監査結果本文(平成17年3月18日)

更新日:平成25(2013)年3月15日(金曜日)

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監査結果本文

監査委員告示第5号
地方自治法第242条第1項の規定に基づく、船橋市職員措置請求(市長に対する調整手当支給に関する件)について監査を実施したので、同条第4項の規定により、その結果に関する通知を公表する。
平成17年3月18日
船橋市監査委員

  • 堀内清彦
  • 山澤拓爾
  • 池沢敏夫
  • 佐原正幸

第1 監査の請求

1 請求人(略)

2 請求の要旨(措置請求書の原文のとおり)

地方自治法第204条第1項では普通地方公共団体の長と、その補助機関たる常勤の職員などとを区別し、同条第2項の規定では、長に対し調整手当の支給を認めていない。
しかし、船橋市は市長に調整手当を支給している。
その金額は平成15年度では1,684,282円、5年間に換算すればおおよそ8,421,410円となる。
これは、あきらかに地方自治法に違反した、違法かつ不当な公金の支出にあたる。
したがって、時効による免責日以降から今日に至るまで市長に支払ってきた調整手当相当金額及び法定利息相当分の返還を求めるとともに、今後 市長に対する調整手当支給の規定を廃止し、違法な支出をやめる措置を求める。

3 請求の受理

監査の実施に当り、本件措置請求書が要件に適合しているかどうか審査を行ったところ、要件を具備しているものと認め、平成17年1月17日付けでこれを受理した。

4 請求人の証拠の提出及び陳述

法第242条第6項の規定に基づき、平成17年2月18日、請求人に対して、証拠の提出及び陳述の機会を与えた。

証拠の提出

新たな証拠としての次のとおり提出があった。
昭和47年9月25日付け自治給発第37号通知の写し
平成元年11月2日付け自治給第52号通知の写し
市町村財政実態資料(茨城県総務部地方課)中第3表の写し

陳述における主な主張の要旨

調整手当は、住所地を考慮せず勤務地を基準としているなど矛盾が多く、国においても見直す方向である、また、法第204条第2項で言う職員は常勤の職員であり、市長は常勤の職員ではなく違法性がある、などとの陳述があった。

第2 監査の実施

1 監査の対象事項

本件措置請求書に記載された請求の趣旨及び請求人の陳述の内容から判断して、監査の対象事項を次のとおりとした。
法第204条第1項では普通地方公共団体の長とその補助機関たる常勤の職員を区別し、同条第2項の規定では長に対して調整手当の支給を認めていない。
しかし、船橋市は市長に調整手当を支給している。これはあきらかに法に違反した、違法かつ不当な公金の支出にあたる。

2 監査の方法

  1. 関係職員の陳述
    平成17年2月18日に、法第242条第7項の規定による関係職員(職員課長、職員課副主幹)の陳述を実施した。
    〔陳述の主な要旨〕
    法第204条の第2項の規定により、本市は特別職の職員の給与等に関する条例で、常勤の特別職に対し各種手当を支払うことができるとなっているなど、調整手当の支給について違法性、不当性はないとの陳述があった。
  2. 資料の提出及び事情聴取
    関係部課から関係書類の提出を求め、平成17年2月18日に次の職員から事情聴取を行うなどをして、監査を実施した。
    総務部長、職員課長、職員課副主幹、職員課主査

第3 監査の結果

1 事情聴取等の結果は、次のとおりである。

  1. 法第204条について
    法第204条第2項では、第1項の職員に対し、調整手当を支給することができるとしており、普通地方公共団体の長も含まれている。また、同条第3項で手当の額を条例で定めることとしている。さらに、第204条の2において、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これを第204条第1項の職員に支給することができないと規定しており、法律に基づいて支給すべき手当の種類及び額を条例に規定することと解釈される。
  2. 本市の条例について
    本市の常勤特別職の調整手当を規定する特別職の職員の給与等に関する条例は、第1条において法第204条の規定を引用しており、法第204条の2の規定に準拠している。このことから調整手当の支給については特段の違法性も見あたらず、条例の規定に基づいた支出であり、不当にもあたらない。
  3. 国、近隣市等の調整手当支給について
    調整手当は、国においても特別職の職員の給与に関する法律第2条及び第7条の2で内閣総理大臣等の特別職に対して一般職の例により支給することが規定されており、昭和43年自治給第94号自治省行政局長通知一(1)の中で、国が特別職に支給する手当については、国との均衡上、地方公共団体においても条例に支給する手当の種類及び額を具体的に規定して市長等特別職に支給することは差し支えないことが明記され、国が特別職に支給している手当として調整手当が記されている。
    調整手当の支給率については、国は一般職の職員の例によることとしており、例えば都内特別区を勤務地とする特別職にあっては、一般職と同様給料の12%が調整手当の額となり、調整手当の支給されていない地域を勤務地とする特別職にあっては支給されない。しかし、国の特別職が調整手当の無支給地に勤務することは想定し得ない、つまり国の特別職は大都市に勤務する一般職の支給率と同じ支給率となっている。
    近隣市においても、特別職の調整手当は概ね国と同様の規定により一般職の支給率に準じており、一般職の支給率が近隣市との均衡上10%程度の支給としていることから、特別職の支給率が10%程度となっている。なお、船橋市は、財政状況等を勘案して平成15年4月に支給率を10%から9%に引き下げた。
    一般職が近隣市との均衡を図ることは、地方公務員法第14条の情勢適応の原則、同法第24条の給与等勤務条件の基準に基づくものである。

2 判断

  1. 法第204条について
    法第204条は、普通地方公共団体の長その他の常勤の職員に対する給料、旅費及び諸手当支給に関する規定であって、普通地方公共団体の職員である限り、特別職であると一般職であるとを問わず本条の適用を受けることとなるとの解釈(松本英昭「新版逐条地方自治法」学陽書房)が相当であり、市長も本条の適用を受けることは当然のことである。
  2. 本市の条例について
    本市は、法第204条の規定を受け、特別職の職員の給与等に関する条例(昭和31年条例第14号)を定めている。同条例第9条の2において市長等に調整手当を支給することとし、その額も定めている。これは法の趣旨に則った条例である。
  3. 市長に対する調整手当の支給について
    昭和43年10月17日付け自治給第94号自治省行政局長通知によれば、「一 特別職の職員の給与の内容の明確化について (1)常勤の特別職の職員に支給できる諸手当の範囲」の前段で、地方自治法第204条の規定により各種手当の支給ができるものとされているが、これらの手当については、各手当の持つ本来の性格からその支給の範囲において当然に制約のあるものであるとして、管理職手当を支給している場合は支給廃止の措置を講ずるよう求めている。
    一方後段では、「なお、管理職手当以外の手当についても、国家公務員の特別職の職員に支給されている手当(調整手当または暫定手当、期末手当、寒冷地手当)に相当するものは、国との均衡上支給することは差し支えないが、それ以外のものについても支給を行っている地方公共団体については、上記管理職手当の場合と同様、その改善措置を講ずること。」としている。
    この通知からも、市長に対し調整手当を支給することについては、なんら問題はない。
  4. 支給額について
    調整手当は、国においても特別職の職員の給与に関する法律第2条及び第7条の2で内閣総理大臣等の特別職に対して一般職の例により支給することが規定されている。本市において、市長等に支給する調整手当の額が給料月額の9%となっていることは、一般職の支給率と同率としたもので、これは国における特別職の例にならったものであり、支給額について明文化したものである。従って、違法、不当な点はない。

3 結論

以上のとおり、本措置請求は措置の理由がないものとして棄却する。

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