水のような清らかな心で対局し夢の棋士に昇段!高橋佑二郎四段
高橋佑二郎四段(25歳)は、令和6年(2024年)4月に船橋市から39年ぶりに誕生した、史上2人目の市ゆかりの棋士です。船橋市出身で、船橋市立三咲小・御滝中を卒業。小学6年生の時にわずか3人の部員しかいない将棋部で主将として全国3位に輝きました。小学校の卒業文集には、「15年後に将棋のプロ棋士となり、タイトルを2つくらい持っている」と夢を書いていました。
そして、奨励会(※)入会から13年目で四段に昇段し、棋士への狭き門を見事突破!
今回は、棋士として新たなスタートラインに立った高橋四段のインタビューをたっぷりとお届けします!
※奨励会・・・棋士養成機関の名称。奨励会は、6級~三段までで構成されていて、規定の成績を上げると昇級・昇段。四段に昇段し棋士になるためには、半年に1回行われる三段リーグで上位2人に入ることが条件のため、年4人しか棋士になれない。満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段に昇段できなければ原則として自動退会となる厳しい世界。
人生そのものとなった将棋との出会い
――将棋を始めるきっかけは
父と兄が将棋を指しているところを見ていたので、気づいたら自分も指していました。
奨励会のことも父から聞いて、小学6年生の夏に自然な流れで入会しました。
――棋士になりたいと思ったのはいつ頃ですか
大会で良い成績をとっていると棋士の話を父や周りから聞いていたので、その流れで棋士になりたいと思っていました。ただ、奨励会に入会して最初の2年間は趣味の延長という感じでしたが、全国から棋士になるために奨励会に入会し、本気で将棋を指している周りの仲間を見て、「このままじゃだめだ」と感じ自分自身も本気で将棋と向き合うようになりました。
棋士になるまでの長く苦しい奨励会生活を支えたものとは
▲都内のイベントで対局する高橋四段
――棋士をあきらめずに頑張ろうと思えた理由は
棋士になるまでは長くつらい時間が続いていたなと感じます。ただ高校を卒業後、大学に進学せず退路を断ち、「将棋と向き合っていくしかない、やるしかない」と考えていました。
――苦しい時期をどのように乗り越えていきましたか
奨励会を退会しなければならない26歳というタイムリミットが近づき、あと2年しか猶予がありませんでした。この1年は、後悔しないようにすべてを将棋に捧げる思いで、ほとんど毎日、東京の研修室で先輩棋士と将棋を指していました。先輩方との研修室での日々が苦しさを乗り越える原動力になりました。
――先輩棋士からの印象に残っている言葉はありますか
師匠である加瀬純一(かせじゅんいち)七段は口数が少ないですが、「頑張れ」という言葉をかけてもらっていたことは、印象に残っています。長くつらい時期も、温かく見守ってくれていました。四段に昇段が決まった時も「良かったよ」と言葉をかけてくれました。
狭き門を突破し夢の棋士へ
――昇段が決まった時の率直な感想を教えてください
昇段が決まった時は、感情がついていけないほど嬉しかったです。正直、嬉しいというよりもほっとした気持ちが強かったですね。棋士への年齢制限が近づき、昇段した前日も1~2時間しか寝れなかったので、重圧から解放されました。
――これからの目標を教えてください
棋士になれないと思っていたので、棋士になったからには派手にいきたいです。まずは、目の前の一局一局に集中したいです。40代50代と長く棋士を続け公式戦通算600勝が目標です。
――どのような将棋を目指したいですか
今は、終盤に逆転することが多いです。思い出してみると、三段リーグの最終戦もそうでした。これからは、序盤からリードして逃げ切る将棋を目指したいです。そのために、序盤の研究や詰め将棋の練習などをしています。
――子どもたちに伝えたい将棋の魅力とは
将棋はルールを覚えてしまえば、子どもから大人まで年齢関係なくできます。たとえ序盤が劣勢であっても、終盤に形勢逆転することもできるのも魅力です。ただ、1回勝つまでがなかなか難しいので挫折しないようにしてほしいです。1回勝てればどんどん勝てるようになります!
生まれ育った船橋の思い出とリフレッシュ
――船橋のお気に入りの場所や好きな食べ物はありますか
お気に入りの場所は御滝公園ですね。桜が満開の時期は散歩しに行ったり、桜まつりに参加したりしています。
――船橋で好きな食べ物はありますか
船橋のなしも食べます。実は、親戚が市川市でなしを作っていて、なしは身近です。
――どんなことでリフレッシュしていますか
欧州サッカー観戦とビールを飲むことです。ここ1年間は、将棋だけに集中していたので、サッカーも見ていなかったです。今から、応援しているレアルマドリードの試合が楽しみです。
船橋市役所を訪問!
▲松戸市長に色紙を手渡す高橋四段
▲卒業文集を見る高橋四段と松戸市長
高橋四段は「やっと夢が叶いました」と緊張しつつも笑顔で喜びを報告。
市長は「棋士になる夢の書かれた卒業文集も読みました。子どもの頃からの夢を継続し、実現することがすごいこと。厳しい世界だが、高橋さんなりの将棋で上を目指して頑張ってほしい。いずれ、船橋の子どもたちにも将棋の話をしてほしい」と激励の言葉をかけました。
▲自ら書いた座右の銘を掲げる高橋四段
13年という長く苦しい重圧を乗り越え、身も心も棋士へと成長した高橋四段。
座右の銘である「心如水(しんはみずのごとし)」を胸に、水のように清らかな心と新たな目標達成への熱い想いで生涯600勝という大きな目標に向かって突き進んでいます。
生まれ育ててもらった船橋に恩返しがしたいと、子どもの頃からひたむきに将棋と向き合う若き棋士の活躍に、ぜひご注目ください!
♢高橋佑二郎四段プロフィール
船橋市生まれ。三咲小学校、御滝中学校出身。
2011年9月 6級(奨励会入会)
2020年9月 三段
2024年4月 四段(棋士)