もできるかもしれない。運営上、企画の一つに組み入れやすい形を作っていけば良いのでは。コレクターとして、美術品と土地まで寄付された方に敬意を表するという意味で、一つの部屋を作っておこうという結果だったと思うが、それを今後1階のスペースでどうやって活用していくかというのはこれからの問題で、切り口はいろいろあると思う。

柴田委員
自分も清川コレクションが美術館の核になるのは非常に厳しいと思う。自分は30数年前に船橋に来たが、中心街はほとんど文化のにおいがないという感じを強く受けた。船橋では美術や芸術があまり日常の生活の中に入っていない。ただ、住んでいる人を見ると、色々な活動をしている人もいっぱいいる。普通の人にとってみれば、美術品が現物で日常空間の中にあるというのはあまりないのではないか。日常の生活空間の中で、あそこに行けば椿貞雄作品の現物があるというような、そういうことだけでも一つ、何かできるのではないかと思う。さきほど夜の12時まで開館するというアイディアが出ていたが、あの辺りは夜になると非常に活気があり様々な年齢層がいるところなので、そこへ行けば常に現物がかかっているというような形で活かしていけるのでは。日常生活の中で皆の目に触れる形にして、そこに時代背景などから関連付けた企画なども組み合わせていけると思う。特化という面について、市の姉妹都市であるオーデンセ市は船橋に比べれば非常に人口も少ないまちでありながら、8つ程の美術館を持っている。その中で日常的に色々なイベントを企画していて、若い作家もそこで活動している。そちらとのつながりは大分できていると思う。向こうのグッズもデザイン的にすぐれたものがあり、大人向けの部分でもう少し発展が期待できると思う。国際的な市民交流という広がりを持つことができるのでは。子ども美術館についてもワークショップなど色々とやっているが、大人をターゲットに展開していけるイベントや事業等も可能だろう。その辺りで特化させることもできると思う。

前川委員長
一委員としての意見を言わせてもらうが、個人的には清川コレクションの公開については新しい美術館でせずとも良いと思う。例えば野球博物館の建物を展示室に改装して清川コレクションの展示の場として位置付けられれば、大きさ的には十分である。連携利用や子供たちに対する対応というのは子ども美術館の方で十分やっているので、新しい美術館構想の中に子ども美術館をきちんと組み込めないだろうかと思っている。子ども美術館は指定管理者制度を採用して独立でやってこられた経緯はあると思うが、行政組織的に連携なり組み込みなりをしながら位置づけることはできないのか。既にあれだけの活動をしている既存館があるのに、新たな美術館を作ってまで、またワークショップや普及活動をやるというのは、非常に意味がないと思う。またアートカフェについても、美術館を何のために建てるのかというと、私個人的にはコミュニティを形成する場としてだと思っている。市民のコミュニティを形成する場の一つの施設として、アートカフェというのは非常に良いまた、今まで船橋市でやってきたことを全部整理して考えた上で、美術館にあって必要なものは何かと言うと、実物鑑賞なのではないかと思う。今実物そのものを見る場所が無いということと、美術を通しての交流の場がない、市民になにか情報を発信する場所がない。新たな美術館はそこに特化すれば良いと思う。そうやって考えていくと、アーツ前橋が重なってくる。しかしアーツ前橋と同じようなものを作っても意味がないので、「では何があるか」というところを検討しても良いのではないか。アーツ前橋の形というのは、確かにこれからの新しい美術館の形なのではないかと思う。

柴田委員
ほぼ同意。一つだけ、吉澤野球博物館の場所で、例えばコレクション展を開催したとして、見に行くかどうかと言われると行かないだろう。自分としては、飲み屋街とか、最近は若い人たちのちょっとおしゃれな飲み屋もある、活気のある空間の中に、そういう絵もあるとか、そういう人もいたとか、そこから興味がある人はもっと深く自分もいろいろと調べていくだろうし、こちらもそういう提供を時々していくという形が良いのではないかと思っている。

谷口委員
それを言ってしまうと、あそこに何をもってきたとしても、何を展示しても、多分人はそんなに行かないと思う。やり方次第だと思うので、何とかそれは船橋市の方でも知恵を出し合いながら活用して行く方向を考えてほしい。清川記念館の物をそのまま野球博物館にもっていけるのであれば、かなりいいアイディア。新しい美術館は、新規で考えることができるし、検討の幅も広がるのではないか。

大澤委員
私も仲間に呼び掛けて話を聞くが、カフェについての必要性は感じている。団体の仲間内だけで話し合っている内容ではあるが、建築予定場所に皆抵抗を感じている。「あんなところへ建てたところで」といった調子。やはり元々の清川氏の展示方法や展示場所に関する意識が前提にあって、また窮屈なところへ建てるということについて、正直に言ってもっと他にないものかという感想である。

