住民監査請求監査 監査結果本文(平成21年12月7日)

更新日:平成25(2013)年3月15日(金曜日)

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監査結果本文

船橋市監査委員告示第16号
地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条第1項に基づく、船橋市職員措置請求について監査を実施したので、同条第4項の規定により、その結果に関する通知を公表する。
平成21年12月7日
船橋市監査委員 髙地章記
船橋市監査委員 増田尚功
船橋市監査委員 上林謙二郎
船橋市監査委員 小石洋

第1 請求人

住所・氏名 省略

第2 請求の受理

平成21年10月7日付けで提出のあった本件措置請求については、法第242条の要件を具備しているものと認め、平成21年10月7日に受理した。

第3 監査の実施

1 請求の要旨(措置請求書の原文のとおり)

  1. 船橋市長は船橋市本町4-32-13にある在日本大韓民国民団千葉県船橋支部(以下「民団船橋支部」という。)の一部が地方税法第367条及び船橋市市税条例(以下「市税条例」という。)第71条第1項第4号に該当するものとして、固定資産税を一部減免した。(証1)
  2. 「在日本大韓民国民団」について
    在日本大韓民国民団中央本部のHPには民団の基本性格として以下のことが述べられている。「在日韓国人の法的、政治的、社会的権益を擁護し、民族教育と文化を向上する活動は特定個人や一部集団の営利でなく、在日韓国人全体のための営利をめざす組織です。」
    また、民団の綱領として「在日韓国国民として大韓民国の憲法と法律を遵守します。」とも述べている。(証2)
  3. 「地方参政権獲得運動」について
    在日本大韓民国民団は平成21年を地方参政権獲得の「勝負の年」「苦節16年の総決算」として政治活動を行なっている。(証3)
    そして、直近の政治活動では平成21年5月31日「永住外国人に地方参政権を!5・31集会」を銀座に於いて行い、デモも敢行した。
    この集会は民主党副代表、公明党副幹事長、共産党総務部会長、新党日本副代表が出席した政治集会である。(証4)
    また、平成21年8月30日の衆院選において、地方参政権付与を確約する立候補予定者を在日本大韓民国民団で全面的に支援し、団員を動員するとしている。(証5)
  4. 船橋市長は「町会・自治会等の集会所等に供してる」として減免をしているが、社会教育法第20条で「公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」とある。公民館類似施設については社会教育法第42条に定めがあるが、社会教育法第20条に準ずると解すべきである。(証6)
    在日本大韓民国民団では綱領・基本性格として、日本の憲法を遵守するのではなく、大韓民国の憲法と法律を遵守し、在日韓国人全体のための営利をめざす組織であると明言しているように、民団船橋支部は在日韓国人の権益を擁護することを目的とした施設にすぎず、結果、一定地域内の住民の韓国語、韓国文化などの教育の機会を提供することを目的とした施設とはいえない。
    また、在日本大韓民国民団の民団員は韓国籍しか認められず、日本に帰化した元在日韓国人は民団員とはなれない。(証7)
    このように民団船橋支部は韓国人の権益のために政治活動等を行なう団体であり、税務部固定資産税課は民団船橋支部の実態を精査せず、公益性があるとして平成21年度の固定資産税を一部免除した。
    これらの行為は最終権限者である船橋市長、租税に責務のある税務部長ほか担当職員がその責務を怠ったと言うほかなく、その結果船橋市に損害をもたらした。
    よって監査委員は、船橋市長に対し、次のとおり勧告することを求める。
    「船橋市長は民団船橋支部に係る平成21年度の固定資産税の一部減免を取り消し、当該免除額を徴収すること。」

2 監査の対象事項

請求書に記載されている事項及び事実を証する書面並びに請求人の陳述内容から、監査の対象事項は「船橋市が、在日本大韓民国民団千葉県船橋支部(以下「民団船橋支部」という。)に対し行った、平成21年度の固定資産税・都市計画税の一部減免措置が、違法又は不当な措置であるか否か。」とした。
なお、請求人は、民団船橋支部に係る固定資産税の一部減免についての措置を求めているが、地方税法(以下「税法」という。)第702条の8第7項は、「都市計画税を固定資産税とあわせて賦課徴収する場合において、市町村長が税法第367条の規定によって固定資産税を減免したときは、当該納税者に係る都市計画税についても、同じ割合で減免されたものとする。」とされ、船橋市都市計画税条例第6条は、「都市計画税の賦課徴収は、固定資産税の賦課徴収の例によるものとし、固定資産税を賦課し、及び徴収する場合に併せて賦課し、及び徴収する。」とされており、本市は、固定資産税と併せて都市計画税を賦課徴収し、減免措置も同様としていることから、都市計画税を併せて監査の対象事項とした。

