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発議案(議員提出議案)平成22年第4回定例会

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 発議案(議員提出議案)平成22年第4回定例会


 発議案第1号 船橋市議会議員定数条例の一部を改正する条例 

(提出者)長谷川大(賛成者)神田廣栄、石渡憲治、野田剛彦、大沢久、中村実


 船橋市議会議員定数条例(平成14年船橋市条例第38号)の一部を次のように改正する。

 本則中「50人」を「40人」に改める。

附則

 この条例は、次の一般選挙から施行する。

理由

 新しい社会経済情勢に即応した地方議会制度を目指し、議会が住民意思を反映する機能を確保しつつ、かつ簡素で能率的な運営を期する観点から、議員定数の見直しを図る必要がある。これが、この条例案を提出する理由である。

 発議案第2号 尖閣諸島を自国領土と主張する中国への抗議等に関する意見書

(提出者)総務委員長 石川敏宏


 本年9月7日、尖閣諸島の久場島沖の日本国領海内において、違法操業中の中国漁船が、退去命令を出した第11管区海上保安本部の巡視船に接触した上、逃走を図り、停船命令にも応じず、巡視船に衝突する事件が発生した。しかし、9月24日、那覇地方検察庁は、公務執行妨害罪の被疑事実で逮捕・送検していた同漁船の船長を処分保留で釈放した。

 尖閣諸島が、沖縄県石垣市に属する我が国固有の領土及び行政区域であることは、国際的にも疑問の余地はなく、中国が、尖閣諸島を不当に自国領土と主張していることに関しては、我が国として毅然たる態度を示す必要がある。

 よって、政府は、下記事項を実施するよう、強く要望する。

1. 尖閣諸島及び周辺海域が、我が国固有の領土及び領海であることを改めて中国政府を初めとする諸外国に示すこと。

2. 尖閣諸島周辺海域において、我が国の漁業者が自由かつ安全に操業・航行できるよう、海上保安庁による警備の強化・増強等適切な措置を講じること。

3. 中国政府に対し、今回の事件に関して厳重に抗議するとともに、早急に謝罪及び破損した巡視船の損害賠償を請求すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、外務大臣

 発議案第3号 尖閣諸島沖における中国漁船衝突事件に関する決議

(提出者)日色健人(賛成者)佐々木克敏、佐藤新三郎、滝口宏、田久保好晴、安藤のぶひろ、早川文雄、興松勲、七戸俊治、瀬山孝一、大矢敏子、木村哲也、中村実、長谷川大


 9月7日、尖閣諸島沖の日本領海内で中国漁船衝突事件が発生したが、那覇地方検察庁は、24日、公務執行妨害容疑で逮捕した中国人船長を処分保留のまま釈放した。

 「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領有権の問題は存在しない」というのが、従来からの政府見解であり、また、過去の経緯を見ても、中国や台湾が領有権について独自の主張を行うようになった昭和45年(1970年)以前は、どの国もそれに異議を唱えたことはなかった。

 しかし、今回中国人船長が逮捕されると、中国政府は、閣僚級以上の交流停止、国連総会での日中首脳会談の見送り、日本人4人の身柄拘束などの対抗措置をとった。また、中国人観光客の訪日中止など日本の各種産業にも悪影響が及んでいる。

 このような状況の中で、中国人船長を釈放したことは、日本が中国の圧力に屈したとの印象を与え、また国際社会にも誤ったメッセージを与えるものであり、現政権与党の国家主権に対する認識に疑問を抱かざるを得ない。

 よって、政府においては、下記事項を実現し、毅然とした外交姿勢を確立すべきである。

1. 尖閣諸島は日本固有の領土であることを明確に中国及び諸外国に示し、今後同様の事件が起こった際は、国内法に基づき厳正に対処すること。

2. 政府は、検察当局の判断も含め、国会の場で国民に対し説明責任を果たすこと。

3. 中国からの謝罪や賠償請求には応じず、日本が被った損害賠償を請求すること。

4. 尖閣諸島の警備体制を充実・強化すること。

 以上、決議する。

 発議案第4号 脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する意見書

(提出者)角田秀穂(賛成者)橋本和子、鈴木郁夫、浦田秀夫、小森雅子


 脳脊髄液減少症は、交通事故やスポーツ外傷等の身体への強い衝撃が原因で、脳脊髄液が漏れ、減少することによって引き起こされ、頭痛、めまい、耳鳴り、倦怠感等、多種多様な症状が複合的にあらわれるという特徴を持っている。

