監査結果本文(平成17年3月18日)

更新日:平成25(2013)年3月15日(金曜日)

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監査結果本文

監査委員告示第6号
地方自治法第242条第1項の規定に基づく、船橋市職員措置請求(特別職に対する調整手当支給に関する件)について監査を実施したので、同条第4項の規定により、その結果に関する通知を公表する。
平成17年3月18日

船橋市監査委員

  • 堀内清彦
  • 山澤拓爾
  • 池沢敏夫
  • 佐原正幸

第1 監査の請求

1 請求人(略)

2 請求の要旨(措置請求書の原文のとおり)

  1. 地方自治法第204条第3項では給料、手当及び旅費の額並びに支給方法は、条例で定めなければならないとされているが、船橋市(以下「本市」とする)の特別職に対する調整手当についての規定は特別に明確化されていない。国家公務員に支給されている調整手当に準じるものとすると、調整手当のもつ本来の性格はその支給範囲に当然に制約があり地方自治体の特別職には適応されない。普通地方公共団体の特別職には本来の職務の特殊性に基づき、個々具体的に条例で定めるべき手当を明確な規定なく特別職に対して支給することは、違法性または極めて不当性がある。
  2. 地方公務員法第3条により、地方公務員を特別職と一般職とに分ける。特別職の身分の取得方法は一般職員と異なり、その職務内容や職務専念義務も一般職員とは異なる。そのため労働の対価として支払われる給料も、それらを勘案し、地域性や民間の例を考慮して、一般職員の給料表とは別に、条例により特別職の給料を定めている。
    本市の条例による特別職の給与は個別・具体的に定められたものであり、調整手当を支給することにより国との均衡を実現する必要性はない。
  3. 平成16年9月10日の「公務員の給与改定に関する取り扱い」についての閣議決定とそれに基づく総務大臣談話、総務事務次官通達、千葉県総務部長通達の一連の指導の中で、総務大臣が地方公共団体の財政状況について触れ、「給与水準等が不適正な団体にあっては、給与制度・雇用の見直しを行うなど、必要な是正措置を併せて講ずるべき」としている。
    また、長年にわたって総務事務次官通達及び千葉県総務部長通達で調整手当の是正を指導している。
  4. 昭和43年10月17日の「特別職の職員の給与について」の自治省行政局長通知でも手当について「個々具体的に条例で定めるべきものとされている知事(市町村長)、副知事(助役)、出納長(収入役)に対して支給することはきわめて不適当である」としているが、本市の条例には具体的に定められていない。また、同通達では「支給できる給与の種類および額について具体的に規定し、その明確化を図ること」とされている。
  5. 本市は、長年にわたり特別職に調整手当を支給しており、その金額は平成15年度では6,308,645円、5年間に換算すればおおよそ3千万円以上となる。本市の経常収支比率は高く、なかでも人件費は高い比率を占め、財政構造の弾力化を失わせており、財政の健全化が必要である。

以上の理由によって特別職に対する調整手当の支給は違法性または不当性のある公金の支出にあたる。
したがって、時効による免責日以降から今日に至るまで特別職に支払ってきた調整手当相当金額及び法定利息相当分の返還を求めるとともに、今後、特別職に対する調整手当支給の規定を廃止し、違法な支出をやめる措置を求める。

3 請求の受理

監査の実施に当り、本件措置請求書が要件に適合しているかどうか審査を行ったところ、要件を具備しているものと認め、平成17年1月17日付けでこれを受理した。

4 請求人の証拠の提出及び陳述

法第242条第6項の規定に基づき、平成17年2月18日、請求人に対して、証拠の提出及び陳述の機会を与えた。

証拠の提出

新たな証拠としての次のとおり提出があった。
昭和47年9月25日付け自治給発第37号通知の写し
平成元年11月2日付け自治給第52号通知の写し
市町村財政実態資料(茨城県総務部地方課)中第3表の写し

陳述における主な主張の要旨

特別職の調整手当の規定が不備であり、特別職に対し調整手当を支給することは違法かつ不当である、などとの陳述があった。

第2 監査の実施

1 監査の対象事項

本件措置請求書に記載された請求の趣旨及び請求人の陳述の内容から判断して、監査の対象事項を次のとおりとした。

  1. 地方自治法第204条第3項では給料、手当及び旅費の額並びに支給方法は、条例で定めなければならないとされているが、船橋市の特別職に対する調整手当についての規定は特別に明確化されていない。
  2. 特別職の職務内容や職務専念義務も一般職員とは異なる。そのため労働の対価として支払われる給料も、地域性や民間の例を考慮して、一般職員の給料表とは別に、条例により特別職の給料を定めている。本市の条例による特別職の給与は個別・具体的に定められたものであり、調整手当を支給することにより国との均衡を実現する必要性はない。
  3. 長年にわたって総務事務次官通達及び千葉県総務部長通達で調整手当の是正を指導している。
  4. 昭和43年10月17日の「特別職の職員の給与について」の自治省行政局長通知でも手当について「個々具体的に条例で定めるべきものとされている知事(市町村長)、副知事(助役)、出納長(収入役)に対して支給することはきわめて不適当である」としているが、本市の条例には具体的に定められていない。また、同通達では「支給できる給与の種類および額について具体的に規定し、その明確化を図ること」とされている。
  5. 本市の経常収支比率は高く、なかでも人件費は高い比率を占め、財政構造の弾力化を失わせており、財政の健全化が必要である。

以上の理由によって特別職に対する調整手当の支給は違法性または不当性のある公金の支出にあたる。
なお、請求人が言う特別職には、市長、助役、収入役、常勤の監査委員が含まれるが、本請求と同一の請求人から同日付で措置請求書(市長に対する調整手当支給に関する件)が提出されていることから、ここでいう特別職は助役、収入役、常勤の監査委員とした。