3 監査の方法

監査は、次のとおり実施した。

1 請求人の証拠の提出及び陳述

平成21年11月13日、請求人に対し、法第242条第6項の規定に基づき、証拠の提出及び陳述の機会を与えた。

2 関係職員の陳述

平成21年11月13日、税務部長、固定資産税課長、固定資産税課主幹、固定資産税課副主幹から陳述の聴取を行った。

3 関係する職員の事情聴取

本件監査の対象となった書類を調査するとともに、平成21年11月13日に次の職員から事情聴取を行った。
税務部長、固定資産税課長、固定資産税課主幹、固定資産税課副主幹。

4 関係人に対する調査

法第199条第8項の規定に基づき監査対象事項に係る関係人に対し、減免対象建物(以下「当該建物」という。)の利用状況及び事実関係を確認するため、平成21年10月30日に、監査委員事務局補助職員が現地において施設調査及び聞き取り調査を実施した。

第4 監査の結果

1 主文

本請求について、監査委員は、合議により次のとおり決定した。
本件請求については、請求に理由がないものとして棄却する。
以下、その理由について述べる。

2 理由

1 事実関係
(1) 固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)における減免の関係法令等について
  • 税法第367条(固定資産税の減免)
    市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。
  • 税法第702条の8(都市計画税の賦課徴収等)
    1 都市計画税の賦課徴収は、固定資産税の賦課徴収の例によるものとし、特別の事情がある場合を除くほか、固定資産税の賦課徴収とあわせて行うものとする。
    7 第1項前段の規定によって都市計画税を固定資産税とあわせて賦課徴収する場合において、市町村長が第367条、第368条第3項又は第369条第2項の規定によって固定資産税又は当該固定資産税に係る延滞金額を減免したときは、当該納税者に係る都市計画税又は当該都市計画税に係る延滞金額についても、当該固定資産税又は当該固定資産税に係る延滞金額に対する減免額の割合と同じ割合によって減免されたものとする。
  • 船橋市市税条例(以下「市税条例」という。)第71条(固定資産税の減免)
    1 市長は、次の各号のいずれかに該当する固定資産のうち、市長において必要があると認めるものについては、その所有者に対して課する固定資産税を減免することができる。
    (1) 貧困により生活のため公私の扶助を受ける者の所有する固定資産
    (2) 公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く。)
    (3) 市の全部又は一部にわたる災害又は天候の不順により、著しく価値を減じた固定資産
    (4) 前3号に定めるもののほか、特別の事由があるもの
    2 前項の規定によって固定資産税の減免を受けようとする者は、納期限前7日までに、次に掲げる事項を記載した申請書にその減免を受けようとする事由を証明する書類を添付して市長に提出しなければならない。
    (1) 納税義務者の住所及び氏名又は名称
    (2) 土地にあっては、その所在、地番、地目、地積及び価格
    (3) 家屋にあっては、その所在、家屋番号、種類、構造、床面積及び価格
    (4) 償却資産にあっては、その所在、種類、数量及び価格
    (5) 減免を受けようとする事由及び第1項第3号の固定資産にあっては、その被害の状況
    3 第1項の規定によって固定資産税の減免を受けた者は、その事由が消滅した場合においては、直ちにその旨を市長に申告しなければならない。
  • 船橋市都市計画税条例第6条(賦課徴収等)
    都市計画税の賦課徴収は、固定資産税の賦課徴収の例によるものとし、固定資産税を賦課し、及び徴収する場合に併せて賦課し、及び徴収する。
    ただし、市長が都市計画税を固定資産税と併せて賦課し、及び徴収することができないと認める特別の事情がある場合においては、この限りでない。
  • 固定資産税の減免取扱い要綱(以下「取扱要綱」という。)第3条(減免取扱いの範囲等)(昭和50年4月1日施行)
    市税条例第71条第1項に規定する固定資産税の減免については、別表に定めるところにより減額し、又は免除する。
    別表第4号該当(特別の事由があるもの)
    2 町会・自治会等の集会所等に供している固定資産(有料で使用するものを除く。)
    減免の割合 免除
    摘要 直接その用に供し、又は減免事由が生じた日以降に到来する納期に係わる減額
