デフサッカー女子日本代表 岩渕 亜依選手

更新日:令和7(2025)年11月1日(土曜日)

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岩渕選手画像

ケイアイスター不動産株式会社のケイアイチャレンジドアスリートチームに所属し、社会人フットサル競技チーム「タパジーダ世田谷」で活躍する岩渕 亜依選手は、船橋市立三咲小学校・御滝中学校・船橋高等学校(以下:市船)出身のデフアスリートです。

2019年デフフットサル女子W杯ではキャプテンとしてチームをけん引し、2023年女子デフフットサルアジア大会ではMVPを受賞するなど、世界で活躍しています。

11月15日(土曜日)から26日(水曜日)まで開催される「東京2025デフリンピック(※)」のデフサッカー女子日本代表にも選出されました。

金メダルを目指し、闘志を燃やす岩渕選手に、サッカーとの出会いから日本代表としての意気込みまで、お話をたっぷりと伺ってきました!

(※)・・・デフ(Deaf)とは英語で「耳が聞こえない」という意味で、デフリンピックは聴覚障がいがある人にとって最高峰の国際スポーツ大会です。日本では初めての開催であり、また1924年にパリで第1回デフリンピックが開催されてから、100周年となる歴史ある大会です

サッカーとの出会いと別れ、そして再会

偶然の出会い

 サッカーを始めたのは小学4年生の頃。きっかけは、小学校の部活がサッカー部と陸上部、吹奏楽部の3つしかなく、陸上や吹奏楽をしている自分をイメージできず、消去法で「サッカーでいいや」という軽い気持ちで始めました。

 中学では、父が野球をやっていたこともあり、元々興味のあったソフトボール部に入部。そこから高校時代まではソフトボールに没頭しました。

再会

 サッカーを再び始めることになったのは、筑波技術大学時代。1年生のときに、デフサッカーをやっていた4年生の先輩に「デフサッカーをやらないか」と声をかけられましたが、当時はダンスサークルに夢中だったのもあり、断りました。しかし、その後も「今度、女子の東日本選抜の練習に一緒に行こう。車は出すし、練習着も貸すから!」と3カ月以上、根気強く誘われたので「さすがに行かなければ」と思い、参加を決意しました。

 デフの世界はとても狭く、横のつながりが深いです。今思うと、先輩が監督と知り合いだったので、東日本選抜の人数が集まらず、勧誘に必死だったのかなと思います。練習後「おめでとうございます。合格です」と言われ、そのまま東日本選抜になってしまったという流れで、当時は「ダンスがやりたいのに、東日本代表に選ばれてしまった」という複雑な気持ちでした。

 この出会いをきっかけに、7年ぶりにサッカーを再開し、東日本代表として東西戦に出場。プレーを見た日本代表の監督から声をかけられ、翌年デフリンピックにも初めて出場しました。

 デフリンピックが終わると、今度はデフフットサル日本代表の川畑 菜奈選手に「フットサルの選手権大会に一緒に行こう」と声をかけられ、フットサルを始めました。その後は、フットサルとサッカーをいったりきたりしながら、掛け持ちしています。

市船での経験

スカウトされ、市船に入学

 高校でもソフトボールを続けたいと思っていたところ、市船の部活体験会で、顧問の先生に声をかけられたのがきっかけで、市船へ進学しました。スポーツ推薦の学生が多く集まる体育科で、ソフトボールに3年間打ち込みました。

市船は"努力できる人たち"の集まり

 市船はスポーツの強豪校だったので、生徒たちの意識レベルが高く、尊敬できる部分がたくさんありました。努力を惜しまない人たちの姿勢や空気感を、常に感じられる環境にいたことは、自分にとって大きな財産となりました。今も、日本代表として、試合に勝つための努力が苦でないのは、その経験からだと思っています。

デフサッカーの魅力、そして難しさ

岩渕選手インタビュー

デフサッカーとサッカーの違い

 声の指示ができるかできないかは、かなり大きいです。ベンチの監督やコーチなどによる客観的な視点と、コート内でプレーする選手たちの視点は大きく異なり、通常のサッカーでは声が飛び交います。デフサッカーでは、そのベンチからの声がないのにも関わらず、選手たちが連携をとり、ボール運びをしているところは、ぜひ注目してほしいです。

