葛飾小の内田くるみさんが、読書感想文コンクールで文部科学大臣賞、県知事賞を受賞

更新日:平成27(2015)年2月2日(月曜日)

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 葛飾小学校6年生の内田くるみさんが、全国の小学校から149,951点もの応募があった第38回『てのひら文庫賞』読書感想文全国コンクールにおいて、低・中・高学年から1名のみ選ばれる“文部科学大臣賞(1位)”を受賞しました。
 また、内田さんは、第38回千葉県課題図書小中学校児童生徒読書感想文コンクールにおいても、“県知事賞(第1位)”を受賞しました。

第38回『てのひら文庫賞』読書感想文全国コンクール
書名 「心のおくりびと 東日本大震災 復元納棺師」(自由図書部門)
作品名「大切な絆 ―忘れないこと―」

第38回千葉県課題図書小中学校児童生徒読書感想文コンクール
書名 「武器より一冊の本をください。少女マララ・ユスフザイの祈り」
作品名「教育の力『マララから教わったこと』」

文部科学大臣賞を受賞した「大切な絆 ―忘れないこと―」の全文を掲載します。

大切な絆 ―忘れないこと―     千葉県 船橋市立葛飾小学校 内田くるみ

 ‶失っても…人は、その思い出とつながって生きていける、生きものなのです″
 人が死ぬということは、生きてきた証だ。私は、その最期の姿と遺族が別れる時を「最期の日」だと思っていた。しかし、この本を読み、思い出を継承する「始まりの日」だと気づかされた。このことを、教えてくれたのは、復元納棺師、笹原留衣子さんだ。
 私は、この本を読むまで「復元納棺師」という存在を知らなかった。復元納棺師―その仕事は、事故や災害などで傷ついた遺体を生前の姿に重ね合わせて復元し、棺に納めるまでのおごそかな儀式をとりおこなう、精神的にも過酷なものである。東日本大震災では、彼女が住む岩手県の多くの犠牲者のために、体力の限界まで最期の別れに立ち会った。被災地にボランティアとして入り、遺族と故人との思い出をつないだ彼女の記録は、どれだけの勇気を皆に与えたことだろう。
 彼女は、ホスピスの病棟で多くの「生死」を見てきた。故人の最期をきれいな表情に戻してあげたいという強い思いが、今の仕事を導き、それは遺族に心から寄り添えるものになったのだ。彼女の納棺は残された遺族の思い、これからの人生を一番に考え、故人に対する敬意、すべてを理解した上で復元する。それは大変な時間を要するのだ。そして納棺師として最も大切なことは「遺体の顔を創る」のではなく「眠っているような顔に戻す」ことだ。‶人の最期の姿は残された家族の今後を決める″まさにその通りだと思う。
 私は三年前、曾祖母の最期に立ちあった。重い病気で本当に苦しかったと思う。大切な誰かの苦しんだ姿が、その人の最期だとしたら、残された家族は悲しく辛い思い出が残ってしまう。私は、まるで眠っているかのような、きれいな最期の姿を今も覚えている。苦しみから解放され、生前のままの姿になったからこそ、「死」を受け入れ、前へ進むことができたのだと思う。残された家族は、どんなに悲しくても生きていかなければならないのだ。
 彼女の強い思いと「精一杯の支援」は、遺体安置所で少女を復元できなかった後悔から始まった。生後10日目のあかちゃん、母親、老若男女問わず、復元した故人の数は300名を超えたのだ。津波の傷跡は想像を絶するもので、遺族の中には収容が遅れ生前と全く違ったなきがらにとまどい、死を受け入れられない人もいる。守れなかった自分を責め、泣くことさえできない人もいる。彼女は遺族に寄り添い「元にもどす」という一心で復元するのだ。何度も写真を見ながら傷痕も修復し、まつ毛に至るまで決して妥協しない。そして自らの手で温めた故人の掌を遺族に渡すのだ。私はその心の優しさに本当に感動した。納棺師という仕事は人並はずれた強靭な体力、精神力の持ち主でなければ絶対にできない。現場での過酷さに心が折れそうになった時、彼女を支えてくれたのは、彼女が支えた遺族、復元した少女の祖母の魔法「優しさ」だった。祖母は、これからたくさんの悲しみに出会う彼女の両手に更なる勇気と強さを与えてくれたのだ。彼女が人前で思いを爆発させ、こんなに多くの涙を流したのはこの時だけだったのではないだろうか。でも、心の中では遺族に寄り添いながら、ずっと涙を流していたのだと思う。人と人とは支え合うことでつながっていけるのだ。彼女の「精一杯の支援」は、復元し思い出をつなぐこと。その支援のバトンは、これからの「心の復興」の一歩となる緩和ケア医まで広げることができた。そして彼女のとなりには、大切な婚約者を失った苦しみとむきあい、ボランティアを続けながら前に進もうとしている女性がいる。将来、復元納棺師という夢を叶えるために。
 人は、いつか必ず大切な誰かを失う時が来る。それは人生で最も辛いことだろう。この本を通して私が受け取ったメッセージは、私たちは、一人では決して生きられないものだということ。縁あって出会い、支え合って生きていくものだということ。この世から、たとえ命が失くなったとしても、その人の言葉や生きた証を忘れない、そうすることで、ずっとつながっていけるということだ。そして、つながることで私たちは強く生きていける、大切な「絆」を結ぶことができるのだと思う。私は、これからの人生で家族のため、自分のため、たくさんの思い出を作ろうと思う。私たちにできる最高の支援―それは、この出来事、人々の思いを「忘れない」ことだ。
 今も「笹原留衣子」を必要としている人は、たくさんいる。故人と遺族の最期に寄り添い、思い出をつないでくれた彼女に、心から感謝したい。彼女は、これからもたくさんの人の心を救うだろう。復元納棺師、そして『心のおくりびと』として。
 

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