財務諸表解説

更新日:平成28(2016)年2月21日(日曜日)

ページID:P000072

はじめに

公会計の世界では、地方自治法等の制約もあり、長年にわたり単式簿記による現金の収支(歳入歳出)に関する経理がおこなわれてきました。
そのため、資産・負債・資本の概念も存在せず、現金の流れのみが重視される傾向がありました。 
本市では、資産や負債といったストック情報を把握することにより市財政の状況を的確にとらえ今後の財政運営の一助とすべく、バランスシート(貸借対照表)の作成及びこれに基づく財政分析、さらに行政コストの試算をおこないました。 
本来、バランスシートは企業会計における財務諸表のひとつとして発達したものであり、ある時点(通常は会計期間の末日)における企業の財政状態(資産・負債・資本の状態)を表示する報告書です。
企業会計においては、経営成績を表示する損益計算書と並ぶ代表的な財務諸表です。これらの財務諸表は、日々の取引を複式簿記で経理することによりほぼ自動的に作成されます。
そして複式簿記による記帳であるがゆえに、貸借対照表と損益計算書の当期純利益は必ず一致するという検証可能性に優れています。
また制度的に見ても長い歴史をもち、企業会計原則、商法計算書類規則などそれぞれの目的に応じた貸借対照表の内容と様式が詳細に規定されています。 
これに比して、公会計の世界では、先に述べたとおり、日々の経理が現金主義に基づく単式簿記で処理されているため、決算においても現金収支を表す歳入歳出決算書が作成されるのみであり、直接的に貸借対照表や損益計算書を導きだせません。
現在、公会計における代表的な財務諸表の作成手法には、「公有財産台帳」や「決算統計」に基づくものがありますが、その具体的計算手法や表示方法など、詳細な点については各地方公共団体がそれぞれの創意工夫のもとに作成しており、統一的な手法がないというのが現状です。
したがって、一概にバランスシートといっても、他団体との単純比較が困難であるという問題点を有しておりました。
しかしながら、平成12年3月に自治省の「地方公共団体の総合的な財政分析に関する調査研究会報告書」により、決算統計に基づく作成手法が示されました。
この報告書で示された作成マニュアルは全国の地方公共団体に義務づけされたものではありませんが、本市では、これにより全国的に統一的な手法で作成される機運が高まってきたとの認識から、基本的にこの作成マニュアルに基づいたバランスシートの作成をおこなったものです。

自治省方式によるバランスシートについて 

作成のための基礎資料 決算統計とはなにか 

自治省マニュアルによるバランスシートの作成には、毎年度、全国の地方公共団体が作成する「決算統計」という統計調査のデータやその年度の歳入歳出決算書が必要です。
決算統計は、大正2年に内務省によって、明治36年から大正元年に至る10年間の地方団体の決算状況等が地方財政概要として公表されたことに始まります。
現在の決算統計は「地方自治法等の規定に基づく地方公共団体の報告に関する総理府令(昭和28年総理府令32号)」に基づき毎年定期的におこなわれており、最終的には地方財政白書として国から公表されています。

対象範囲 普通会計とはなにか

作成マニュアルでは、バランスシート作成の対象範囲を「普通会計」に限定しています。これは作成の基礎資料となる決算統計が、普通会計を対象とした統計調査であるからです。
普通会計とは、個々の地方公共団体ごとに各会計の範囲が異なるため、これを調整し統一的な基準で統計をおこなうために用いられる概念的な会計区分で、公営事業会計以外のすべての会計をいうものとされています。
自治省が全国統一的に定めた標準的な一般会計といってもいいかもしれません。船橋市においては、一般会計(飯山満地区土地区画整理事業の一部を除く)・船橋駅南口市街地再開発事業特別会計の一部・火災等災害共済事業特別会計の合計からこれらの会計間の重複金額を控除して普通会計が構成されています。