 今年4月、厚生労働省より、本症とわかる前の検査費用は、保険適用との事務連絡が出された。これは、本来検査費用は、保険適用であるはずのものが、地域によって対応が異なっていたため、それを是正するため出されたものである。これは、患者にとり朗報だった。しかし、本症の治療に有効であるブラッドパッチ療法(自家血硬膜外注入)については、いまだ保険適用されず、患者及びその家族は、依然として高額な医療費負担を強いられる厳しい環境に置かれている。

 なお、平成19年度から開始された「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究」事業(当初3年間)は、本年8月、遂に症例数において中間目標100症例の中間目標数を達成している。

 よって、政府においては、脳脊髄液減少症の診断及び治療の確立を早期に実現するため、以下の項目を実施するよう、強く要望する。

1. 本年度中に、「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究」事業において収集した症例から基礎データをまとめ、脳脊髄液減少症の診断基準を定めること。

2. 来年度に、ブラッドパッチ治療を含めた診療指針(ガイドライン)を策定し、ブラッドパッチ療法(自家血硬膜外注入)を脳脊髄液減少症の治療法として確立し、早期に保険適用とすること。

3. 脳脊髄液減少症の治療(ブラッドパッチ療法等)を、災害共済給付制度、労働者災害補償保険、自動車損害賠償責任保険の対象に、速やかに加えること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣

 発議案第5号 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)総合対策に関する意見書

(提出者)角田秀穂(賛成者)橋本和子、鈴木郁夫、浦田秀夫、小森雅子


 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、致死率の高い「成人T細胞白血病(ATL)」や、進行性の歩行・排尿障害を伴う「脊髄疾患(HAM)」等を引き起こす。国内の感染者数(キャリア)は100万人以上と推定され、その数はB型・C型肝炎に匹敵する。毎年1,000人以上がATLで命を落とし、HAM発症者は、激痛や両足麻痺、排尿障害に苦しんでいる。一度感染すると、現代の医学ではウイルスを排除することができず、いまだに根本的な治療法は確立されていない。

 現在の主な感染経路は、母乳を介して母親から子供に感染する母子感染と性交渉による感染であり、そのうち母子感染が6割以上を占めている。このウイルスの特徴は、感染から発症までの潜伏期間が40年から60年と長いことであり、そのため、自分自身がキャリアであると知らずに子供を母乳で育て、数年後に自身が発症して、初めて我が子に感染させてしまったことを知らされるケースがある。この場合、母親の苦悩は言葉では言いあらわせない。一部自治体では、妊婦健康診査時にHTLV-1抗体検査を実施し、陽性の妊婦には、授乳指導を行うことで、効果的に感染の拡大を防止している。

 平成22年10月6日、厚生労働省は、官邸に設置された「HTLV-1特命チーム」における決定を受け、HTLV-1抗体検査を妊婦健康診査の標準的な検査項目に追加し、妊婦健康診査臨時特例交付金に基づく公費負担の対象とできるよう、通知を改正し、各自治体に発出した。これにより、全国で感染拡大防止対策が実施されることになるが、そのためには、医療関係者のカウンセリング研修やキャリア妊婦等の相談体制の充実を図るとともに、診療拠点病院の整備、予防・治療法の研究開発、国民への正しい知識の普及啓発等の総合的な対策が不可欠である。 

 よって、政府においては、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染拡大を防止する「HTLV-1総合対策」を推進するため、以下の項目を早急に実現するよう、強く要望する。

1. 医療関係者や地域保健担当者を対象とした研修会を早急に実施すること。

2. HTLV-1母子感染対策協議会を全都道府県に設置し、検査体制、保健指導・カウンセリング体制の整備すること。

3. 相談支援センターを設置し、感染者及び発症者の相談支援体制を充実すること。

4. 感染者及び発症者のための診療拠点病院の整備すること。

5. 発症予防や治療法に関する研究開発を大幅に推進すること

6. 国民に対する正しい知識の普及と理解の促進すること。

7. 発症者への支援、福祉対策を推進すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、厚生労働大臣

 発議案第6号 ロシア大統領の北方領土訪問に対する毅然とした外交姿勢に関する決議

(提出者)日色健人(賛成者)佐々木克敏、佐藤新三郎、滝口宏、田久保好晴、安藤のぶひろ、早川文雄、興松勲、七戸俊治、瀬山孝一、大矢敏子、木村哲也、中村実、長谷川大


 ロシアのメドベージェフ大統領が11月1日、我が国固有の領土である北方四島の一つ、国後島を訪問した。

 北方領土は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であることは明白であり、ロシアも1993年の「東京宣言」において「北方四島の帰属に関する問題については、歴史的・法的事実に立脚し、両国間での合意の上、作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決する」との指針を確認している。

