住民監査請求監査 監査結果本文(平成20年9月8日)

更新日:平成28(2016)年2月21日(日曜日)

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監査結果本文

船橋市監査委員告示第10号
地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条第1項の規定に基づく、船橋市職員措置請求について監査を実施したので、同条第4項の規定により、その結果に関する通知を公表する。
平成20年9月8日
船橋市監査委員 安田雅行
船橋市監査委員 増田尚功
船橋市監査委員 安藤のぶひろ
船橋市監査委員 七戸俊治

第1 請求人

住所・氏名 省略

第2 請求の受理

平成20年7月9日付けで提出のあった本件措置請求については、法第242条の要件を具備しているものと認め、平成20年7月9日に受理した。

第3 監査の実施

1 請求の要旨(措置請求書の原文のとおり)

  1. 船橋市長は平成19年度千葉朝鮮学園振興協議会負担金として588,000円を「千葉朝鮮学園振興協議会」に平成19年12月26日支払った。(証1)
  2. 船橋市長は千葉市花見川区浪花町965にある「準学校法人千葉朝鮮学園」が設置した「千葉朝鮮初中級学校」に対し、船橋市に在住する生徒数に応じて負担金として支出しているが、実際の支払い先は船橋市を会長市とした「千葉朝鮮学園振興協議会」である。(証2)
  3. 平成19年2月19日付け「A塾」の公開質問状の「3、各種学校として助成金を受け取るための用件。」の回答として、船橋市長は「各種学校単体への助成金の交付は行っておりません。」とした。(証3、4)
  4. 「千葉朝鮮学園振興協議会」について
    平成20年3月21日に、「A会」A氏が船橋市役所の受付にて「千葉朝鮮学園振興協議会」を尋ねたら、分かりませんとの返答。
    また、船橋市教育委員会においても、看板、机等は一切なく、職員も実態がないとの答弁であった。(証5)
    この「千葉朝鮮学園振興協議会」に属する鎌ヶ谷市では、「千葉朝鮮初中級学校」に在籍する生徒がいるが、財政難を理由に平成20年度からの負担金支出を辞め、それに伴い、平成20年4月9日に「千葉朝鮮学園振興協議会」を脱会する旨、会長市である船橋市教育委員会に脱会手続きを伺うも、電話のみの脱会届けで書類等の提出は一切いらなかった。(証6)
    我々市民の税金を預かり各自治体の市長の決済を行う支出に対して、脱会手続きは市長印が押印された書類は必要なく、電話だけで済む協議会である。
    これをもってしても、独立行政法人でもない「千葉朝鮮学園振興協議会」は、実態のない架空の団体である。
  5. 平成20年2月13日付け「A会」の公開質問状「5、「千葉朝鮮学園振興協議会」への教育助成金支出の法的根拠」の回答として、「市では特に定めてはいません。ただし、私立学校振興助成法第16条では、専修学校や各種学校を設置する準学校法人に対して、助成することができるとされています。その趣旨に沿って船橋市においては、千葉朝鮮学園振興協議会会則第7条に基づき、負担金を支出しています。」とある。(証7、8、9、10)
    「私立学校振興助成法」では学校法人である各種学校に交付するとしているが、船橋市長が支払っている先は、「準学校法人千葉朝鮮学園」ではなく、船橋市を会長市とした「千葉朝鮮学園振興協議会」であり、「私立学校振興助成法」に基づかない船橋市長の「千葉朝鮮学園振興協議会」への負担金支出は違法である。
    また、実態のない「千葉朝鮮学園振興協議会会則」は無効であり、法的効力はない。
    これらの行為は最終権限者である船橋市長、支出負担行為に責務のある教育委員会課長ほか担当職員がその責務を怠ったと言うほかなく、その結果船橋市に損害をもたらした。
    よって監査委員は、船橋市長に対し、次のとおり勧告することを求める。
    「船橋市長は588,000円を船橋市に返還すること。また平成20年度の千葉朝鮮学園振興協議会への公金支出をやめること。」

2 監査対象事項

請求書に記載されている事項及び事実を証する書面並びに請求人の陳述内容から、監査の対象事項は「船橋市が、千葉朝鮮学園振興協議会(以下「協議会」という。)に対し、平成19年度に支出した負担金が、違法又は不当な公金の支出であるか否か。」及び「協議会に対し、平成20年度に支出する予定の負担金が、違法又は不当な公金の支出であるか否か。」とした。

3 監査の方法

監査は、次のとおり実施した。

1 請求人の証拠の提出及び陳述

平成20年7月30日、請求人に対し、法第242条第6項の規定に基づき、証拠の提出及び陳述の機会を与えた。

2 関係職員の陳述

平成20年7月30日、教育委員会学校教育部参事(学務課長)から陳述の聴取を行った。

3 関係する職員の事情聴取

本件監査の対象となった書類を調査するとともに、平成20年7月30日に次の職員から事情聴取を行った。
教育委員会学校教育部長、教育委員会学校教育部参事(学務課長)、学務課副主幹(就学助成係長)、学務課副主査。