  • 固定資産税・都市計画税減免事務取扱要領(以下「取扱要領」という。)(平成18年5月26日施行)
    2 事務処理
    1 減免の申請
    (1) 減免の申請は、減免を受けようとする者から毎年度、減免申請書の提出を求めることとする。
    (2) 下記に掲げる用途・契約期間等明確なものについては、事務処理の簡素化から前記(1)にかかわらず、前年度において減免を行い、かつ当該年度においても引き続き減免事由に変更がないと確認できた場合に限り、減免申請書の提出は要しないものとする。
    (2) 集会所 ((1)、(3)~(12)略)
    3 減免の決定
    (2) 減免の調査
    (2) 継続申請分
    前記1・(2)の(1)~(12)に掲げるものを除き、毎年度減免申請を行わせると共に、速やかに現地調査を実施し、変更の有無を確認すること。
    (3) 現況報告
    前記1・(2)の(1)~(12)に掲げるもののうち、必要に応じ利用状況を証する書類を添付し、「固定資産税・都市計画税の減免に係る現況報告書」(別紙第1号様式)の提出を求めることとする。
    なお、報告によりその内容に確認の必要があると認められるものについては、速やかに現地調査を実施するものとする。
    また、上記の現況報告あるいは現地調査等により減免の事由が消滅したことを確認した場合は、別途「固定資産税・都市計画税の減免に係る事由消滅申告書」(別紙第2号様式)の提出を求め、消滅時期に合致した年度まで遡及し、適正な課税となるよう更正するものとする。
    (3) 決定の通知
    減免の申請に対し減免することを決定した場合は、速やかに「固定資産税・都市計画税減免決定通知書」をもって通知すること。
    ただし、減免申請書の提出を要しないもので前年度に引き続き同じ内容で減免するものは、納税通知書に減免額を記載することをもって通知に代えることとする。
    また、減免の申請に対し減免事由に該当しないと判断した場合は、速やかに「固定資産税・都市計画税の減免却下通知書」(別紙第3号様式)をもって通知すること。
    3 認定基準
    4 市税条例第71条第1項第4号に該当する場合
    「特別の事由があるもの」は、個々の事情により判断されるが、公益上の必要があると認められる固定資産等で社会通念上課税することが明らかに不合理であるものに限るものである。
    (4) 町会・自治会等の集会所等に供する固定資産
    (2) 集会所
    マンションの集会所等、又は第三者が無償で貸与して集会所の用に供している固定資産
    (注)町会、自治会等の集会所等に供する固定資産とは
    事務室、会議室、物置(みこし庫を含む)、湯沸かし場及びこれらに付設される廊下、便所、階段等及びその施設をいい、管理人の居宅等一般の住宅と同様の使用状態にあるもの、店舗、営業用貸室等は含まれない。
  • 総務省通知(平成18年4月1日都道府県知事あて総務事務次官通知)
    「地方税法、同法施行令、同法施行規則等の改正について」(抜粋)
    地方税の減免措置については、地方税法の規定に基づき、条例の定めるところによって行うことができるが、各地方団体にあっては、当該措置が特別な事由がある場合に限った税負担の軽減であることを踏まえ、適正かつ公平な運用に十分配意すること。
    とりわけ公益性を理由として固定資産税の減免を行う場合には、最近の裁判事例において、朝鮮総連関連施設に関する福岡高裁判決(平成18年2月2日)などのように、減免対象資産の使用実態やその公益性判断が問題とされたものがあったことも踏まえ、減免対象資産の使用実態を的確に把握した上で、公益性の有無等条例で定める要件に該当するかを厳正に判断すること。
  • 総務省通知(平成21年4月1日都道府県知事あて総務事務次官通知)
    「地方税法、同法施行令、同法施行規則等の改正について」(抜粋)
    地方税の減免措置については、地方税法の規定に基づき、条例の定めるところによって行うことができるが、各地方団体にあっては、当該措置が特別な事由がある場合に限った税負担の軽減であることを踏まえ、適正かつ公平な運用に十分配意すること。
    公益性を理由として減免を行う場合には、公益性の有無等条例で定める要件に該当するかを厳正に判断すること。
    特に、朝鮮総連関連施設に対する固定資産税の減免措置については、最近の裁判事例において、地方団体の判断に基づく減免措置が取り消された例があったことも踏まえ、減免対象資産の使用実態等について具体的かつ厳正に把握した上で、更に適正化に努めること。
(2) 当該建物の減免について