 旧ソ連時代を含め、ロシアの国家元首が北方領土を訪問したのは初めてであり、大統領の訪問は、こうした日ロ両国間の合意を無視し、ロシアによる四島の不法占拠を既成事実化しようとするものである。

 なお、今般の訪問の背景には、普天間飛行場移設問題や、中国人船長釈放問題などがあることは明白であり、現政権のこれらの外交姿勢は、我が国及びアジア太平洋地域の安全保障、経済発展に重大な影響を与えるものである。

 よって、政府においては、今般のメドベージェフ大統領の北方領土訪問について厳重に抗議し、ロシアに対し毅然たる外交姿勢で臨むよう強く求めるとともに、北方領土問題の早期解決を導くためにも、早急に外交戦略の立て直しを図るよう求める。

 以上、決議する。

 発議案第7号 朝鮮高級学校に対する高校授業料無償化の審査基準に関する意見書

(提出者)日色健人(賛成者)佐々木克敏、佐藤新三郎、滝口宏、田久保好晴、安藤のぶひろ、早川文雄、興松勲、七戸俊治、瀬山孝一、大矢敏子、木村哲也、中村実、長谷川大


 11月5日、高木文部科学大臣は、「個々の具体的な教育内容については基準としない」とする朝鮮高級学校に対する高校授業料無償化の審査基準等を発表した。これにより、外形的な基準が整えば、朝鮮高級学校が高校授業料無償化の対象となる可能性が極めて高くなった。

 朝鮮高級学校では、金日成・金正日に対する徹底した個人崇拝のもと、客観的な事実に基づく朝鮮の歴史ではなく、金日成・金正日の家系史が教育されており、これらは、到底、歴史教育と呼べる内容ではない。

 さらには、朝鮮戦争、大韓航空機爆破事件、拉致問題等についても虚偽・ねつ造の歴史が教育されており、これらの内容は、朝鮮高級学校に通う子供たちに対して、日本社会や国際社会とのあつれきを生み出し、独裁体制を支えるための思想教育として、人権侵害の疑いさえある。

 政府案では、指定前に教育内容は判断できず、指定に際しての留意事項についても、原則として自主的な改善を待つのみで、真に是正が図られる保証はない。

 なお、公安調査庁は、朝鮮学校の管理・運営は、朝鮮総連の指導のもとに進められており、朝鮮総連の影響は、朝鮮学校の教育内容、人事、財政に及んでいると国会で説明している。また、北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙は、就学支援金は、生徒ではなく、朝鮮学校への支援であるとの報道を行っている。これらのことから、就学支援金が、真に生徒の教育費負担の軽減に充当される保証はない。

 よって、政府においては、朝鮮高級学校に対する高校授業料無償化の審査基準について見直すとともに、朝鮮高級学校が教育内容を是正し、就学支援金を生徒の授業料の支払いに充当することを受け入れない限り、高校授業料無償化の対象としないよう、強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、文部科学大臣

 発議案第8号 日本の尖閣諸島領有権に関する意見書

(提出者)佐藤重雄(賛成者)渡辺ゆう子、中沢学、金沢和子、伊藤昭博、石川敏宏、岩井友子、関根和子


 尖閣諸島の存在は、古くから日本にも中国にも知られていたが、近代に到るまでいずれの国の領有にも属さない、国際法でいう「無主の地」であった。日本政府は、1895年1月14日の閣議決定によって尖閣諸島を日本領に編入したが、これが歴史的には最初の領有行為となった。これは「無主の地」を領有の意思をもって占有する、国際法でいう「先占」に当たる。そしてそれ以降、今日に至るまで、尖閣諸島は、戦後の一時期、米国の施政下に置かれたことはあったが、日本による実効支配が続いている。

 以上の歴史的事実に照らして、日本による尖閣諸島の領有は、国際法上明確な根拠があることは明らかである。

 中国側は、尖閣諸島の領有権を主張しているが、その最大の問題点は、中国が1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議も行っていないという事実にある。中国は、1970年代に入ってから、にわかに尖閣諸島の領有稚を主張し始めたが、その主張の中心点は、「日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだ」というものである。しかし、日清戦争の講和を取り決めた下関条約とそれに関するすべての交渉記録に照らしても、日本が中国から侵略によって奪ったのは台湾と澎湖(ほうこ)列島であり、そこに尖閣諸島は含まれていない。日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による侵略とは全く性格が異なる正当な行為であり、中国側の主張が成り立たないことは明瞭である。