資産の評価基準

バランスシートは資産・負債等を金額的に評価した財務諸表であるので、当然その評価方法(取得原価で評価するか、時価で評価するか)によってその内容が異なったものとなります。
これについて作成マニュアルは取得原価主義を採用することとしています。これは基礎資料となる決算統計が実際支出金額によって普通建設事業費等の計上をおこなっていること、また今日の企業会計が、伝統的に取得原価主義に立脚してきたことによると思われます。 

バランスシートの構成…資産・負債・正味資産の意義

資産 

資産とは一会計年度を超えて、地方公共団体の経営資源として用いられると見込まれるものをいいます。資産科目は有形固定資産、投資等、流動資産に分類して表示することとされています。

有形固定資産

有形固定資産は、企業会計のような「土地」「建物」「構築物」等の区分はせず、財政運営に役立つように、「総務費」、「民生費」など各行政目的別に区分します。
算出方法は昭和44年度以降の決算統計上の普通建設事業費をもって取得原価とするものとされています。
普通建設事業費とは、道路・橋りょう・学校・庁舎等の建設事業に要する投資的経費をいいます。つまり昭和44年度以降の普通建設事業費を累計することにより、当該年度以降取得した有形固定資産の取得価額の合計を算出することになります。
ただし、土地以外の有形固定資産については、時の経過による減価を考慮し減価償却をおこなうこととされています。 なお、決算統計上の普通建設事業費には、市が直接建設したものだけでなく、他団体に補助金として支出しその団体において有形固定資産を取得した場合の補助金の額も含まれていますが、これについては市所有の資産とは考えられないことから計上対象とはしないこととされています。

投資等

投資等は「投資及び出資」「貸付金」「基金」に分類されます。ただし、基金のうち流動性の高いものは流動資産として計上することとされています。

流動資産

流動資産には流動性の高い基金である「財源調整基金」や「減債基金」、企業会計でいうところの「現金預金」に相当するものとして「歳計剰余金」、さらに「未収金」として市税の収入未済額や使用料等の収入未済額を計上します。

負債

負債とは将来支払や返済の義務を有するものをいい、ワンイヤールール(一年基準)に基づき「固定負債」「流動負債」に区分します。

固定負債
  • 地方債
    地方債のうち流動負債に相当する翌年度償還予定額以外のものを計上します。
  • 退職給与引当金
    退職手当は職員が実際に退職するまでは当然支払われないし、支払義務も発生していませんが、すでにその退職手当の支払の原因となる一定期間の労働の提供を受けているので、これに対する対価相当額を引当金として計上する必要があります。
    企業会計の実務上は、法人税等による繰入限度額等の制約がありますが、作成マニュアルでは、期末在職者の要支給額の全額を計上することとされています。
    これについては本来、ひとりひとりの積上げ計算が望ましいとされていますが、本市では、作成マニュアルでも示されている対象職員数・平均給料月額・平均勤続年数をもとにした簡便的な計算による金額を計上しています。
  • 債務負担行為
    債務負担行為とは地方自治法に規定された将来の支出を伴う行為であり、これは予算において、その行為をすることができる事項、期間、限度額を定めるものであり、さらに限度額表示が困難なものに至っては、文言で表現することもできるとされており、必ずしも企業会計でいうところの負債には合致しません。
    作成マニュアルでは、債務負担行為のうちPFIなどの手法によって取得した資産ですでに引渡しを受けたものなどを計上することとしています。
    それ以外の債務負担行為や損失補償などの偶発債務については、債務が確定したもの以外はバランスシートには計上されません。しかしながらこれらの情報についても有用な情報であるとして「注記事項」として表示するものとしています。
流動負債
  • 地方債の翌年度償還予定額 ワンイヤールールにより,地方債のうち翌年度内に償還する予定のものについては、流動負債として計上します。