第4 監査の結果

1 主文

本請求について、監査委員は、合議により次のとおり決定した。
本件請求については理由がないものとして棄却する。
以下、その理由について述べる。

2 理由

1 事実関係
(1) 千葉朝鮮初中級学校について

千葉朝鮮初中級学校(以下「千葉朝鮮学校」という。)は、昭和40年12月に千葉県知事より準学校法人千葉朝鮮学園(以下「千葉朝鮮学園」という。)が認可を受け設置された、学校教育法(昭和22年法律第26号)第134条に規定する各種学校である。
設立の目的は、「学校教育法に基づき本校に入学する在日朝鮮人子女に対し、初等・中等の普通教育を施し、朝鮮人として必要な教養をかん養し、併せて朝日両国民の親善に寄与しうる人材を育成する。」こととされ、県内唯一の朝鮮学校である。
日本の小学校に当たる6年制の初級部及び日本の中学校に当たる3年制の中級部からなり、入学資格は、初級部は、学齢に達した朝鮮民族児童であり、中級部は、朝鮮民族の子女で、初級部を卒業した者又は相当年齢に達し、これと同等以上の学力を有すると認められた者で、県内の様々な市町から日本の義務教育段階に相当する児童生徒が通学している。
在籍児童生徒数は、平成19年5月1日現在、初級部59人、中級部34人の計93人であり、船橋市からは、初級部4人、中級部4人の計8人が通学している。
初級部の教育課程は、国語、社会、朝鮮歴史、朝鮮地理、算数、理科、日本語、音楽などの10課程、中級部の教育課程は、国語、朝鮮語文法、社会、朝鮮歴史、朝鮮地理、数学、理科、日本語、英語、音楽などの14課程とされている。

(2) 協議会について

協議会は、昭和58年4月に船橋市を含む関係10市で発足した任意団体である。
協議会の設置目的は、私立学校振興助成法(以下「助成法」という。)の趣旨にのっとり、千葉朝鮮学園振興協議会会則(以下「会則」という。)第2条の「千葉朝鮮学園の特殊性に鑑み、その振興を図ること。」とされ、行う事業については、同第3条に前条の目的を達成するため「1千葉朝鮮学園に対し助成を行うこと。」及び「2その他この協議会の目的達成上必要なこと。」とされている。
組織は、同第4条に「協議会の目的に賛同する各市町をもって組織する。」とされ、当初10市で発足したが、その後、千葉朝鮮学校に在籍する児童生徒が居所を有する関係市町が加入し、平成13年度より20市町となっている。協議会の会長は、発足時より船橋市長が就任しており、事務局も船橋市教育委員会学務課が担当している。
協議会の会計は、同第7条において、「協議会の経費は、会員の負担金その他の収入をもってこれにあてる。」とされ、負担金額は、会員市町人口(以下「人口区分割」という。)及び千葉朝鮮学校に在籍する人数(以下「在籍者割」という。)に応じて算定された合算となっている。
算定方法は、人口区分割は、前年4月1日現在の会員市町の人口を基準に、66,000円に10万人を超えるごとに同額を加算する(上限594,000円)とし、在籍者割は、前年5月1日現在の会員市町の児童生徒在籍者数を基準に1人あたり16,000円としている。
なお、会員市町に2年間連続して在籍者が存在しない場合、翌年度の負担金は人口区分割についても求めないとしている。
会員市町からの負担金全額が、協議会から千葉朝鮮学園に補助金として交付されており、平成17年度から19年度は下表のとおりである。

負担金 (単位:円)
年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
負担金総額 4,884,000 4,386,000 4,420,000
本市分 716,000 636,000 588,000
割合(%) 14.7% 14.5% 13.3%
(3) 協議会の千葉朝鮮学園に対する補助金の事務手続について

協議会では、毎年8月頃に会員市町による代表者会議を開催し、千葉朝鮮学園への補助について協議を行い、会員市町の負担金額を決定している。
平成19年度の代表者会議開催から、千葉朝鮮学園からの実績報告書提出までの事務手続は、次のとおりである。