 日本側の問題点は、歴代政府が、1972年の日中国交正常化以来、本腰を入れて日本の領有の正当性を主張してこなかった点にある。

 よって、政府においては、歴史的事実と国際法の道理に即し、尖閣諸島の領有の正当性について中国政府と国際社会に堂々と主張する外交努力を強めるよう、強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、外務大臣

 発議案第9号 千葉県公立高等学校入学者選抜学力検査の内容改善に向けた公開議論に関する意見書

(提出者)朝倉幹晴(賛成者)橋本和子、鈴木郁夫、中沢学、伊藤昭博


 大学進学を目指す約52万人が受ける大学入試センター試験は、各出題科目の関連学会や高校教員に、出題内容の他者評価を依頼している。そして、その他者評価をも踏まえた自己分析と次年度に向けた出題方針を決定し、だれもが見られる形でホームページに公開している。平成22年度実施分については、センター試験6教科28科目についてA4で計511ページもの報告書が出され、関係者の間で作問の質と改善について徹底的な討論がなされている。そして、その中で次年度の作問について改善がなされており、多くの科目で平均点が50~70点の正規分布となるような作題がされつつある。

 千葉県公立高等学校入学者選抜は、3.5万人もの中学生が受験し、一県単位の比率ではセンター試験と同様な受験者率となっているにもかかわらず、試験の質に対する外部評価や改善が不十分である。他者評価については、中学高校関係者の評価が、内容の記述なしに「適当である」「改善を要する」のパーセントでしか示されず、改善を要するのがどの中身か、公開されていない。そして、5教科全教科でA4で13ページの自己評価「公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」が公開されるのみで、その中の各科目の評価は、漠然と数行程度書かれているのみである。そのような中で、標準的な学力を問う試験としては疑問が出されてもおかしくない作題のされ方が放置されている。

 県公立高校入試は、多くの中学3年生が、進学や夢をかけて必死に勉強し取り組む試験である。それに対し、県の行政担当者や関係者は、その重みに相当する徹底的な討論とその県民への公開、改善を図る必要がある。

よって、千葉県においては、県公立高等学校入学者選抜学力検査の内容改善に向けて徹底した公開的議論がなされるために、下記事項を実施するよう、強く要望する。

1.平成23年2月実施の入学者選抜学力試験について、大学入試センターの試験問題評価委員会が行っているのと同様に、その問題に対する他者評価を、県内教育団体等に依頼すること。

 そして、他者評価を踏まえた出題者の自己分析と今後の作問姿勢を明記した見解双方を、平成23年度に県ホームページに公開すること。

 また、平成23年度以降の入学者選抜試験についても、同様な方向を目指すこと。

2.平成23年度以降実施の試験のうち、過度に平均点が低い科目について、高校入試において適切かどうか再検討し、適度な平均点を目指すように、作題の質について再検討をすること。

3.得点分布グラフが、正規分布でなく、得点25~30点の分布が最も多く、高得点側がなだらかに分布する試験については、その適否・是非に関する見解をホームページ等で公開し、改善できる点は改善すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)千葉県知事

 発議案第10号 奨学金制度の再設計と抜本的拡充等に関する意見書

(提出者)伊藤昭博(賛成者)橋本和子、鈴木郁夫、中沢学、朝倉幹晴


 日本学生支援機構(旧日本育英会)は、奨学金の返済を3カ月以上延滞した利用者を債権回収会社に回し、さらに個人信用機関に通報する制度を本年度より導入した。

 さらに、文部科学省は、平成24年度より貸与基準の厳格化と、無利子奨学金の貸与条件に社会貢献活動への参加を追加する方針すら決定している。

 長引く不況により、大学・大学院卒業後の若年層にとって安定した就業と収入の確保が難しい状態が続く中、卒業後の奨学金返済が困難になる社会人が増加している。とりわけ、有利息の第2種返済者は、利息に加えて延滞金が課せられるため、当初の返済金額を大きく上回る債務を背負うことになる。それに加えて督促の強化と、いわゆる金融ブラックリストへの登録まで課せられることになった。

