船橋市ゆかりの写真家を紹介! 北井一夫さん

更新日:令和6(2024)年9月11日(水曜日)

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市民ギャラリーにて北井一夫さん

日本を代表する写真家・北井一夫さんは、日本写真協会新人賞をはじめ、写真界の芥川賞といわれる“第1回木村伊兵衛写真賞"など数々の賞を受賞しています。昭和44年(1971年)から長い間船橋に住み、市写真展の審査員を当初から務めるなど、船橋の写真文化の発展に寄与しています。

船橋との出会い、フナバシストーリー

表敬訪問に訪れた北井さん
▲船橋での思い出を語る北井さん

成田空港建設に反対する農民を取材した『三里塚』 の撮影で、当時住んでいた東京から三里塚に向かう途中、よく船橋に立ち寄っていたという北井さん。当時、子育てをするのに広い家を探していたことから、昭和44年(1971年)の春、船橋に引越しました。

昭和58年(1983年)、船橋のまちが大きく変化していった当時の「新しい町」の様子を、プロの写真家の眼で記録してほしいと船橋市から撮影を依頼。1970年代、北井さんは古くから続く村の人々やその風景を写した代表作「村へ」など、雑誌のための撮影をしていました。船橋の撮影では、それまで撮影した写真とは違いプリントした写真を船橋市役所で展示するものだったため、北井さんにとっては新たな挑戦だったといいます。それから約5年間にわたり、日本の高度経済成長の時代を象徴した団地の生活や、船橋駅で新聞を読みながら電車を待つサラリーマン、繁華街に集まるリーゼントの若者たちなど、その時代を生きた船橋市民の日常を撮影しました。昭和64年(1989年)には、それらが写真集「フナバシストーリー」(六興出版)としてまとめられました。現在は、市内の図書館で借りることができます。

【フナバシストーリー作品(一部)】

団地の台所で佇む女性
団地の台所で佇む女性
電車を待つサラリーマン
電車を待つサラリーマン
リーゼント姿の若者
リーゼント姿の若者

令和5年(2023年)12月に船橋市民ギャラリーで開催された令和5年度船橋市所蔵作品展「フナバシ ストーリー 北井一夫」では、80年代に撮影した「フナバシストーリー」を一挙公開し、その他のシリーズ作品「村へ」や「ライカで散歩」を加えて、約200点の北井さんの作品を展示しました。この展覧会が評価され、今年北海道東川町が開催した第 40 回「写真の町」東川賞で、飛彈野数右衛門賞を受賞しました。

フナバシストーリー北井一夫展

船橋市収蔵作家紹介動画「北井一夫」

船橋市バーチャル美術館では、市所蔵作品「フナバシストーリー」について語るインタビュー動画を公開。撮影時のエピソードとともに見る「フナバシストーリー」は1980年代の船橋の記憶を鮮やかに蘇らせます。

動画はこちら

市にヴィンテージプリント約400点を寄贈

表敬訪問の様子
写真左から市長、北井さん

今年の8月、北井さんが、貴重なヴィンテージプリント(※)約400点とこれまで撮りためてきたフィルム約4500本、ベタ焼き(ネガを直接焼き付けたプリント)、使用していたカメラなどを寄贈。

今回の寄贈について北井さんは「当時撮らせてくれた人々のためにも、写真を残したいという気持ちがあった。寄贈するならフナバシストーリーからの付き合いがある船橋だと決めていた 」と話します。

市長は、「市で大切に管理し、活用していくだけでなく、日本さらには世界の写真文化の発展に役立てていきたい」と熱く語りました。

寄贈作品「村へ」
寄贈作品「村へ」
寄贈作品「抵抗」
寄贈作品「抵抗」
 

寄贈されたヴィンテージプリントは、横須賀基地の原子力艦の寄港阻止のデモを撮影したデビュー作『抵抗』(1965年)、前述した『三里塚』(1971年)、高度経済成長時代に取り残された農村の人々を写した 代表作『村へ』(1974~1975年/木村伊兵衛写真賞授賞対象作品)など、北井さんが生涯をかけて撮りためた作品です。

北井さん

北井さんは、写真の魅力を「芸術作品として扱われることもあるが、そうではない扱いをされることもある。どっちつかずでいったりきたりするのが写真。それが写真の面白さ」だと話します。

現在は、国内にとどまらず、海外の出版社からもオファーが来ている北井さん。今後について「今回の寄贈により、一区切りついた。新たな気持ちで良い作品を作りたい」と意欲をのぞかせます。

(※)写真家が自身の作品としてネガフィルムから自ら手がけたものであり、価値の高い唯一無二の芸術作品

北井一夫さんのプロフィール

昭和19年(1944年)旧満州鞍山生まれ、日本大学芸術学部写真学科中退。写真集『抵抗』『三里塚』『村へ』『いつか見た風景』『フナバシストーリー』『1990年代北京』など独特な視座と柔軟な感性による写真作品がある。昭和47年(1972年)に日本写真協会新人賞、昭和51年(1976年)第1回木村伊兵衛写真賞、平成26年(2013年)日本写真協会作家賞を受賞。各種印刷媒体に多数の作品を発表。時代を捉えた写真集の刊行、展覧会の開催が続き 、最近では、平成26年(2013 年)12 月、令和 5 年度船橋市所蔵作品展「フナバシストーリー 北井一夫」、令和6年(2024 年)5月~7月7日には、新潟県の南魚沼市池田記念美術館にて、大規模な展覧会「北井一夫 写真の旅人」を開催。