正味資産

正味資産は資産と負債との差額概念であり、それ自体に資産の実体は在りません。正味資産は国庫補助金・県補助金・一般財源等に分類され、その団体が有する資産のうち、負債以外で取得されたものについて、その財源の内訳を表示したものです。
なお、ここに計上された国庫補助金・県補助金は、有形固定資産の取得に充てられたものであり、これらの補助金が充当された有形固定資産の耐用年数に応じて償却をすることとされています。

平成11年度バランスシートの概要

平成11年度バランスシートからは次のようなことがわかります。(説明中の金額は100万円未満を四捨五入してあります。)

資産について

平成11年度末における資産総額は、5,206億3,600万円です。

  1. 昭和44年度以後取得した有形固定資産の総額は、平成11年度末で、6,495億8,900万円(減価償却累計額控除後4,769億4,100万円)であり、そのうち土地の取得に要した金額は1,999億8,200万円です。
  2. 投資及び出資金は、東葉高速鉄道株式会社の株式をはじめとする有価証券・出資による権利で、121億300万円です。
  3. 貸付金は障害者等住宅整備資金貸付など7億4,900万円です。
  4. 基金は、比較的流動性が高いと思われるため流動資産に計上した財源調整基金30億400万円、減債基金2億2,000万円のほか、投資等に計上した比較的固定性の高い土地開発基金65億円、特定目的基金77億7,600万円、定額運用基金7,800万円です。
  5. 企業会計における現金勘定に相当する歳計現金は18億6,400万円です。
  6. 地方税をはじめとする未収金は114億200万円です。

負債について

一方、前述の資産を調達するための財源の一部となった負債の総額は、1,357億8,600万円です。

  1. 地方債のうち翌年度償還予定額を除く固定負債部分は1,002億4,000万円であり、一年以内に償還予定の流動負債該当部分は85億8,300万円です。
  2. 年度末において全職員が退職したものとみなした場合の退職手当の要支給額を見積もった退職給与引当金は、269億6,300万円です。

正味資産について

負債以外の財源である国・県支出金は501億7,400万円であり、一般財源等により調達された資産は3,346億7,600万円です。資産の調達財源となった負債・正味資産合計は、5,206億3,600万円であり、先に述べた資産総額に一致します。

財務分析 

従来から地方公共団体では、決算統計などに基づくフロー情報から経常収支比率や公債費比率などを算出し、これを財政指標としてきましたが、バランスシートの作成により、ある時点におけるストックの状況が把握できることとなり、新たな財務分析の可能性が拡がりました。
バランスシートによる財務分析は当然のことながら企業会計においておこなわれてきたものであり、その代表的なものには、流動比率、固定比率、自己資本比率、資本回転率などがあります。
しかし同じ「バランスシート」といっても、自治体バランスシートにこれらの分析手法をそのまま用いることは妥当でないと考えます。
それは企業会計のバランスシートと自治体バランスシートではその意義あるいは目的に相違があるからです。
一般に企業会計が利益追求を目的とし、バランスシート作成の主眼を「適正な期間損益計算」に置いているのに対し、自治体バランスシートは作成マニュアルにもあるとおり、経営資源の状況とその経営資源を調達するための財源の状況を明らかにすることに主眼を置いています。
企業の収益性や安全性を測るための財務分析の手法をそのまま用いれば、本質を見誤るおそれもあると考えます。
例えば、企業の短期的支払能力を表すといわれる流動比率(流動資産/流動負債)に作成マニュアルに基づくバランスシートの数値をあてはめた場合には、分子である流動資産には地方税未収額が含まれることとなり、滞納額が多ければ多いほど流動比率が高い(短期的支払能力が高い)という結果になってしまいます。
このように企業会計の分析手法の単純な流用は誤った解釈につながる場合もあると考えています。
また、自治体バランスシートの財務分析の手法が確立され社会的に認知されるためには、まず作成手法の統一と作成団体の増加による十分なデータ蓄積が必要不可欠であると思われます。
この条件が満たされることによりはじめて、分析結果の数値がもつ意味が確立されることになると思われます。
作成マニュアルでは次の6項目の財務分析を提唱していますが、これらの分析の具体的計算式や分析数値の適否や評価については示されておりません。
従って本市においても、その分析数値をもって直ちに総合的な適否の評価をするには至っておりません。
当面はこれらの分析数値を類似団体のそれと比較したり、或いは経年比較して資産形成の推移を把握したりするための手段として用いることが妥当であると考えています。