2 監査の方法

  1. 関係職員の陳述
    平成17年2月18日に、法第242条第7項の規定による関係職員(職員課長、職員課副主幹)の陳述を実施した。
    〔陳述の主な要旨〕
    別に提出された船橋市職員措置請求(市長に対する調整手当支給に関する件)と同趣旨であるとの陳述があった。
  2. 資料の提出及び事情聴取
    関係部課から関係書類の提出を求め、平成17年2月18日に次の職員から事情聴取を行うなどをして、監査を実施した。
    総務部長、職員課長、職員課副主幹、職員課主査

第3 監査の結果

1 事情聴取等の結果は、次のとおりである。

  1. 本市の条例について
    本市の常勤特別職の調整手当を規定する特別職の職員の給与等に関する条例は、第1条において地方自治法第204条の規定を引用しており、法第204条の2の規定に準拠している。このことから調整手当の支給については特段の違法性も見あたらず、法第204条第3項に基づき条例に規定して支出する手当であり、不当にもあたらない。
  2. 国の特別職に対する調整手当の支給について
    この調整手当は、国においても特別職の職員の給与に関する法律第2条及び第7条の2で内閣総理大臣等の特別職に対して一般職の例により支給することが規定されており、昭和43年自治給第94号自治省行政局長通知一(1)の中で、国が特別職に支給する手当については、国との均衡上、地方公共団体においても条例に支給する手当の種類及び額を具体的に規定して市長等特別職に支給することは差し支えないことが明記され、国が特別職に支給している手当として調整手当が記されている。
    近隣市においても、本市と同様に市長等特別職に調整手当を支給しており、均衡を図る必要がある。
  3. 給与改定に関する総務事務次官通知について
    一般職が近隣市との均衡を図ることは、地方公務員法第14条の情勢適応の原則、同法第24条の給与等勤務条件の基準に基づくものである。
    なお、船橋市は、財政状況等を勘案して平成15年4月に支給率を10%から9%に引き下げた。
    給与の適正化については引き続き推進する。
  4. 昭和43年自治給第94号自治省行政局長通知と本市条例について
    特別職の職員の給与等に関する条例第9条の2第2項において「調整手当の月額は、給料月額に100分の9を乗じて得た額とする。」と規定している。
  5. 財政の健全化について
    人件費の比率については、財政健全化プランの推進により適正化を図る。
  6. 調整手当支給率について
    国は、特別職の職員の給与に関する法律第2条及び第7条の2に基づき、内閣総理大臣等の特別職に対して一般職の例により支給することが規定されており、本市においては支給額を条例で定め、国と同様の取り扱いとしている。
    近隣市においても、本市と同様に市長等特別職に概ね10%程度の調整手当を支給しており、均衡を図る必要があることから、一般職と同様9%の支給率としている。

2 判断

  1. 本市の条例について
    法第204条は普通地方公共団体の長その他の常勤の職員に対する給料、旅費及び諸手当支給に関する規定であって、普通地方公共団体の職員である限り、特別職であると一般職であるとを問わず本条の適用を受けることとなり、特別職も本条の適用を受けることは当然のことである。
    本市はこの規定を受け、特別職の職員の給与等に関する条例(昭和31年条例第14号)を定めている。同条例第9条の2において市長等に調整手当を支給し、その額も定めている。これは法の趣旨に則ったものであり、法に違反するものではない。
  2. 支給額について
    調整手当は、国においても特別職の職員の給与に関する法律第2条及び第7条の2で内閣総理大臣等の特別職に対して一般職の例により支給することが規定されている。本市において、市長等に支給する調整手当の額が給料月額の9%となっていることは、一般職の支給率と同率としたもので、これは国における特別職の例にならったものであり、しかも支給額についても明文化したものであり、違法、不当な点はない。
  3. 給与改定に関する総務事務次官通知について
    総務事務次官通知「地方公務員の給与改定に関する取扱いについて」は、地方公共団体において、国家公務員の給与改定に伴い、地方公務員の給与改定を行うに当たって、留意すべき事項を挙げ適切に対処するよう要請されたものである。
    しかしながら地方公務員法第24条第3項において、「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」、また、同条第6項において、「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。」とあり、全く地方公共団体に裁量の余地が無いわけではなく、本市においては、調整手当の支給は(1)で述べたとおり条例に基づくものであり違法、不当な点はない。
  4. 特別職に対する調整手当の支給について
    昭和43年10月17日付け自治給第94号自治省行政局長通知によれば、「一 特別職の職員の給与の内容の明確化について (1)常勤の特別職の職員に支給できる諸手当の範囲」の前段で、地方自治法第204条の規定により各種手当の支給ができるものとされているが、これらの手当については、各手当の持つ本来の性格からその支給の範囲において当然に制約のあるものであるとして、管理職手当を支給している場合は支給廃止の措置を講ずるよう求めている。
    一方後段では、「なお、管理職手当以外の手当についても、国家公務員の特別職の職員に支給されている手当(調整手当または暫定手当、期末手当、寒冷地手当)に相当するものは、国との均衡上支給することは差し支えないが、それ以外のものについても支給を行っている地方公共団体については、上記管理職手当の場合と同様、その改善措置を講ずること。」としている。
    この通知からも、特別職に対し調整手当を支給することについては、なんら問題はない。
  5. 財政の健全化について
    財政の健全化については、行政の運営にあたって常に念頭におくべきことは当然のことではあるが、調整手当の支給は前記(1)で述べたとおり、違法、不当な点はない。

3 結論

以上のとおり、本措置請求は措置の理由がないものとして棄却する。

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