(前川委員長)
もう一言付け加えたい。新しい美術館、企画展示室、そういう場所はコミュニティ形成の中でも必要だと思う。だから展覧会をやろうとなれば、これは今まで船橋にない事業であるから、それが必要なのか、また何をやるかという問題になる。その点について、私は前々から事務局の方に話をしたかと思うが、船橋の今の売りはやはりデンマークだろうと思っているので、絵本を取り上げれば良いのではないかとずっと思っている。絵本に焦点をあてている美術館というのは実は多くなく、また経費を抑えた展覧会ができる。1階にカフェのようなもので交流の場を作り、学芸員がいて、そこからいろんな情報発信をしていくという仕事を丹念にやっていく。そういうスタイルがいいのかなと個人的には考えているが、みなさんのご意見を伺わなければならないと思う。やはりどうしても既成の美術館の概念に囚われがちになっていくので、きっぱりと既成のものと新しいものとを分けて考えたほうが、これからの美術館を考えていくにあたり広がりが生まれると思う。事務局からの説明にある今までの経緯から行くと、色々と拭い去れない部分があると思うが、それはそれとしてどこかで活用する場所をきっちりと作り、考えることの方が新たな美術館のために良いと考える。

事務局
先ほどお話にあがった実物鑑賞に関して、船橋は他に浮世絵などを貴重資料として所有しているが、それらの中に清川コレクションも含め、山口横丁や野球博物館を公開の場として利用していくというようなイメージか。

前川委員長
そうである。したがって、可能であれば清川コレクションについては、野球博物館の建物を公開の場として位置付けても良いだろう。正直に言って個人による収集のせいか、内容的にまとまっている部分と、個人的交流から入ってきた部分とのギャップが大きく、非常に違和感がある。たとえば絵画の部分と書の部分に関する違和感などが顕著であるが、したがって所蔵品として作品個々に管理・展示するよりも、清川コレクションの公開の場を設けて一箇所で展示した方が活用しやすいだろう。もうひとつ、市民ギャラリー機能については新しい美術館にも積極的に取り入れて良いだろう。それにより市民の方が集ってくる場所ができてくる。今までの公立の美術館は市民ギャラリーに対して意外に冷たい。しかし、やはり公立の美術館の担うべき仕事だと私は思うので積極的にやるべきである。なおかつ市からの発信の場というかたちでの展覧会をやる場所を作るということが大事である。

事務局
現在の予定地は大型バスが入ることが出来なかったり、また施設規模の問題などもあるが、やはり駅から近いという特徴がある。絵本を扱うとした場合、活用性はあるだろうか。

前川委員長
親子連れの来場があるだろう。若いお母さんが子供連れで来やすい。

柴田委員
私は絵本をメインにするのはどうかと思う。以前、軽井沢にある「絵本の森美術館」に子ども美術館からオルセンの絵本の原画を貸したことがある。子ども美術館はオルセンというアンデルセン賞作家の絵本と、彼の原画を20何点ほど持っている。これらを企画の中に取り入れることはできると思うが、それを核にすることは難しいだろう。子ども美術館には童話館という施設が既にあり、また優れた本はあるが子供に向けたものである。ある部分では、それは特化したものとして扱っていけるだろうとは思う。

事務局
市民に理解いただくという面で、子ども美術館の存在はやはり避けて通れない。どのように切り分けていくかというところをきちんと踏まえていかなければ、絵本だけというのは難しいだろう。

前川委員長
個人的には、子ども美術館、吉澤野球博物館、新しい美術館、その3つが1つの組織として整理されることが本来大事だと思う。

柴田委員
過去にオルセンの原画展を子ども美術館の企画展でやったことがあるが、お客さんはほとんど来なかった。優れた絵本作家ではあるが一般的にメジャーではなかった。だが日常空間の中にある美術館で展示されれば、比較的色々な人の目に入るだろうし、口コミ等で来る人も期待できる。少なくともアンデルセン公園でやるよりは見に来る人が多いだろう。そういう生かし方は非常に良いと思う。

前川委員長
今、民間系会社で絵本を扱うところが増えてきている。全国の美術館がイベント不足になっている現在、絵本を扱う動きが活発化している。

島津委員
絵本ではないが、浦和市美術館は本の美術館として、装丁や本にかかわるものという括りで様々な現代アートを集めている。「本」という括りなので特に絵本にこだわるわけではないが、割と自由自在に、絵本の方に重点を置いた展覧会を行う一方で、ほとんど前衛芸術展のような展覧会をやるときもある。振れ幅というか企画の範囲がものすごく広い。私も子供を連れて行ったことがあるが、原画の展示をする企画展もあり、また実際に絵本を手にとって見られるところもあるが、しかしそれだけがすべてではなく、他の要素も持っている施設なので、船橋よりは駅から遠いものの徒歩圏内であり、車を持たない人への利便性も考慮している。

谷口委員
船橋図書館や市民ギャラリーでも時々絵本の原画展となどをやっていたはず。見たところではそこそこ人が入っていた。家族連れなどの関心も比較的あるのかなという印象を受けた。