社会資本形成の世代間負担比率

これは有形固定資産の正味資産による整備の割合や負債による整備の割合を見ることにより、これまでの世代の負担により形成された資産と、これからの世代により、借金返済というかたちで形成されることとなる資産の割合をみることができます。
作成マニュアルには具体的な計算式が示されていませんが、本市では次の算式により将来世代の負担割合を計算しています。将来世代への負担は少ないことが好ましいといえます。(地方債残高―減税補てん債等残高)/ 有形固定資産合計

社会資本形成の世代間負担比率

  • 平成10年度 16.7%
  • 平成11年度 16.6%

予算額対資産比率

歳入総額に対する資産の比率を計算することによって、資産形成に何年分の予算がつぎ込まれたかがわかります。本市では次の算式により計算しています。平成11年度末において普通会計歳入総額の約3.5年分に相当する資産残高があることになります。
資産総額 / 普通会計歳入総額

予算額対資産比率
  • 平成10年度 363%
  • 平成11年度 354%

有形固定資産の行政目的別割合

行政目的別割合をみることにより各分野ごとの資産形成の比重が明らかになるので、これを団体間比較することにより、各団体ごとの資産形成の特徴が把握できます。またこれにより今後の社会資本整備の方向性が検討できるとされています。本市においては従来から土木・教育関係を中心に資産形成が進んできたことがわかります。各行政目的別有形固定資産価額 / 有形固定資産合計 

行政目的別割合
平成10年度 平成11年度
(1)総務費 3% 3%
(2)民生費 4% 4%
(3)衛生費 8% 7%
(4)労働費 1% 1%
(5)農業水産業費 0% 0%
(6)商工費 1% 1%
(7)土木費 45% 46%
(8)消防費 1% 1%
(9)教育費 37% 37%
(10)その他 0% 0%
有形固定資産合計 100% 100%

有形固定資産の行政目的別経年比較

行政目的別資産残高を経年比較(例えば10年度ごと)することによってその間の社会資本形成の推移をみることができるとされています。現状では2年度分のデータ蓄積しかないので、経年比較による社会資本形成の傾向把握には若干の無理があると思われますが、「有形固定資産の行政目的別割合」と同様に土木・教育関係に伸びがみられます。

行政目的別経年比較
平成10年度 平成11年度
(1)総務費 13,205,321 12,801,283
(2)民生費 18,733,284 18,598,698
(3)衛生費 35,868,783 35,225,782
(4)労働費 2,607,769 2,470,687
(5)農業水産業費 2,192,269 2,153,582
(6)商工費 3,483,763 3,348,948
(7)土木費 210,604,885 221,240,140
(8)消防費 6,443,748 6,115,690
(9)教育費 173,256,547 174,948,101
(10)その他 40,206 38,292
有形固定資産合計 466,436,575 476,941,203

住民一人当たりバランスシート

資産・負債・正味資産を人口で除することにより、住民一人当たりバランスシートが作成できます。これにより人口規模の違う団体との単純比較が可能になります。
また、これを公表することにより、市財政を市民ひとりひとりのより身近な情報として理解していただくことができると思われます。平成11年度末における住民一人当たりの資産総額は約955,000円、負債総額は約249,000円となっています。

(単位:円)

