教員とデフバレーボール男子日本代表監督の二足のわらじで活躍する 村井 貴行 監督
聴覚障害のあるアスリートによる国際大会「東京2025デフリンピック」が11月15日から、日本で初めて開催されます。
船橋市立高根台第三小学校の教諭として教壇に立つ傍ら、デフバレーボール男子日本代表監督を務める村井 貴行さんに学生時代の思い出やデフバレーボールにかける想いなどを伺いました!
バレーボール選手として全国大会を経験
――幼少期はどんな少年でしたか
千葉県松戸市生まれのいたって普通の少年でした。しいて言うなれば、運動が好きで木登りなどをして遊んでいる少し活発な少年でした。
――バレーボールを始めたきっかけ
バレーボールとの出会いは中学校の部活動でした。小学生時代は野球をやっており、中学校で初めてバレーボールに触れました。バレーボール部の入部のきっかけは、「バレーボールを絶対にやりたい!」というわけではなく、部員数を見て試合に出れそうという単純なきっかけで始めました(笑)
その後、中学・高校で千葉県選抜選手として、全国大会も経験しました。
強く印象に残る大学時代の顧問の姿

――バレーボールをやっていて印象に残った人はいますか
東京学芸大学に入学し、大学でもバレーボール部に入部し、活動していました。
大学時代の顧問の姿が強く印象に残っており、現在のデフバレーボール男子代表監督として選手を指導するうえで意識していることにもつながっています。
――何か印象的なエピソードはありますか
大学の教授なので忙しいはずなのに、ずっと練習に来てくれるんです!ミスをすると強い口調で叱責されましたが、自分の姿を見てくれるからもっと頑張ろう!という気持ちになりました。
口だけいいことを言って練習中や試合中の姿を見てくれない監督よりは、強い言い方をされるけれど自分のことを考えて叱責してくれる監督のほうが私にとっては魅力的な監督像に見えました。
その監督の指導を受けたこともあり、デフバレーボール男子監督として選手の指導を行う上で、表情やジェスチャーを駆使し、常に選手へ意識を向け、選手ひとりひとりの目をしっかり見て、注目していることを伝えるようにしています。
大学の先輩からの誘いでデフバレーボールの世界に
――どのようなきっかけでデフバレーボールと出会ったのですか
初めてデフバレーボールに出会ったのは、平成24年(2012)年1月です。東日本大震災被災者支援の一環で実施した小学校向けバレー教室に手伝いで参加した際に、大学時代の先輩である狩野 美雪さんと偶然再会し、狩野さんの誘いでデフバレーボールに初めて触れました。
当時、狩野さんはデフバレー女子日本代表の監督に就任したばかりで、最初は手伝いという名目で練習に参加させていただくことになりました。
その後、デフバレーボール女子代表のコーチに就任し、選手のスキル向上に努めました。
――デフバレーボールのコーチを務めた際に感じたことはありますか
最初はデフバレーボール選手のことも、手話もわからなかったのでうまく意思疎通できるか心配でした。選手に説明しても自分の言ってることが うまく伝わっているかわからず、「大丈夫か??」と不安になったこともありました。
たとえば「いいね!」という言葉一つでも、プラスの意味なのかマイナスの意味なのか聴覚障害者には伝わりにくく、悪戦苦闘したことを覚えています。
また、就任直後は、選手からパス練習を依頼され、自分の実力を試されることもありました。
選手との信頼関係の重要さ

――選手に求めることはありますか
「常に選手は輝いてほしい!」「自身の殻を破ってほしい!」と思っています。
自分にフォーカスされることも多いけれど、それよりもコート上で活躍する選手に注目し、選手の輝くプレーを見てほしいです。
耳も聞こえず、話すこともできない選手も気合が入ると、自然と声が出ます。選手たちの闘志を燃やす姿やパッションを感じ取ってほしいです!
――監督を務めるうえで意識していることはありますか
選手との信頼関係を築き、発言しやすい環境を構築することを意識しています。
デフバレーボールの選手は、監督やコーチ、他人の伝えたいことが理解できていなくても、わかったふりをする選手が多いです。それは自分の耳が聴こえないことで会話の流れを止めたくないという気持ちからです。
選手が発言したり、再度確認しやすい環境を構築するため、私自身も間違をすぐに認めるようにしており、選手が私の伝えたいことを理解しているかもきちんと確認するよう意識しています。
また、感情を理解するため、選手の表情、しぐさだけでなく、会話のあとの後ろ姿にも注目しています。
現在では私が言わずとも選手同士で私やコーチの発言内容を確認しあうようになりました。
チーム一丸となり、表彰台の頂点へ

――デフリンピックでの目標
もちろん優勝を目指して、練習に励んでいます!
選手は全国に散らばっているため、集まって練習できる機会は多くはないので、練習の際は集中して取り組んでいます!
――デフバレーボールで注目してもらいたい点
デフバレーボールは通常のバレーボールとルールは一緒です。
デフバレーボールチームには耳が全く聞こえない人、少しきこえる人、手話ができる人、できない人さまざまな人がいるけれど、アイコンタクトなどを駆使し、ラリーは続くし、人同士がぶつかることもありません。
そんな選手同士が勝利に向かい、躍動する姿を見てほしいです。
――最後に、見ている方へ一言お願いします
まずは試合を見に来てほしいです。見に来ていただいた人たちに「選手の姿がかっこいい!」「自分もやってみたい!」と思わせるのが私の使命です。
どんなハンデがあってもスポーツに垣根はありません。ハンデに臆せず何でも挑戦できる社会にしていきたいです!