事務局
建設予定地のすぐ近くに中央図書館があり、また新たに西船橋に新西図書館が27年の秋にオープンする予定。図書館では現在、広く図書に親しむ場として公民館事業との連携等の新たな取り組みを考えている。また船橋では市民の方の音楽活動がかなり活発であることを受け、来年度から「まちかど音楽ステージ」という新規事業や、音楽フェスティバルの拡大も考えている。そういった中での文化芸術として、美術館運営も考える余地が十分あるのだとお話を聞いていて思った。

前川委員長
ミュージアムコンサートと称して美術館でコンサートを行うことは全国的に流行になっているので、積極的に取り入れて定期的に行っても良いだろう。その上で、やはり新しい美術館は歴史等を忘れられないためにどうするかというところに主眼を置いたほうが良いと思う。あまり美術館の観念に囚われると動きが鈍くなる。

事務局
かつてのプランはランニングコストや集客の問題を抱えていたと我々は認識しているが、リピーターの方を増やすことが出来れば収益部分もある程度見えてくるのではないかという考えがある。人が集うところに賑わいがあれば町の活力にもつながると思うので、その辺りについて具体的なお知恵をいただきたい。

前川委員長
立地上学校連携は厳しいので、子供については子ども美術館に任せるしかないということで割り切っても良い。すると「この美術館は何か」という話になってくるので、再三言っているように組織的一本化をしていく、それができればもうそれぞれが分館でありそれぞれが本館というような形で組織を作り、新しい美術館を本館にして、子ども美術館を分館にするような形でも私は非常に良いと思う。そうした上で今までの活動を阻害しない形のものをきちっと作っていければ良い。

山田委員
本館というより入り口部分、インターフェイスというようなイメージではないか。東京でものを作るとすると、駅前というのは大学等が特にそうであるが、サテライトというのがそういう場所に作られる。本体ではなくて本体に直結していて、そこから枝が分かれたサテライトの場所。サテライトの場所でありインターフェイスになる場所。そういう場所としての特質がすでにある。ただしそこには委員長がおっしゃったような組織的な対応なり、あるいは行政的な組織が違っても、もう少し大きな指針なり長中期的な方針なりで一本化できたり、協議会的なものをつくるなど、そういう行政システム上のテクニックみたいなものはもうちょっとあっても良いのではないか。ついでに言ってしまうが、清川コレクション、清川さんという人、それからそこにある椿貞雄のものをこんな時期にきて今日みたいな話をしていくと、全体としてネガティブな意見が多くなる。しかし正直に言ってもっと色々な情報がないと本当のところはわからない。ただ、個人的にはもう少し、地元船橋ではどういうふうに考えているのか、あるいは誰かが考えているのかと思ったことがある。それは椿貞雄という人は別に船橋にたどりつかなくても別によかったかもしれない。それから、清川という人も別に船橋の人でなくても別のところでこんなことをやったのかもしれない。しかし実際にはこの場所の歴史の中に偶然もあり必然もあり組み込まれた。そうすると、美術というのは個別のものとものすごく一般的なものを結びつける中間項になる場合が非常に多いと思うが、この町にとって椿貞雄や清川という人はどういう人なのかということは誰かがやはり、郷土資料館のようなところの範疇かもしれないが、回収してあげたほうが良いのではないか。たとえば、野球記念館の入り口には、吉澤氏が何者かということが触れられていて、あそこで市立船橋高校の先生をしていた等と一行書いてあるだけで、彼が船橋という場所の地域の時間の流れの中に回収されてくる部分があると思う。椿等にはそういったことはないのだろうかと思った。

前川委員長
今色々な話が出てきたが、これらを事務局のほうで整理していただき、次回はその辺りの課題と方向性についてもう一度討議をしていきたいと思う。委員長として最後に一言。先ほど課題という話をしたが、正直に言って行政サイドの今までの流れ、清川の平成18年以降今に至るまでの流れ、議会との関係、そういった部分が今現在全く見えてこない。それは事務局でしかわからないことだと思う。そこについては形の無い様々なプレッシャーがあるとは思うが、そこを踏まえたうえで今日の話の課題や方向性を少し示していただければと思う。ここをクリアしていかないと、これからいくら特化させて訂正を出してもまた壊れるのではないかという気がする。では時間となったので、本日はこれにて会議を終了とする。

 

 9 資料・特記事項

第5回船橋市美術館運営等検討委員会会議資料(下記よりダウンロードしてください。)

10 問い合わせ先

船橋市教育委員会 生涯学習部 文化課
電話:047-436-2894

ファイルダウンロード

関連するその他の記事

このページについてのご意見・お問い合わせ

教育委員会文化課 文化振興係

〒273-8501千葉県船橋市湊町2-10-25

受付時間:午前9時から午後5時まで 休業日:土曜日・日曜日・祝休日・12月29日から1月3日