住民一人当たりバランスシート
平成10年度  平成11年度
人口 541,763 544,910
[資産の部]    
1.有形固定資産    
 (1)総務費 24,375 23,492
 (2)民生費 34,578 34,132
 (3)衛生費 66,208 64,645
 (4)労働費 4,813 4,534
 (5)農業水産業費 4,047 3,952
 (6)商工費 6,430 6,146
 (7)土木費 388,740 406,012
 (8)消防費 11,894 11,223
 (9)教育費 319,801 321,059
 (10)その他 74 70
有形固定資産合計 860,961 875,266
2.投資等    
 (1)投資及び出資金 21,520 22,212
 (2)貸付金 1,336 1,374
 (3)基金    
  ・特定目的基金 10,165 14,270
  ・土地開発基金 11,998 11,929
  ・定額運用基金 134 142
  基金計 22,296 26,340
投資合計 45,152 49,926
3.流動資産    
 (1)現金・預金    
  ・財政調整基金 4,718 5,513
  ・減債基金 406 404
  ・歳計現金 6,280 3,420
  現金・預金計 11,404 9,337
 (2)未収金    
  ・地方税 18,592 18,152
  ・その他 2,810 2,772
  未収金計 21,402 20,924
 流動資産合計 32,806 30,261
     資産合計 938,919 955,453
住民一人当たりバランスシート
[負債の部]    
1.固定負債    
 (1)地方債 182,762 183,957
 (2)退職給与引当金 47,996 49,482
固定負債合計 230,758 233,439
2.流動負債    
 (1)地方債翌年度償還予定額 14,610 15,751
流動負債合計 14,610 15,751
負債合計 245,368 249,190
[正味資産の部]    
1.国庫支出金 74,555 77,463
2.都道府県支出金 14,518 14,614
3.一般財源等 604,478 614,187
正味資産合計 693,551 706,264
負債正味資産合計 938,919 955,453
表中の数値については、端数処理の関係上合計金額と一致しないことがあります。

行政運営コストの算定

行政運営コストについては、作成マニュアルでは具体的な計算方法が示されていませんが、「減価償却の考え方を発展させることにより当該年度の現金の出納にとどまらず行政運営コストを説明する計算書が作成できる」と述べられています。
ここでいう計算書は、具体的には企業会計でいうところの損益計算書に相当するような計算書が想定されます。すなわち現金主義に基づく歳入歳出決算書とは別に、減価償却費や退職給与引当金繰入額などを計上することによって発生主義的な考え方に基づくコスト計算をすることを示唆したものと思われます。
本市では、平成11年度及び平成10年度バランスシートをもとに平成11年度の行政コスト計算書を試作しました。

行政コスト計算書

いわゆる行政コスト計算書については、各地方公共団体がそれぞれの基準で作成しているのが現状ですが、これについても統一的な手法の確立が待たれるところです。
本市では、普通会計歳入歳出決算をベースに、これを発生主義的に捉えなおすことにより、コスト試算をおこないました。(説明中の金額は100万円未満を四捨五入してあります。)

行政コスト計算書(自平成11年4月1日 至平成12年3月31日)
行政コストの部 (単位:千円)
人件費 38,201,559
物件費 18,899,559
維持補修費 902,261
扶助費 15,965,638
補助費等 10,414,671
普通建設事業費 2,714,500
公債費 4,114,970
繰出金 11,870,455
減価償却費 13,109,244
退職給与引当金繰入額 3,722,206
看護婦修学貸付返還免除額 8,553
不納欠損額 1,060,665
費用合計 120,984,281
財源の部
一般財源等 99,423,056
国庫支出金 12,114,726
県支出金 4,109,388
使用料手数料 4,390,660
分担金負担金         2,636,448
財産収入 694,360
繰入金 1,811,020
諸収入 1,296,121
財源合計 126,475,779
当期純剰余金 5,491,498
国庫支出金取崩額 1,314,668
県支出金取崩額 386,450
当期一般財源等増加額 7,192,616
前期繰越一般財源等 327,483,866
当期末一般財源等 334,676,482