税務部固定資産税課(以下「監査対象課」という。)では、平成12年6月20日付けで民団船橋支部から提出された減免申請書(納税義務者欄には個人名と外8名と記載されている。)を受理し、書面審査により、平成12年6月30日付けの税務部長専決の決裁「固定資産税・都市計画税の減免について」で、減免理由を「民団船橋支部が使用していて、集会所の用に供している固定資産の為」とし、減免の根拠を「市税条例第71条第1項第4号、集会所の用に供している固定資産」として、当該建物全部の減免を決定し、同日付けの「固定資産税・都市計画税減免決定通知書」で、納税義務者へ通知し、以後、平成18年度まで当該建物全部を減免している。
監査対象課では、平成18年4月1日付けの総務省通知を受けて、固定資産税等の減免に係る事務の見直しを行い、平成18年5月に取扱要領を定め、取扱要領に基づき、民団船橋支部へ「固定資産税・都市計画税の減免に係る現況報告書」及び「町会・自治会館及び集会所の利用状況報告書」の提出を求め、平成18年7月6日に受理した。
平成18年7月28日に当該建物の現地調査を実施し、平成18年8月2日付けの税務部長専決の決裁「町会・自治会館及び集会所の減免に対する現地調査の実施について(報告)」で、調査結果が報告されている。また、平成18年8月24日付け税務部長専決の決裁「韓国会館(集会所)に対する減免の適用変更について」では、現地調査の結果、当該建物の一部(1階部分50.74平方メートル)が店舗として使用されており、減免事由(集会所として利用)に該当しないとして、減免に該当する床面積の変更及び平成18年度の固定資産税等の課税額を決定し、平成18年9月22日付けの「固定資産税・都市計画税減免決定通知書(平成18年度第3期更正)」で、納税義務者へ通知している。
平成19年度以降の当該建物の減免手続きは、取扱要領により、減免対象部分(以下「当該施設」という。)が「マンションの集会所等に供している固定資産」等、用途・契約期間等明確なものについては、前年度に減免し、当該年度も引き続き減免事由に変更がない場合は、当該年度の減免申請書の提出を要しないものとし、また、減免の決定通知は、当該年度の納税通知書に減免額を記載することをもって通知に代えるとして処理されており、現在に至っている。
なお、平成21年度の当該建物の減免に係る処理年月日は、次のとおりである。

  • 平成21年3月31日 価格の決定
  • 平成21年4月1日  課税台帳への登録及び公示
  • 平成21年4月6日  納税通知書の送付(平成21年4月30日納期限)
(3) 当該建物について