平成19年8月28日 代表者会議を行い補助金額442万円を決定
平成19年9月18日 会員市町に按分した負担金額を通知※船橋市分58万8千円
平成19年9月27日 千葉朝鮮学園が、協議会に補助金交付申請書、事業計画書及び収支予算書を提出※交付申請額442万円
平成19年10月10日 会員市町に負担金の請求書を送付※船橋市分58万8千円
平成19年12月7日 船橋市は、協議会に負担金58万8千円を支出
平成19年12月10日 千葉朝鮮学園に補助金等交付決定通知書を送付※交付決定額442万円
平成19年12月17日 千葉朝鮮学園は、協議会に補助金等交付請求書を提出※請求額442万円
平成19年12月26日 請求書を受け補助金442万円を交付千葉朝鮮学園は、協議会に領収書を発行
平成20年1月21日 会員市町に負担金受領及び補助金交付完了を通知
平成20年5月27日 千葉朝鮮学園は、協議会に補助金実績報告書、収支計算書及び貸借対照表を提出

2 判断
(1) 本件負担金について

負担金については、法令上に定められて支出する他に、任意に各種団体を地方公共団体が構成しているとき、その団体の必要経費に充てるため構成各団体が取り決められた費用を支出する場合がある。
協議会は関係市町により構成された任意の団体であり、協議会の会則に基づく負担金の支出であることから、本件の支出は、後者にあたるものと判断され、市の財務規則等に基づき適正な手続により支出されている。
請求人は、本件の支出が助成法に基づかないのは違法であると主張するが、上記のとおり助成法ではなく協議会会則に基づき、会員市町の負担金として支出されているものであり、助成法に基づかないことをもって、負担金の支出が違法となるわけではない。

(2) 協議会について

請求人は、協議会そのものが実態のない架空の団体であり、会則も無効であると主張するが、協議会の目的は、千葉朝鮮学園の振興を図ることであり、事務局はその目的を達成するための補助を行うものであるから、本市の教育委員会学務課の職員が兼務することで足りると考えられる。併せて、前述の「(1)(3)協議会の千葉朝鮮学園に対する補助金の事務手続について」でも述べたように、協議会として必要な事務を遂行し、実態を備えていることも認められる。
また、市が直接千葉朝鮮学園に対して補助するのではなく、協議会を通じて補助する方式をとっていることについては、県内の広域から児童生徒が通学してくる、県内唯一の朝鮮学校である千葉朝鮮学校を設置する千葉朝鮮学園に対し、会員市町が協議会方式を取り、人口区分割及び児童生徒の在籍者割で応分の負担をすることは、在籍する児童生徒数が少ない市町も参加しやすく、会員市町間の連絡も密となるなど効率的であり、会員市町にとって有益であると認められる。

(3) 負担金支出額について

負担金の額は、会則の負担金等に関する内規で、人口区分割及び在籍者割に応じて算定された合算額としている。算定方法は、人口区分割は、前年4月1日現在の会員市町の人口を基準に、66,000円に10万人を超えるごとに同額を加算するとし、在籍者割は、前年5月1日現在の会員市町の児童生徒在籍者数を基準に1人あたり16,000円としている。
平成18年4月1日の本市人口は、572,763人で、平成18年5月1日の本市から千葉朝鮮学校への通学者は、12人であることから、上記により算定すると、人口区分割の額は、396,000円、在籍者割の額は、192,000円で、合算額588,000円が平成19年度の本市負担金額となる。
本市における、平成17年度から19年度までの市立小中学校通学児童生徒1人あたりの教育費の平均額は、68,028円(人件費及び学校建設費を除く教育費の総額から算出)であり、本市から千葉朝鮮学校へ通学する児童生徒1人あたりの平成17年度から19年度までの負担金の平均額は、41,277円となった。このことから、本市が支出する負担金額は、妥当な範囲内のものと判断できる。

(4) 本件負担金支出の適法性について

協議会の事業である千葉朝鮮学園への補助については、日本における義務教育段階の朝鮮民族児童生徒に対し、日本人児童生徒と同様に基礎的教育を受ける機会が与えられなければならないところ、千葉朝鮮学校を設置する法人の財務基盤が脆弱であり、千葉県からも補助が行われていることから、公益性、補助の必要性が認められるところである。
なお、千葉県は、昭和60年から千葉朝鮮学園に対し補助金を交付し、平成17年度から19年度の期間は、いずれも562万円交付している。
また、千葉朝鮮学園の財務内容は、資金収支計算書等によると、自主財源比率が25%程度と財政基盤が脆弱であり、在籍者の減少から、過去3年の授業料収入の割合を見ても下表のとおり年々減少している。

補助金(単位:円)
年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
歳入合計額 52,393,843 56,297,170 54,540,814
授業料収入 13,054,000 11,865,500 10,870,500
割合(%) 24.9% 21.1% 19.9%
3 結論

以上のことから、協議会に対し平成19年度に支出した負担金が、違法又は不当な公金の支出であるとは認められない。また、協議会に対し平成20年度に支出される予定の負担金が、違法又は不当な公金の支出であるとは認められない。

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