コミュニケーションの本質は同じ

 選手とのコミュニケーションにおいては、自分が発した言葉を、相手がどこまで理解できているのかどうか、顔の表情を見ながら確認するよう心がけています。

 サッカーやフットサルの話をするときに、相手が言葉の意味を知っている前提で話してしまうと、伝わり方が中途半端になって、話が嚙み合わないときがあります。サッカーで使用する共通用語などは特に「言葉の意味を理解する」という部分に立ち返って、コミュニケーションをとるようにしています。そういう部分では、聞こえる聞こえないは関係なく、コミュニケーションの本質は同じだと思っています。

強くなるために大切なもの

プレー写真

スポーツが教えてくれたこと

 これまでのスポーツ経験から、周りの立場や視点を考えるようになりました。

 チームで同じ目標を目指すときに、相手に「どうしてできないのか」「もっと頑張れ」と、自分の価値観を押し付けてしまうことがありました。そういうチームは強くなれないし、全員が足並みをそろえて、目標を目指すことが大切だと肌で感じてきました。そのために、常に相手のことを考えて、行動や発言をするようになりました。

 チームでの話し合いは、衝突することもありましたが、お互いに気持ちを共有することで、さまざまな人の考えや視点に気づけ、今の自分がいます。

デフリンピックに向けて

プレー写真

 日本の強みは、とにかく走る!走って繋げるサッカーです。
強豪のヨーロッパ勢を相手に、力を出し切れば、金メダルがとれると思っています。

 デフサッカーは福島県で開催です。現地以外から応援に来る人たちは、時間と労力をかけて来てくれるので、その思いを無駄にせず「現地まで応援にきてよかった」と思ってもらえるようなプレーをしたいです!

~番外編~

地元・船橋での思い出

 家の近くの公園が思い出の場所で、小さいころよく木登りをしていました。自分の身体を持ち上げるし、全身の筋肉が養われるので「木登り最強!」と、大人になってから実感しています。 
 
 地元には、年末年始や両親の結婚記念日に必ず帰るようにしていて、家族で食事をします。お気に入りの焼肉屋さんがあって、とても美味しいので、必ず行っています!

多趣味な一面も

 趣味はたくさんあります!ダンスはもちろん音楽も大好きで、ドライブもよくします。

髪色にも注目!

 髪色を大会ごとに変えて、気持ちを高めています。今回は気合をいれて"金色"に✨
今後の髪色にもぜひ、注目してみてください!

岩渕選手を応援しよう!

デフリンピックのサッカー競技は、福島県のJヴィレッジで行われます。また、YouTubeでの配信も決定しています。

足を運べる人もそうでない人も、みんなで岩渕選手を応援しましょう!

岩渕選手プロフィール

宣材写真
1993年 千葉県船橋市に生まれる
2012年 市立船橋高校を卒業後、筑波技術大学入学
2019年 ケイアイスター不動産株式会社入社
    国内選手権大会にて最優秀選手賞、MVP 等を受賞
    デフフットサルW 杯にてキャプテンとして最高位5位に大きく貢献
 
  • 主な戦歴
2013年 第22回夏季デフリンピック競技大会(サッカー) 6 位
2015年 第3回世界ろう者フットサル選手権大会 6 位
2018年 第4回アジア太平洋ろう者サッカー選手権大会 優勝
2019年 第1回アジア太平洋女子ろう者フットサル選手権大会 優勝
2019年 第4回世界ろう者フットサル選手権大会 5位
2022年 第24回夏季デフリンピック競技大会(サッカー) 4位
2023年 第2回女子デフフットサルアジア大会 優勝

2023年 第5回女子デフフットサル世界大会 初優勝
2024年 第20回冬季デフリンピック競技大会(サッカー) 5位
2025年 第6回女子デフフットサル世界大会 7位

 
  • 岩渕選手個人SNSアカウント

@Deaffootball_20
Instagram @buchi_i20