 平成11年の有利息奨学金の導入により、奨学金利用学生数は大きく膨らんでいる。その一方で、滞納の増加も著しいとされているが、そもそも日本育英会時代に限度額を引き上げ、貸与基準を緩和し借りやすくして利用者をふやしながら、独立行政法人になるや金融機関のごとく採算性の重視に向かうことにあらわれている、我が国の奨学金制度の根本的制度設計のひずみが問題である。

 さらに、我が国は、高等教育にかかる学費が異常に高額である。OECD各国が給付型を主流に人材育成のために手厚い奨学金制度を実現しているにもかかわらず、我が国は高等教育費の公財政支出対GDP比はOECD加盟国中最低レベルであり、給付型の奨学金は事実上皆無、3%の有利子奨学金利用者が7割を超す状況である。

 こうした中での奨学金貸与条件の厳格化と返済への締めつけの強化は、日本国憲法第26条が保障する等しく教育を受ける権利を侵害し、教育を通じた格差の固定化と連鎖を引き起こすものである。

 文部科学省と日本学生支援機構は、将来に向けた人材育成という奨学金の本来の趣旨に立ち戻り、学ぶ意欲を守る奨学金制度へと制度設計をし直すべきである。また、一方的に無理な返済を強要することなく、生活困窮者一人一人の実態を勘案した返済計画を提示するべきである。

 よって、政府においては、以下の項目を実施するよう、強く要望する。

1.国連人権A規約13条2項(b)・(c)「中等・高等教育無償化」の「留保」を即時撤回し、高等教育無償化への道筋を明らかにすること。

2.教育予算の増額及び高等教育学費負担の軽減を行うこと。

3.奨学金返済延滞者のブラックリスト化を中止・撤回すること。

4.奨学金返済猶予期間の5年上限を撤廃すること。

5.無利子奨学金の拡充と給付型奨学金の創設を行うこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、財務大臣、文部科学大臣

 発議案第11号 米価下落対策に関する意見書

(提出者)藤川浩子(賛成者)上林謙二郎、佐藤重雄、まきけいこ


 政府は、戸別所得補償モデル事業によって米の需給は均衡し、米価は安定するとしてきた。

 しかし、平成21年産米がいまだに流通している中で、相対価格が史上最低を更新し、さらに22年産新米が出回る現況では、戸別所得補償を見込んだ市場の反応に加え、政府が「価格対策はとらない」と公言したことで、底知れぬ米価下落に拍車がかかっている。この結果、米業者は一斉に買い控え、一方、産地側は売り急ぎに走るなど、生産原価無視の激しい産地間の値下げ競争が起こっている。

 さらに、生産農家は、今夏の異常な猛暑による高温障害等で、等級落ち、収量減等の問題にも直面しており、今後の資金繰りに苦慮するなど、まさに米づくりに失望する深刻な事態となっている。

 戸別所得補償モデル事業は、米価下落の歯どめとして機能しないこと、米価が下落すれば制度上さらなる財政負担が避けられないことが証明されている。このまま放置すれば、農家と産地の疲弊が一層進み、国民への国内産米の安定供給が困難になることは必至であり、政府が優先課題とする食料自給率向上の土台が崩壊してしまう。

 よって、政府においては、米の棚上げ備蓄を前倒しし、40万トン程度の備蓄米を適正な価格水準で買い入れるなどの米価下落対策を直ちに実施するよう、強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、農林水産大臣

 発議案第12号 子ども手当財源の地方負担反対に関する意見書

(提出者)日色健人(賛成者)佐々木克敏、佐藤新三郎、滝口宏、田久保好晴、安藤のぶひろ、早川文雄、興松勲、七戸俊治、瀬山孝一、大矢敏子、木村哲也、中村実、長谷川大


 政府は、平成22年度から導入した子ども手当について、全額国庫負担で実施するとの方針を繰り返し表明してきたが、22年度予算では、暫定措置としてその財源に地方負担分約6100億円が盛り込まれた。

 本来、全額国庫負担が原則だった子ども手当について、原口前総務大臣が国会答弁等において、23年度以降は地方負担を継続しないことを明確にしていたにもかかわらず、現政権は、来年度以降も地方負担を求めることの考えを示している。

 子育て支援は、地域の実情に応じて創意工夫が発揮できる分野は地方自治体が担当し、子ども手当のような全国一律の現金給付については国が全額を負担すべきである。こうした内容について、地方との十分な協議もないままに、来年度予算でも地方負担が継続されることは、到底容認できない。

