書道界を代表する船橋市出身・高木厚人さん
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書道界を代表する20人が新春に新作を発表する作品展「現代書道二十人展」に2012年から選出されている船橋市出身の書家・高木厚人さんは、2018年には日展の内閣総理大臣賞を受賞するなど、数々の功績を残している書家の一人です。今年、文化的価値の重要性が認められ国初の「登録無形文化財」に登録されることになった「書道」。その伝統を守っていくために、大学で学生の指導にあたるなど、文化維持のために尽力する高木さんにお話を伺いました。
書道が当たり前の環境で過ごす
のちに書家となる父・東扇氏が葛飾小学校で教師をしていたことから、高木さんは、船橋市で生まれ育ちます。両親とも書道をやっていたため、「夕食後はどの家庭でも書道をやるものだと思っていた」と、子どもの頃から身近にありました。しかし、中学生になると面白みを見出せなくなり、一時期書道を離れます。高校卒業後、自立したいと考えた高木さんは船橋市を離れ、父が稽古で通っていてゆかりのあった京都の大学へ進学を希望。父からの条件として父の同門であり、書家として文化勲章を受章するなど数々の功績を挙げた杉岡華邨氏のもとへ稽古に通うことになりました。
それでも書道の道に進むことは考えておらず、高校からずっと興味があった美術館勤務を目指していました。ある日、父が師事する日比野五鳳氏の稽古に同席したとき、「日比野先生が1文字直しただけで作品がガラッと変わるのを見て、文字の力のすごさ、書に対する可能性を感じた」と、書道の魅力に目を向けるようになりました。
自由がある“かな”に魅了されて
大学卒業後、杉岡氏に師事しながら専門学校・大学の講師などを経て、現在は大東文化大学の教授として学生の指導に当たっています。書道の中でも「かな」を専門としている高木さんは、「父が書いていたこともありますが、書き方に自由があるところに楽しさを感じました。かなには字間や行間などを揃えない“散らし書き”というのがあり、どういう形とするか、どこで改行するか、と“遊び”を入れられる面白さがあります」と魅力を語ります。
書道を楽しむ人を応援したい
「学生たちとのやりとりは刺激になりますし、素直に聞いてくれて成長を見られることが楽しみです」と教授としてのやりがいを話し、「今後は、多くの若い人たちの作品が並ぶ展覧会を作りたい」と次世代書家を後押しする機会を考えています。また、大東文化大学書道研究所の所長として書道文化の維持発展にも尽力しており、「日本人にとって長く大切にされてきた書道には、人を元気にする力がある。少しでも多くの人が書道を通じて幸せに生きられるのを手助けできれば」と語ります。
自身については「やりたいことはいくつかあって、今後は自分で俳句を詠んで書道作品にすることや、これまで見てきた先生方の作品の良さを伝えていきたいですね」と制作活動に意欲をのぞかせました。
高木さんの作品が展示されます
1月3日(月曜日)から開催する二十人展で、高木さんは「源氏物語」をテーマにした作品4点を展示します。ぜひ会場に足を運んで、新春にふさわしい伝統ある書道の世界をお楽しみください。
現代書道二十人展
開催期間:2022年1月3日(月曜日)~9日(日曜日)
会 場:日本橋高島屋S.C.
高木厚人さんの経歴
1953年生、船橋市出身。京都大学在学中の1975年に杉岡華邨に師事。現在、日展会員、日本書芸院副理事、千葉県美術会承認理事、奈良市杉岡華邨書道美術館館長、大東文化大学教授、同大学書道研究所所長、船橋市美術連盟顧問などを務める。
おもな受賞歴
2005年 第37回 日展 会員賞 受賞
2012年 現代書道二十人展メンバーに選出
2018年 改組 新第5回 日展 内閣総理大臣賞受賞