平成13年2月1日作成 船橋市の財務諸表

試算では、行政コストは1,209億8,400万円であり、主な内訳は、人件費(退職給与引当金繰入額を含む)419億2,400万円、物件費189億円、生活保護などの扶助費159億6,600万円、各種補助金などの補助費等104億1,500万円、国民健康保険事業特別会計等に対する繰出金118億7,000万円、有形固定資産の減価償却費131億900万円などです。
一方、これらのコストに充てられた財源は、市税などの一般財源等、国・県支出金、使用料手数料など1,264億7,600万円です。差引54億9,100万円の当期純剰余金(経営資源の増加)が発生したと考えられます。
また過去に取得した有形固定資産の財源となった国・県補助金の取崩額(償却額)を加算した場合には、当期において71億9,300万円の剰余金が発生したことになります。また本市試作の行政コスト計算書とバランスシート(以下の算式中B.S)のあいだには、

  • 11年度行政コスト計算書「当期一般財源等増加額」=11年度B.S「一般財源等」-10年度B.S「一般財源等」
  • 11年度行政コスト計算書「前期繰越一般財源等」=10年度B.S「一般財源等」
  • 11年度行政コスト計算書「当期末一般財源等」=11年度B.S「一般財源等」

の関係が成り立ちます。
なお先ほどから述べている「剰余金」は、現金主義で把握されたものではないため、その金額に相当する金銭の残高があるわけではありません。
本市の普通会計決算における歳入歳出差引は18億6,300万円ですが、これに対しコスト計算書上の当期純剰余金が54億9,100万円となるのは、現金主義と発生主義の違いによるものです。
歳入歳出決算では現金の収支をもって経理するのに対し、発生主義では財源とコストの認識・測定が権利義務の発生などに基づきおこなわれるからです。
その主な例を挙げると次のとおりです。

  1. 普通建設事業費のうちその大半が、コストとして認識されず、有形固定資産としてバランスシート側に計上されていること。
  2. 公債費のうち元金償還部分は、負債の減少に過ぎないのでコストとして認識されないこと。
  3. 退職給与引当金繰入額や減価償却費など発生主義会計特有のコストが発生すること。

以上のように発生主義に基づく剰余金は、現金主義に基づいた歳入歳出差引額(つまり現金残高)とは全くその概念を異にしており、行政コスト計算書上の剰余金が現金残高を担保したものでないことは十分認識しておく必要があります。
また、先にも述べたとおり、行政コスト計算書の作成手法は未だ確立されたものではありません。単に計算書の形式や勘定科目が同じであるからといっても、内容的に画一化されたものであるという担保がない以上、他の類似団体等との比較等に利用する場合にも、現段階では十分に内容を吟味したうえで慎重に行う必要があると思われます

おわりに

以上のように、企業会計的な手法に基づいて市財政のあらましをみてきましたが、先にも述べたとおり、自治省マニュアルを含めこれらの企業会計的手法は未だ確立されたものではなく、行政コスト計算書はもとよりバランスシートについても、今後、研究・改善が行われていくであろうと思われます。いずれにしろ、バランスシートや行政コスト計算書を作成することは、作成そのものに意味があるのではなく、これをもとに的確な財務分析をおこない、これからの財政運営に活用していくことに最も重要な意義があると考えます。
また、現行制度においては、現金主義が採用されていることから、歳入歳出決算書やこれをもとにした財政力指数、経常収支比率、公債費負担比率などの従前からの財政指標は決して無視し得ないものであります。
これらの伝統的な財政指標と企業会計的手法を併せ用いることにより的確な財務分析をおこない、これを今後の予算編成をはじめとする財政運営に生かしていくことが大切であると考えています。
今後においても引き続き各年度末におけるバランスシートを作成し、時系列的な比較検討や今後発表されるであろう類似団体のバランスシートとの比較を通じ、船橋市財政の改善の一助として活用していきたいと考えております。

このページについてのご意見・お問い合わせ

財政課 調査係

〒273-8501千葉県船橋市湊町2-10-25

受付時間:午前9時から午後5時まで 休業日:土曜日・日曜日・祝休日・12月29日から1月3日