当該建物は、船橋市本町4丁目1585番地の土地に昭和48年2月に建築された鉄骨造陸屋根4階建、総床面積175.49平方メートルの建物である。
1階の階段入口横には「在日本大韓民国民団千葉県船橋支部」、「在日本大韓民国婦人会千葉県船橋支部」の各表札が掲げられ、1階の店舗部分(50.74平方メートル)を除いた2階、3階及び4階(合計124.75平方メートル)が取扱要領に定める集会所の用に供する固定資産として減免されている。2階は事務室、和室、トイレ、湯沸かし室からなり、3階は40名程度が利用できる会議室で、椅子、机などが備えられ、4階は、階段部分が該当すると思われる。
所有者は、民団船橋支部が法人格を有していないため、当該建物完成時の民団船橋支部の支団長他8名の共有として、昭和49年6月に所有権保存登記がなされており、現在まで所有権の異動はない。
当該施設の運営は、民団船橋支部が運営しており、職員は民団船橋支部がパート職員として雇用した者が事務室で勤務している。
当該施設の利用の状況は、主に、韓国語講座、その他に、民団船橋支部の運営委員会、老人会、婦人会、催事などに利用され、主な利用者は、韓国語講座の日本人受講者のほか、在日韓国人などであり、利用日は原則として月曜日から金曜日までで要望があれば土曜日と日曜日も利用でき、利用時間はおおむね午前9時から午後9時までである。
韓国民団会館使用規則(以下「民団規則」という。)によれば、当該施設の利用者及び利用範囲を、「当会館の利用は、在日韓国人は勿論のこと、近隣の日本人及び在日諸外国の人達のコミュニティーの場として、万一の災害等の避難場所として広く開放するものである。したがって、当会館が開館されている間は、どなたでも自由に利用することが出来、無料で利用できる。」とし、政治的、宗教的な集会及び営利を目的とした集会等の使用はできないなどと規定している。

2 判断
(1) 市長裁量について

固定資産税の減免については、税法第367条において、「市町村長は、その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免できる。」として、条例を根拠に固定資産税の減免ができるとされ、市税条例第71条第1項は、「市長は、次の各号のいずれかに該当する固定資産のうち、市長において必要があると認めるものについては、その所有者に対して課する固定資産税を減免することができる。」と規定している。
また、税法第367条の「その他特別の事情がある者」の範囲は、公益上の必要がある者も含まれると解され、市税条例第71条第1項第2号は、「公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く。)」とし、同条同項第4号では「前3号に定めるもののほか、特別の事由があるもの」として、公益上の必要性の範囲を市長裁量としている。
固定資産税逐条解説では、「その他特別の事情がある者とは公益上の必要があると認められる者も含まれ、公益上の必要があるかどうかは、当該市町村において自主的に判断すべき」としている。
そして、その裁量の範囲については、福岡高裁判決(平成18年2月2日)では「租税法律主義のもと、租税法領域での課税庁の処分に自由裁量は認められず、法規裁量の範囲内で認められるものであり、固定資産税の減免事由についても同様である」と判示されている。
請求人は、民団船橋支部は、社会教育法第42条に規定する公民館類似施設で、その目的達成には、社会教育法第20条に準じて各種事業を実施する必要があるところ、専ら在日韓国人が利用するもので、一定地域内の住民に韓国語、韓国文化など教育の機会を提供する施設とはいえないと主張しているが、本市では、取扱要綱及び取扱要領により、市税条例第71条第1項第4号の「特別の事由があるもの」の認定基準を定め、公益上の必要があると認められる固定資産を規定し、減免をしているものである。
当該建物の減免は、上記に則して法令等に照らして個別、具体的に、減免事由に該当すると判断したものであるから、市長が、当該建物の一部を集会所と同等としたことは、法規裁量の範囲内と認められる。