 よって、政府においては、子ども手当について、その財源を全額国庫負担とし、仮にその制度設計ができない場合は、制度そのものを廃止するよう、強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、国家戦略担当大臣、内閣官房長官

 発議案第13号 ロシアとの領土問題に関する意見書

(提出者)佐藤重雄(賛成者)渡辺ゆう子、中沢学、金沢和子、伊藤昭博、石川敏宏、岩井友子、関根和子


 ロシア連邦のメドベージェフ大統領は、11月1日、ソ連時代を含め同国最高指導者としては初めて日本の歴史的領土である千島列島の国後島を訪問した。

 今回の訪問は、日本国民にとっては、大統領の単なる「国内視察」ではない。それは、ロシアの最高権力者が、同国に不当に併合された日本の領土である千島を、「ロシアにとって極めて重要な地域」としてこれからも占領し続け、領有を固定化しようとする新たな意思表示であり、領土問題の公正な解決に反するものである。

 ロシアとの領土問題は、第2次世界大戦の終結時に、ソ連が領土不拡大という戦後処理の大原則を踏みにじって、日本の歴史的領土である千島列島の獲得を企て、対日参戦の条件としてアメリカ、イギリスなどにそれを認めさせるとともに、講和条約の締結も待たずに、千島列島を自国の領土に一方的に編入したことによって起こったものである。その際ソ連は、北海道の一部である歯舞群島、色丹島までも編入した。この戦後処理の不公正を正すところに、ロシアとの領土問題解決の根本があり、返還されるべきは歯舞群島、色丹島と全千島列島である。  日本政府の対ロシア領土交渉が、昭和31年(1956年)の日ソ共同宣言以来、半世紀を超えてなお不毛な結果に終わっているのは、この根本問題を避けてきたところに最大の原因がある。日ロ領土問題の解決のためには、第2次世界大戦の戦後処理の不公正を正すという立場に立って交渉を行う必要がある。

 よって、政府においては、ロシアが現状固定化を目指して新たな強硬措置に出てきた今日、歴史的事実と国際的道理に立った本格的な領土交渉に踏み出すよう、強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣総理大臣、外務大臣

 発議案第14号 「子ども・子育て新システム」に関する意見書

(提出者)佐藤重雄(賛成者)岩井友子、浦田秀夫


 政府は、就学前の子供の子育て関連の制度・財源・給付を一元化する「子ども・子育て新システム」という新制度を平成25年度(2013年度)から施行するとしている。

 新制度の基本方向は、子ども・子育て新システム検討会議が6月に発表した「基本制度案要綱」に沿って「すべての子どもに切れ目のないサービスを保障する」としているが、以下の重大な問題がある。

 第1に、幼稚園と保育所の垣根を取り払い、親の就労と関係ない「こども園」への一本化が打ち出されているが、両施設は、それぞれが長い歴史と違う役割を持っており、施設の基準や職員配置も違うもので、強引に一本化すれば混乱を招くだけである。

 第2に、株式会社などの参入で量的拡大を図るため、一定の基準を満たせば参入も撤退も自由、補助金も株主配当や他事業に利用可能、としているが、これは子育てどころか企業利益に直接お金を注ぎ込むようなものである。

 第3に、施設やサービスの申し込みは利用者と事業者との直接契約、利用料は時間に応じてふえる応益負担の導入が検討されているが、これでは保護者の負担増になり、保育に欠ける子供に対する市町村の責任の放棄となる。

 第4に、子ども手当から保育や学童までのさまざまな子育て支援の制度と財源を一つにまとめた上で、市町村が一括して交付金を受け取り、自由にメニューや内容を決められる制度とするとしているが、保育所などの国の最低基準が廃止されれば地域格差が拡大し、今でも先進国最低の保育条件が、さらに後退する。

 こうした政府の動きに対し、幼児教育団体などは、「日本の子供がどのような育ちをするべきかといった本質論に欠けている」と、拙速な進め方を厳しく批判する声を上げている。

 今政府がやらなければならないことは、深刻な待機児を解消するための認可保育所増設予算の緊急措置及びすべての子供の権利・発達を保障するための保育所・幼稚園等を初めとする子育て支援予算の大幅増額である。

 よって、政府においては、「子ども・子育て新システム」について、拙速な結論を出すことのないよう、強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)内閣府特命担当大臣(行政刷新)・国家戦略担当大臣、内閣府特命担当大臣(少子化対策)、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