【子ども記者通信】25回もの過酷な任務を果たし、第二の人生を送るSHIRASE5002(海神小学校 世古口愛美さん)
船橋港に停留されている「SHIRASE5002」。日本の3代目南極観測船で、退役後に船橋市で一般公開されています 。今回は現役で稼働している「しらせ」5003と先代の「SHIRASE5002」の2つの見学ツアーに参加し、調べてきたことをご紹介します。
4月8日、4代目南極観測船「しらせ」5003が、5カ月の航海を終えて日本に帰ってきました。南極は、人間による環境汚染が最も少ないため、地球が抱える環境問題の情報を集めることができるため、さまざまな国の観測拠点があります。日本は1957年に開設した昭和基地を中心に4つの基地をもっており、今も観測隊員が観測や研究を行っています。
南極観測船は一般的には南極観測船や砕氷船と呼ばれていますが、海上自衛隊に所属する自衛艦で、自衛隊の中では砕氷艦と呼ばれています。「しらせ」5003は南極地域観測協力を行う日本で唯一の砕氷艦で、物資や人員の輸送、観測支援などいろいろな役割があります。
現役の南極観測船である「しらせ」5003が横浜の山下埠頭にて4月13日、14日の2日間一般公開されました。私も初日に、この「しらせ」5003を見学しに行ってきました。実際に「しらせ」 をみた第一印象は「ずんぐりしていて大きい!」でした。長さは138m(小学校のプール5個分より大きいくらい)幅は27m(学校のプールより少し長いくらい)高さは47m(小学校の校舎5倍弱くらい)あります。とてもたくさんの人が見学に来ていて、並んでから入るまで1時間もかかって大変でしたが、見学するなかで、実際に南極に行った方たちに話を聞くこともでき、とても貴重な体験ができました。
航海長の小坂さんは、南極には地球上の9割の氷があることや、「白夜」という太陽が沈まない時期があること、白夜で生活リズムが狂わないように午後8時には館内を暗くして寝るなど生活リズムを整える工夫があること、昭和基地はまだ温暖化の影響を受けていないことなどを教えてくださいました。南極航海中の出来事で一番楽しかったことを伺うと、航海長として計画通りに任務を達成できたことだとおっしゃっていました。
3年前に南極から帰ってこられた通信長の関根さんからは、実際に南極で撮影したアデリーペンギンやウェッデルアザラシ、オーロラの写真を見せていただいたり、南極から持ち帰ってきたという氷を触らせてもらったりして、南極を身近な場所に感じることができました。
「しらせ」5003は見学者が多く、列が流れて行ってしまうのでゆっくり見て回れなかったのが残念でしたが、実はこの「しらせ」5003の先輩、3代目の南極観測船「しらせ」5002(SHIRASEに改名)が船橋港で展示保存されていて予約をすれば見学することができるのです。SHIRASE5002にはプレミアムコースとベーシックコースと2つの見学コースがあり、私は5月3日にプレミアムコース、5月11日にベーシックコースで見学に行ってきました。
プレミアムコースでは元観測隊員や元乗組員、退職された自衛隊関係者の方が船内各所を1時間半くらいかけてガイドしてくださり、当時の船内生活や、南極のこともいろいろ教えていただくことができました。また、短い時間ではありますが普段公開されていない観測室・食堂・船室・医務室・手術室なども案内していただけました。ベーシックコースでは場所は限られてしまいますが、ゆっくりと自由に見学し、実際に観測隊員が着用している「ヤッケ」(上着)や冬用ブーツも試着させていただくことができました。ベーシックコースでも船内にいらっしゃる方に話しかけると色々教えてくださいます。
プレミアムコースとベーシックコース、どちらのコースにしても南極から持ち帰ってきたという氷を触って解けたときに出てくる南極の空気を感じることができ、南極大陸にまつわるパネルや南極大陸の石などの展示物を見学することができました。
SHIRASE5002は1982年~2008年まで、25回もの航海を乗り越えて来た世界有数の大型砕氷船で、昭和基地への接岸回数も24回と歴代観測船の中で最も多いです。氷の中を走る目的の船で横揺れ防止の装備がほとんどついていないSHIRASE5002は2001年には荒れた南極海を航海中に左に53度、右に41度と左右に大きく傾きました。あまりの傾きの大きさに普通に立っていることができず、船の操艦もバーにつかまりながら行っていたそうです。この傾き記録はいまでも海上自衛隊の最大動揺記録として残っています。
また、厚さ1.5mの氷の中をラミング(砕氷航行)しながら時速3ノット(ダイエットに最適なウォーキングの速さくらい)で航行することができる性能を持っているおかげで、氷の中で身動きが取れなくなっていたオーストラリアの砕氷船を救出したこともあるそうです。
プレミアムツアー終了後に、SHIRASE5002の初出航の時の航海士であり、オーストラリアの砕氷船を救い出したときにも乗船していたという航海士の本間さんとパイロットの杉木さんがお時間を作ってくださり、貴重なお話をたくさん伺うことができました。
本間さんは今までに3回も南極に行ったそうです。初めてSHIRASE5002に乗った時には、船は本来何かにぶつけてはいけないものであるはずなのに、氷の中を進むために、船で氷に体当たりする初めての経験に爽快感を覚えたそうです。本間さんに南極航海中に一番つらかったことを伺うと、もちろん任務をきちんとこなすことも大変でしたが、5カ月間家族に会えなかったことがつらかったことですとのことでした。当時、船の電話は衛星電話で2分2000円の通信料だったのですが、80万円も通信料に使った方もいらっしゃったそうで、その金額に驚きました。
航海士の任務は4つに分かれてワッチ(見張りや操船などの当直)を組んでいたそうです。昭和基地を偵察に来るアデリーペンギンのお話も聞かせていただきました。最初の日1匹が偵察に来て、次の日は何匹かできて、しばらく偵察し、あきたら帰っていったそうですが、かわいいペンギンの様子が目に浮かぶようでした。 また、荒れた南極海では船が傾いていると食事がとりにくいので、食事中だけ船の向きをかえたりもするそうです。食事といえば、毎日朝食・おやつ・昼食・おやつ・夕食・夜食・深夜食と7食あり、深夜食は起きている方のみとるとのことですが、パイロットの杉木さんは毎日深夜食までしっかり召し上がっていたとのことでした。一方本間さんは深夜食をあまり召し上がったことがなかったそうです。楽しいお話の時間はあっという間に過ぎてしまいとても残念でした。
私はSHIRASE5002及び「しらせ」5003の見学に行ってみて南極の様子を肌で感じたことで、改めて南極に興味を持ち、実際に行ってみたいと思いました。SHIRASE5002は身近な船橋港にあるので皆さんもぜひ見学に行ってみてください!
最後になりましたが、今回の取材で貴重なお時間を作ってくださったSHIRASE5002の本間さん・杉木さん、そして「しらせ」5003でお話をしてくださった小坂さん・関根さんをはじめ、色々教えてくださった皆様、本当に有難うございました。
(令和6年5月13日投稿)
船橋市の京葉コンビナートに停泊しているSHIRASE5002
航海士の本間さんとパイロットの杉木さん
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