(2) 公益上の判断について

当該建物の減免事由は、(2)(1)で記述したように、「特別の事由があるもの」として、市税条例第71条第1項第4号及び取扱要綱第3条別表第4号該当の2に基づき行われたもので、取扱要領の認定基準により、当該建物の一部がマンションの集会所と同等と判断されている。
取扱要領の認定基準は、「特別の事由があるもの」を、「個々の事情により判断されるが、公益上の必要があると認められる固定資産等で社会通念上課税することが明らかに不合理であるものに限るものである。」としており、本件集会所を公益上の必要があると画一的に認めたものではない。当然のことながら、「特別の事由があるもの」は「個々の事情により判断される」として、減免事由の存否である公益上の有無は、個々の事情を勘案し施設内容や利用状況等に着目して判断されるべきと考えられる。
そこで、当該施設が、集会所と同等の施設に該当し、公益性があるか否かについて、施設内容及び利用状況等から検討する。
ⅰ 法令上、集会所の定義について特段の定めはなく、本市では、マンションや団地、農家組合などの施設で、施設における広さや形態、備品類など、集会施設としての機能を有し、特定の者だけでなく誰もが利用し得る公開された施設を集会所としている。
ⅱ 当該建物の内容について
ア 建物は、1階に店舗(減免非該当)、2階に事務室、和室、トイレ、湯沸かし室、3階には40名程度が利用できる会議室があり、集会所としての機能が整っている。
イ 所有者は、民団船橋支部が法人格を有していないため、当該建物完成時の民団船橋支部の支団長他8名の共有として、昭和49年6月に所有権保存登記がなされており、現在まで所有権の異動はない。
ウ 当該施設の運営は、民団船橋支部が運営しており、職員は民団船橋支部がパート職員として雇用した者が事務室で勤務している。
エ 民団規則には、当該施設の利用は、在日韓国人は勿論のこと、近隣の日本人及び在日諸外国の人達のコミュニティーの場として、万一の災害等の避難場所として広く開放するものであるとし、当該施設が開館されている間は、どなたでも自由に利用することが出来、無料で利用できると記載されている。そして、政治的、宗教的な集会及び営利を目的とした集会等の使用はできないと規定されている。
オ 当該施設の利用は、利用者が口頭で申し込み、職員が口頭で利用許可を承認しており、開館日は、原則として月曜日から金曜日で、要望があれば土曜日と日曜日も使用させ、利用時間は、午前9時から午後9時までとしている。なお、施設使用料については、韓国語講座の受講料としての実費徴収分を除き、無料としている。
カ 当該施設の利用実績は、韓国語講座、老人会の集い、支部運営会などで、主な利用者は、韓国語講座の日本人受講者及び船橋市・八千代市・習志野市・鎌ヶ谷市の在日韓国人などである。
なお、平成21年度の当該施設の利用状況を裏付ける資料提出を監査対象課へ求めた結果、平成21年11月10日付けで、民団船橋支部から市長あてに「固定資産税・都市計画税の減免に係る現況報告書」が提出され、平成18年度当時と同様の利用状況であった。
以上、当該施設の内容、利用状況及び利用目的などから総合的に判断すれば、比較的広範囲な地域の住民を対象として、住民福祉の向上、教養文化の向上等に寄与する施設であると認められ、利用の形態が集会所と同等の施設であり、公益性を有しているとする市長の判断は、妥当性があるものと認められる。
請求人は、請求人の陳述において一番重要なところとして、「税法第343条第1項は、固定資産税の納税義務者を固定資産の所有者と定め、同条第2項は、この固定資産の所有者を土地又は家屋については登記簿等に所有者として登記又は登録されている者をいう旨定めている。しかしながら、民団船橋支部に対する調査は、本来、登記簿上の所有者に対して行うものであるにもかかわらず、間借りしているに過ぎない民団船橋支部に対して行っている。これは税法第343条の規定に違反するものである。」と主張しているが、当該施設に対する減免措置は、上記のとおり、施設内容や利用状況等に着目して、減免事由の存否である公益上の有無を個別、具体的に判断しているものであり、請求人の主張には理由がない。

(3) 当該建物の調査について

平成12年度より建物全部に減免が適用されていた当該建物については、総務省通知に基づく見直しが行われ、平成18年7月28日に現地調査が実施されており、減免に該当するか否かについて、用途の異なる部分ごとに一定の判断がなされ、集会所として認められなかった部分について、当該年度から固定資産税等が課税されている。平成21年度において、当該建物に対する調査は実施されていないが、現地調査5ヶ年計画により定期的に実施されることが予定され、取扱要領には、必要に応じ「固定資産税・都市計画税の減免に関する現況報告書」の提出を求め、その報告内容に確認の必要があると認めたものについては、速やかに現地調査を実施すると規定されていることなどから判断すると、客観的証拠による裏付けがやや薄弱ではあるが、違法、不当な措置とは言えない。

3 結論

以上のことから、本件請求は理由がないものとして、主文のとおり棄却する。
なお、本件請求に関しては、取扱要領で定める「減免申請書の提出を要せず継続して減免を適用している物件」のうち、少なくとも本件請求で問題とされ、疑義の生じるおそれのある「集会所と同等」としている施設などに対しては、調査頻度を増やすなどの見直しを図り、総務省通知の趣旨を鑑み、厳正かつ、公平、適正な事務手続きに努められるよう要望するものである。

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